HOKUTO編集部
2年前
Momelotinibは、 ヤヌスキナーゼ (JAK) 1/2およびACVR1を阻害するファーストインクラスの阻害薬である。 JAK阻害薬未治療の骨髄線維症 (MF) 患者に対する同薬の有効性および安全性を検証した第Ⅲ相試験SIMPLIFYでは、 MFの症状、 貧血、 脾臓に対して臨床的な効果を示した。
今回は、 JAK阻害薬既治療のMFを対象に同薬の有効性および安全性が検証された第Ⅲ相試験MOMENTUMの結果が報告された。 米・GSK companyのJun Kawashima氏が発表した。 対象と結果は以下のとおり。
対象は、 ①貧血を伴う症候性②中または高リスク (DIPSSスコアがHigh/Int-2/Int-1) ③JAK阻害薬の治療歴があるーなどの適格基準を満たしたMF患者195例。
Momelotinib (200mgを毎日投与) の有効性および安全性について、 国内では子宮内膜症治療薬として用いられているダナゾール (DAN群) を対照に検証された。
主要評価項目は、 24週時点の骨髄線維症症状評価フォーム総症状スコア (MF-SAF TSS) における奏効 (最終28日間の平均MF-SAF TSSが、 ベースラインから50%以上低下した患者の割合と定義) だった。
副次評価項目は、 輸血非依存率 (transfusion independence rate)、 脾臓応答率 (splenic response rate) などであった。
24週の治療を完遂したのはmomelotinib群 (130例) で72.3%、 DAN群 (65例) で58.5%。
MF-SAF TSSの奏効
脾臓応答率
現在、 骨髄線維症 (MF) に対する国内での治療では、 DIPSSスコアがHigh/Int-2に該当する高リスク・中間-Ⅱリスクの患者の予後は不良なために、 最初に造血幹細胞移植が検討される。 移植の適応がない場合、 JAK阻害薬の投与がなされる。
ディスカッサントで宮崎大学血液・糖尿病・内分泌内科学分野教授の下田和哉氏は、 本邦ではMF患者の75%が中間-Ⅱリスク・高リスクに分類されるものの、 造血幹細胞移植を施行された患者は6%である現状を指摘した。
骨髄線維症に対し現在国内で承認されているJAK阻害薬はルキソリチニブのみである。 ルキソリチニブ治療により、 脾腫や全身症状の改善のみならず、 予後の改善もみられることが知られている。 しかしルキソリチニブは、 赤血球造血刺激因子エリスロポエチンの細胞内シグナル伝達経路をも阻害し、 貧血を誘発することが指摘されている。
一方、 貧血に対する影響が少ないJAK阻害薬として期待されているのがmomelotinibだ。 同薬は、 JAK1/2に加えてACVR1を阻害することでヘプシジンの産生を抑制し、 貧血を軽減すると考えられている。
下田氏は、 将来、 momelotinibが本邦でも承認された場合の治療戦略について、 図のような展望を示した。
図 骨髄線維症の近い将来の治療戦略 (私見)
予後分類
🔢 DIPSS
🔢 MIPSS-70
関連ガイドライン
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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