北里研究所病院IBDセンター
7日前

北里大学北里研究所病院 (北研) IBDセンターの抄読会で実際に交わされた治療判断の視点や議論のエッセンスを凝縮してお届けします。
第7回は、 潰瘍性大腸炎 (UC) における虫垂周囲紅斑 (PARP) の長期予後への影響を検討したメタ解析を取り上げます。
Clinical significance of isolated periappendiceal red patch in ulcerative colitis: A systematic review, meta-analysis, and meta-regression
Inflamm Bowel Dis. 2026 Jun 9:izag092.
UCは、 直腸から始まり近位方向にさまざまな程度で広がる持続的な粘膜炎症を特徴とする。 一方で、 最大17%の患者では、 虫垂周囲紅斑 (PARP) と呼ばれる斑状の盲腸炎症を認める。
PARPは従来、 重症疾患や予後不良と関連付けられてきたが、 その長期的な臨床的意義は依然として不明である。
本研究では、 孤立性PARPを有するUC患者の転帰を評価するため、 系統的レビューとメタ解析を実施した。
主要な医学文献データベース*を対象に包括的な文献検索を行い、 内視鏡的または組織学的にPARP陽性のUC患者と陰性患者を比較した研究を抽出した。
主要評価項目は病型、 薬物療法の強化、 結腸切除、 口側進展、 内視鏡的寛解との関連とした。
UC患者2,289例 (PARP陽性725例、 陰性1,564例) を含む非無作為化研究13件を分析した。
PARPは直腸炎のオッズ上昇と有意に関連していた。 一方、 左側大腸炎や広範囲大腸炎とは有意な関連を認めなかった。
病型別のオッズ比 (PARP 陽性群 vs 陰性群)

また、 PARPは口側進展、 薬物療法の強化、 結腸切除術とは関連していなかった。
PARPは潰瘍性直腸炎患者でより高頻度に観察されるが、 長期的な疾患進行や主要な臨床転帰には影響しない。 本研究は、 PARPはUCにおける良性の内視鏡所見として分類されることを裏付けた。

日常診療の大腸内視鏡検査でPARPに遭遇することは珍しくありません。 以前からPARPを見つけると 「将来悪化するのでは?」 と少し身構えていましたが、 本検討ではその懸念を裏付けるエビデンスは得られず、 少し安心しました。


本研究でPARPを評価した時点は研究ごとに異なり、 診断時・活動期・寛解期が混在しています。 そのため、 「診断時のPARPの予後」 や 「寛解期に残存するPARPの予後」 を個別に検証したものではなく、 病期が一様でないUCコホートにおけるPARPの臨床的意義を統合した解析と考えられます。

その可能性はあります。 PARP陽性例では直腸炎型が多く、 直腸炎型は一般に全大腸炎型より予後が良くみえやすいため、 病変範囲による交絡は完全には否定できません。
したがって、 「PARP自体が予後に影響しない」 と断定するのは言い過ぎで、 「PARPが独立した予後不良因子とは言えない」 という解釈が妥当と考えられます。

本論文でPARPは 「虫垂開口部周囲に限局した炎症」 と説明されています。 ただし、 発赤やびらん、 白苔、 アフタなど、 どの所見をもってPARP陽性とするかについて、 全研究で統一された厳密な内視鏡的定義は示されていません。
北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター (IBDセンター)

潰瘍性大腸炎・クローン病を中心とした炎症性腸疾患に対し、 消化器内科を軸に多職種が連携し、 先進的な診療と研究を推進する拠点である。 専門医が高度な治療選択を提供し、 IBD診療の質向上を目指して活動している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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