『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き』4つの改訂ポイント
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HOKUTO編集部

2年前

『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き』4つの改訂ポイント

『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き』4つの改訂ポイント
関節リウマチ薬物治療における“アンカードラッグ“とされるメトトレキサート (MTX) の使用について、 『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き 2023年版』が今年(2023)年3月に発刊された。 2023年4月24〜26日に福岡市で開催された第67回日本リウマチ学会では、 同学会MTX診療ガイドライン小委員会委員長で東邦大学内科学講座膠原病学分野教授の亀田秀人氏が、 同手引きの主な改訂ポイントを解説した。 

本稿のポイント

エキスパートオピニオンを中心とした作成方法を採択した新しい手引きが発刊された。 今回の改訂による主な変更点は以下の4つである。

  1. MTXの適応はより簡潔に
  2. MTXの投与禁忌は一部緩和
  3. 葉酸の全例投与を強く推奨
  4. MTX皮下注射製剤が新たな選択肢に

作成の経緯

「ガイドライン」 から 「手引き」 に名称変更

まず、 MTXの診療指針の名称だが、 これまでは『関節リウマチ治療におけるMTX診療ガイドライン』として2011年の初版、 2016年の改訂版が刊行されたが、 今回から『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き』とされた。

これは、 MTXに関するエビデンスの集積が進む中で国内外のエビデンスギャップが大きくなってきたことに鑑み、 今回の改訂では多くの国外エビデンスが評価対象となるGRADE法は採用されなかったためだ。 代わりに、 エキスパートオピニオンを中心とした従来通りの診療指針の作成方法を採用された。 それに伴い、 従来のガイドラインという名称ではなく、 より適切な方法として、 『手引き』が採用されることになったという。

4つの改訂ポイント

1.MTXの適応:より簡潔な表記に

まずMTXの適応については、 2016年版改訂版と比べ、 2023年版でも大きく変わらないが、 以下のように、 よりシンプルな表記となった。

すなわち、 2023年改訂版においても、 欧州リウマチ学会 (EULAR) や米国リウマチ学会 (ACR) のガイドラインと同様に、 年齢や合併症などのリスクと、 予後不良因子などを考慮した早急な疾患活動性コントロールのベネフィットとのバランスに鑑みて、 MTXを最初の従来型合成抗リウマチ薬 (csDMARD) として考慮すべきとされた。

また、 他のcsDMARD第一選択薬として通常量を2〜3カ月以上継続投与しても治療目標に達しないRA患者には、 可能な限りMTXを追加併用または変更して投与すべきとされた。

表1.MTXの適応:旧版 (2016年改訂版) と2023年改訂版との比較

『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き』4つの改訂ポイント
『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き 2023年版』, 羊土社, 2023

2.MTXの投与禁忌:禁忌事項は一部緩和

投与禁忌については、 今回、 胸水・腹水が存在する患者の項目に 「大量の」 という文言が追記された。 投与禁忌の条件として、 胸水・腹水の存在が挙げられているのは世界中で日本の添付文書のみであるが、 2023年改訂版では投与禁忌となるのは大量貯留に限定され、 それ以下の場合には慎重投与とされた。 なお、 大量貯留の定義は、 「症状軽減などの治療を目的とした穿刺・排液の必要があるかが目安」 とされた。

さらに、 高度な呼吸器障害を有する患者の基準として、 「呼吸機能検査で%VC<80%の拘束性障害」 の文言も削除され、 禁忌事項は一部緩和されたかたちとなった。

表2.MTXの投与禁忌 (赤字は今回の改変部分)

『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き』4つの改訂ポイント
『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き 2023年版』, 羊土社, 2023

3.葉酸:全例投与を推奨

また今回の改訂でもうひとつの大きなポイントが、 葉酸製剤の併用投与が、 MTXの開始用量にかかわらず、 全例で強く勧められたことだ。

葉酸については、 これまでMTXの投与量が少なかった本邦では、 治療効果を減弱することが懸念されていた。 しかし現在は本邦でもMTXが経口で16mg/週まで、 皮下注製剤も15mg/週まで投与できるようになったことから、 今回の改訂では、 副作用予防効果が期待できる葉酸を投与しないことのデメリットの方が大きいとことがMTX診療ガイドライン小委員会でも議論され、 委員全員一致の元で葉酸の全例投与が強く推奨されるに至ったという。

4.新たな選択肢:MTX皮下注射製剤

さらに、 今回の改訂では、 新たな選択肢となったMTX皮下注射製剤についての記載が加わった。 これについては、 基本的に添付文書に合致した記載となっている (詳細については関連記事 「MTX皮下注射製剤を含めたMTXの用法・用量」 で解説) 。

『関節リウマチにおけるMTX使用と診療の手引き』4つの改訂ポイント
亀田秀人氏

なお、 関節リウマチ治療におけるMTXの位置付けについては、 亀田氏は 「関節リウマチと診断したら、 まずMTXを考慮。 有効性と安全性のバランスだけでいえばMTXが必ずしもベストではないが、 コストを含めた観点からいえばいまだにMTXがベストであり、 アンカードラッグになっている」 と説明した。

こちらの記事の監修医師
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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