関西医科大学呼吸器腫瘍内科学講座
9ヶ月前
関西医科大学呼吸器腫瘍内科学講座による、 呼吸器疾患・肺癌診療に役立つ情報をお届けします。 第2回は、「呼吸器腫瘍内科医がおすすめする教科書5選」 をご紹介します。 (解説医師 : 関西医科大学呼吸器腫瘍内科 勝島詩恵氏)
呼吸器腫瘍内科、 というと皆さんはどのようなイメージを持たれるでしょうか。
実は、 呼吸器腫瘍内科が担う疾患や病態は多岐にわたります。 肺癌のみならず、 悪性胸膜中皮腫、 肉腫などの希少疾患も扱いますし、 肺癌の診断までには転移性肺腫瘍、 リンパ腫、 炎症性疾患、 感染症、 膠原病などの除外診断が出来なければなりません。 また抗癌剤投与中には、 血液毒性や消化器症状などさまざまな副作用管理が必要です。
その他、 近年免疫チェックポイント阻害薬が台頭し、 免疫関連有害事象への対応は日常茶飯事で、 内分泌領域、 神経内科領域へも精通する必要があります。 さらには、 疼痛などに対する症状緩和のスキルも要求されますし、 感染症とはいつも隣り合わせ、 Oncology emergency*に遭遇する頻度も高いです。 気管支鏡や胸腔ドレナージも習得が必要になります。
このように、 呼吸器腫瘍内科は抗癌剤に特化した専門性の高い科のようにみえて、 実際は診断学から治療学、 緊急対応、 支持療法、 緩和領域までオールマイティーな知識と技術が要求される 「究極の総合内科」 と言えるかもしれません。 そのような呼吸器腫瘍内科医の立場から、 これから呼吸器診療や呼吸器腫瘍を学びたい方に向けて、 おすすめしたい教科書5冊+αをピックアップしました。
日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医の取得に向けて、 腫瘍学を学ぶための教科書です。 腫瘍学の辞書的な位置付けとして、 癌専門医として生きていくのであれば持っていて間違いない教科書の1つといえるでしょう。 がん薬物療法専門医試験も、 本書の内容に準拠して出題されています。
レジデントマニュアルシリーズは、 どの分野のものも持っていて損はない書籍といえるのではないでしょうか。 正書である 「新臨床腫瘍学改訂第7版 がん薬物療法専門医のために」 ではとっつきにくい内容も本書では把握しやすく、 実臨床の即戦力となります。 サイズも小さいため、 持ち歩きにも便利で、 医師版イヤーノート的な存在です。
また、 同シリーズである 「感染症レジデントマニュアル 第2版 (藤本卓司著、 2013年12月発行)」 も必須アイテムであるため、 併せてチェックしてみると良いでしょう。
毎年改訂される、 まさにポケットサイズで有用なコスパ最強のマニュアル本の1つです。 コンパクトであるにもかかわらず、 簡潔に各種ガイドラインの改訂などにも対応しており、 最新情報もアップデートされています。 白衣のポケットに入れておけば、 電子カルテを開きながら処方例を見るなどの活用もできるため便利です。 なお、 2023年度版には1冊につき1つの電子版 (PDF) 無料ダウンロード権もついているようです。
癌薬物療法を行うにあたり、 さまざまな合併症、 あるいは臓器障害をもつ患者さんを診療する機会は非常に多くあります。 そうしたハイリスクな患者さんに対し、 化学療法の調整をどのようにしたらよいかが分かりやすく記載してあります。 まさに 「痒い所に手が届く」 1冊です。
その名の通り、 肺癌診療の虎の巻といえる1冊です。 医師20年目を迎える私自身は、 実は本書を持っていませんが、 私の後輩にあたる当院呼吸器腫瘍内科のレジデントの机上には、 ほとんどこの本がありました。
この記事を執筆するうえで、 当院以外の呼吸器科や腫瘍内科のレジデントにも聞いてみましたが、 本書を推薦する声は多く聞かれました。 実践的なレジメンの立て方、 評価方法から副作用対策まで網羅的にわかりやすく書かれており、 実臨床において即戦力となる本のようです。 私もレジデント時代にこれがあれば買っていたな、 と思います。
糖尿病患者さんが激増している現在、 どの科にいても糖尿病診療とは関わります。 専門ではないからこそ、 1冊持っておきたい糖尿病治療の教科書としておすすめします。 充実した内容にしてこの値段と、 コスパも最高なのがありがたいです。
腫瘍内科医は、 本当にさまざまな領域の疾患をオールマイティーに診ながら最先端の癌診療に携わることのできる、 大変充実した科だと思います。 一方で患者さんの生死に直面することも多い科ですので、 自分自身のメンタルヘルスも重要です。 医療現場の辛さ、 厳しさに直面し、 逃げ出したくなる時もあるでしょう。 最後に、 私がレジデント時代に恩師にいただいた特別な一冊をご紹介します。
医療とは何か、 医者であるとはどういうことか―。 多くの医療者の体験が綴られた内容に、 「ああ、 自分もそうだった」 と慰められ、 また前を向いて医療に真摯に向き合いたくなる1冊です。
2022年4月に内科学第一講座より分離独立して開講し、 肺癌の標準的診療を実践しているほか、 呼吸器疾患や腫瘍に関心がある研修医の教育支援も行っています。 現在メンバーは14人おり、 最も特徴的な点は若い先生が多いことです。 40代以上は3人、 ほかは皆30代以下で、 エネルギーに満ち溢れています。 また、 新しい講座であるため、 他施設とのしがらみがありません。 出向先は研修医の希望を尊重し、 希望先の施設で研修を受けられるようにサポートしています。
興味のある先⽣はぜひ、 yuta1106yamanayt@gmail.comまでご連絡ください。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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