海外ジャーナルクラブ
2ヶ月前
Armstrongらは、 米国の高リスク限局性前立腺癌患者を対象に、 放射線療法と併用するアンドロゲン除去療法 (ADT) の期間 (長期または短期) に対する治療効果の差を予測できるバイオマーカーをマルチモーダルAIを用いて開発、 検証した。 その結果、 このバイオマーカーはADTの適切な期間を判断する指標として有用であり、 対象患者の約3分の1でADT期間を短縮し、 合併症リスクを回避できる可能性が示された。 結果はJ Clin Oncol誌に発表された。
今回のモデルでは、 バイオマーカー選択におけるカットオフ値として中央値が採用されています。 しかし将来の実用モデル開発においては、 四分位やリスクスコアを用いた最適化、 さらに異なるデジタル病理スキャナーを使ったパフォーマンス検討が有用と考えられるとのことです。
アンドロゲン除去療法 (ADT) により放射線療法 (RT) を受けている高リスク限局性前立腺癌患者の生存期間が改善するが、 ADTの期間を決定するための予測バイオマーカーは明らかになっていない。
マルチモーダルAI (MMAI) を用いて開発した予測バイオマーカーは、 主要評価項目の遠隔転移に対して、 長期ADTが短期ADTよりも効果的かどうかを予測することを目的に設計された。 米NRG Oncologyが実施した6件の第Ⅲ相無作為化比較試験から得た治療前の前立腺生検のデジタル画像と臨床データ (年齢、 前立腺特異抗原 [PSA]、 Gleasonスコア、 T病期) を用いて、 モデルを訓練した。
MMAI由来バイオマーカーの有用性は、 以下の2群に割り付けられた無作為化比較試験RTOG 9202の対象患者1,192例で検証された。
RT+4ヵ月のADT併用
RT+28ヵ月のADT併用
Fine-Gray解析および累積発生率解析が実施され、 遠隔転移と遠隔転移に関連のある死亡が評価された。 遠隔転移のない死亡は、 競合リスクとして扱われた。
検証コホート (追跡期間中央値 17.2年) では、 遠隔転移率が短期ADT群では26%であったのに対し、 長期ADT群では17%と有意に改善した (部分分布ハザード比 [sHR] 0.64 [95%CI 0.50-0.82]、 p<0.001)。
遠隔転移では、 MMAI由来バイオマーカーと治療の有意な予測相互作用が認められた (p=0.04)。
MMAI由来バイオマーカー陽性患者785例で、 長期ADT群は短期ADT群と比べて遠隔転移率が低かった (sHR 0.55 [95%CI 0.41-0.73]、 p<0.001) 一方で、 陰性患者407例ではベネフィットが認められなかった (sHR 1.06 [95%CI 0.61-1.84]、 p=0.84)。
長期ADT群と短期ADT群間の推定15年遠隔転移リスク差は、 MMAI由来バイオマーカー陽性患者が14%、 陰性患者が0%であった。
MMAI由来バイオマーカーは、 治療の有無に関係なく遠隔転移の予後予測因子であった (sHR 2.35 [95%CI 1.72-3.19]、 p<0.001)。
著者らは 「今回開発されたMMAI由来の予測バイオマーカーは、 限局性前立腺癌でRTと併用するADTの適切な期間を判断するための指標として、 初めて有用性が検証された。 高リスク限局性前立腺癌患者の約3分の1では、 ADT期間を最大24ヵ月短縮し、 これに伴う合併症リスクを回避できる可能性が示された」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。