HOKUTO編集部
1年前
泌尿器腫瘍を扱う腫瘍内科医が集い、 知識を共有する場として、 新たに「COURAGE」が設立されました。 今回は設立に関わった中心メンバー4人をお招きし、 「COURAGE」設立の狙いや第1回目の集いの反響、 今後の展望などについて座談会形式でお聞きしました。
内野 慶太氏
三浦 裕司氏
近藤 千紘氏
前嶋 愛子氏
――COURAGEの設立の趣旨および設立までの経緯は
近藤先生 COURAGEは『A Community where Oncologists who treat URologic cancer patients Across Japan can Gather and Exchange opinions in their daily practice.』の頭文字を取って名付けました。 日常診療で泌尿器腫瘍を扱う腫瘍内科医は全国で増えていますが、 一方で新しい知見の収集や日常診療の疑問を共有できる学会、 研究会も限定的でした。 そこで、 全国で泌尿器腫瘍を診ている腫瘍内科医が集い、 日常診療の疑問や取り組みなどをざっくばらんに意見交換できる場として、 また日本の泌尿器腫瘍内科医として一体感を創造するために本勉強会を発足させました。
三浦先生 泌尿器領域では、 この15年間で免疫チェックポイント阻害薬をはじめ多くの新薬が登場し、 薬物療法が著しく進歩しました。 一方、 泌尿器外科においてもロボット手術や腹腔鏡手術が進歩し、 外科・内科の両方の知識が求められる時代になっています。
とはいえ、 泌尿器外科医がすべてをカバーするのは困難であり、 市中病院などはマンパワーも限られるという実情から、 泌尿器外科医が腫瘍内科医に泌尿器腫瘍の薬物療法について相談するような状況が増えてきました。
しかし私が腫瘍内科医として研修時を受けていた2005年当時は、 泌尿器腫瘍の薬剤がほとんどなかったために、 そもそもローテーションに泌尿器腫瘍はなかったように、 多くの腫瘍内科医は泌尿器腫瘍についてシステマティックにトレーニングを受けてきたわけではありません。 そのため、 実臨床の疑問も数多く出てきます。 そこで治療に迷った時、 他のエキスパートはどのように考えるのか、 知識を共有する場が必要だなという思いが強まってきました。 それが今回のCOURAGE創設につながったというわけです。
――設立に当たってのきっかけは
内野先生 この4人はよく顔を合わせていたので、 皆で相談し、 「やはり泌尿器腫瘍内科医が知識を共有する場が必要だ」ということでどんどん話が固まっていきました。 しかし全国に同じ思いを持つ人が、 どの程度いるのかが把握できなかったので、 まずは組織をつくり、 少しずつネットワークを広げて強くしていこうと考えたのです。
前嶋先生 コロナ禍の影響もあり、 学会の学術集会などもしばらくはFace to Faceの場はほとんどありませんでした。 今年3月の日本臨床腫瘍学会や4月の泌尿器科学会で先生方と久しぶりに集まれたり、 海外の先生とお会いできたりしたことが、 刺激につながったのかなと個人的には思います。
――そうすると、 かなり短期間で設立されたことになりますね。 ご苦労された点などはありましたか
内野先生 こちらから発信することは出来るのですが、 相手のニーズを正確に把握するのが難しいと感じています。 どのような方がいて、 どのようなことを求めているのか、 いまだに最適解がないので、 まずはトライアンドエラーでいろいろ試していきたいですね。
――COURAGEのミッション、 ビジョンについて教えてください
三浦先生 ミッションは、 前述したように、 全国で泌尿器腫瘍を扱う腫瘍内科医のために、 日常診療の疑問や取り組みなどについて意見交換できる場を作ることです。 現在は日常診療で泌尿器腫瘍を診ている人たちを対象にしていますが、 若手の腫瘍内科医や今まさに腫瘍内科医を目指してるような人たちに、 こういう場を通じて泌尿器腫瘍の魅力に触れてもらい、 そのような人たちを「エンカレッジ」するような組織になれるといいですね。
近藤先生 やはり新しい領域に飛び込む時は「Courage (勇気) 」が必要です。 それゆえに、 新たに泌尿器腫瘍の領域に足を踏み入れようとしている人にとって背中を押してあげる存在、 「自信を持って勇気出していこう」といえるようなグループになれたらと思います。 ちなみに、 このロゴマークはCOURAGEのCをモチーフに4人で作った会であることを表しています。
――7月3日に第1回の集いをされたそうですね
近藤先生 参加者は、 全国各地で我々が声を掛けた人が中心でしたが、 当初の想定以上に多くの方に視聴していただけました。 今回は事前に募ったクリニカル・クエスチョン(CQ)を取り上げました。
三浦先生 寄せられたCQを見ると、 専門家である我々もまさに臨床現場で迷っている疑問点と同じような事例に、 参加してくれた皆さんも悩んでいることが分かりましたね。 このような、 既存の教科書や論文では読み取りにくいような部分を、 COURAGEのような場で話し合うことによって全体像が掴みやすくなってくると良いですね。
――今後の企画、 また新たに挑戦されたいことあれば教えてください。
近藤先生 今後は、 COURAGEから発信するだけではなく、 双方向性のある取り組みができるといいですね。 各地域にハブとなる拠点を置いて腫瘍内科医がオンサイトに集まったり、 若い人を招いて討論するなど、 レクチャースタイル以外にも色々やってみたいと考えているところです。
三浦先生 いまだに国内ではシステマティックに泌尿器腫瘍を学べる施設があまり多くないので、 その肩代わりができるといいかなとも思っています。 その実現に向けては時間も人も足りない部分はありますが、 教育的なコンテンツを作るといったことも考えられるかと思います。 人が集まるだけはなくて、 薬剤師や看護師などの多職種を含めた研究会など、 バラエティーに富んだことも取り組みたいですね。 さらに、 COURAGEでSNSのグループを作り、 カジュアルな議論を行うなど、 いろいろと夢が広がりますね。
近藤先生 SNSの活用は、 ぜひ取り組みたいですね。 新しい情報をいち早く仲間に届けて、 皆がどう思うか聞けることで盛り上がりそうですし、 なんというかお祭り感がありますね。
三浦先生 自身の経験からも、 若い時は年長の先生方の考えを横で聞いてるだけで勉強になったので、 そのような場を作ってもいいかなと思うんですよね。
――最後に、 COURAGEの活動に関心を寄せている、 また参加を検討しているHOKUTO医師会員にメッセージをお願い致します。
内野先生 私はCOURAGEにおいて「集い」という言葉が大事だと考え、 あえて「集い」という言葉を使いました。 その意味は、 より親密な仲間・同志として同じ目的の為に一緒に真剣に取り組むメンバーというニュアンスを意識しています。 全国の泌尿器腫瘍内科医、 またはそれを目指す内科医が自然と双方向性に集ってきて欲しいと思います。 もちろん、 COURAGEに魅力を感じた若手も集っていただき、 共に育っていければと思います。
前嶋先生 泌尿器腫瘍の薬物療法は、 腫瘍内科医にとって最後のフロンティアとも言えるのではないかと思っています。 癌腫も多いですし、 リアルワールドではまだ分からないことも多く、 泌尿器科医の先生方にとっても試行錯誤のところが残されているように思います。 そこをともに学び、 また若い医師が興味を持って一緒に働いてくださると嬉しいですね。
日時:9月25日 (月) 19:00~20:30
会場:東京都内よりWeb配信
総合司会:内野 慶太先生 (NTT東日本 関東病院 腫瘍内科部長)
※講演会は終了いたしました
演者:近藤 千紘先生 (国立がん研究センター東病院 腫瘍内科)
Moderator:宮本 信吾先生 (日本赤十字社医療センター 化学療法科)
Discussers:前嶋 愛子先生 (国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科/泌尿器・後腹膜腫瘍科)
Discussers:三浦 裕司先生 (虎の門病院 臨床腫瘍科)
【内野 慶太先生】
第1回目は、 大成功と感じています。 私達からの一方向ではなくたしかに双方向性の集いであることを感じました。 患者さんを前に臨床医として同じ悩みや疑問を持っている医師達が集った感覚です。 一方でまだまだ限定的であったことも否めません。 少しでもCOURAGEの存在が周知され、 仲間が仲間をよび雪だるま式に盛り上がって行ければと考えています。 第2回は2023年9月25日19:00から開催予定です。 魅力あるテーマで構成しました。
【前嶋 愛子先生】
1回目では取り上げられなかったCQを中心に、 今回はより双方向のディスカッションができるような会にしたいと考えています。 日頃皆さんが感じている泌尿器腫瘍の悩ましさ、 難しさをまずは共有することを出発点にしつつ、 奥深さと魅力についても分かち合える場にしたいと思いますので、 ぜひご期待ください!
【近藤 千紘先生】
泌尿器腫瘍の日常診療でのお困りごとを皆でディスカッションして解決しましょう。
当日参加ができなくても、ぜひお困りごとのコメントをお寄せくださいね。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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