海外ジャーナルクラブ
9ヶ月前
福田氏らは、 妊娠中の女性の血清葉酸値と葉酸サプリメントの使用が、 生後1年間の乳児における川崎病発症リスクに与える影響について、 環境省のコホート研究 「子どもの健康と環境に関する全国調査 (JECS) 」 のデータを用いて分析した。 その結果、 血清葉酸値≧10ng/mL、 または葉酸サプリメントを使用していた母親から生まれた子は、 乳児期の川崎病発症リスクが低いことが明らかにされた。 本研究はJAMA Netw Open誌において発表された。
JAMAOpenでの掲載ですので前提として弱い仮説と受け止めるべき結果です。 サプリメントには葉酸以外のマルチビタミンも含まれていること、 また血清葉酸濃度を10ng/mLで2つの群に分けましたが、 やはり連続数での解析結果も気になるところです。
川崎病は、 乳幼児に好発する急性全身性血管炎で、 その原因は未解明である。 日本では、 生後1年以内に発症する川崎病患者が20%を占めており、 胎内での曝露歴が発症に関与している可能性が検討されてきた。 福田氏らは以前の研究で、 妊娠中の葉酸補給が川崎病発症リスクに与える影響について報告しており、 今回の研究では交絡因子になり得る川崎病の危険因子を補正した観察結果が報告された。
本コホート研究では、 環境省に2011年より登録されている全国出生コホート 「子どもの健康と環境に関する全国調査 (JECS) 」 のデータを利用し、 解析は2023年1月に実施した。
妊娠第2期および第3期の血液検査による血清葉酸濃度*、 ならびに自己申告に基づく妊娠中の葉酸サプリメント使用頻度**を調査した。
生後12ヵ月までの川崎病発症割合
12ヵ月間追跡された乳児 : 8万7,702例
そのうち、 サプリメントによる葉酸補給を行っていた妊婦は3万1,275例 (35.7%) であった。
12ヵ月間の追跡後、 336例が川崎病を発症した。
血清葉酸濃度別の川崎病発症割合
血清葉酸濃度が10ng/mL以上の母親から生まれた乳児は、 10ng/mL未満の母親から生まれた乳児に比べ、 川崎病リスクが有意に低かった。
調整OR 0.68 (95%CI 0.50-0.92)
妊娠第1期にサプリメントでの葉酸補給を行った母親の子は、 使用していない母親の子に比べ川崎病発症割が低かったものの、 その差は有意ではなかった。
調整OR 0.83 (95%CI 0.66-1.04)
妊娠第2、 3期にサプリメントでの葉酸補給を行った母親の子は、 そうでない子に比べて川崎病発症割合が有意に低かった。
調整OR 0.73 (95%CI 0.57-0.94)
妊娠第2期および第3期の血清葉酸濃度が10ng/mL以上であること、 ならびにサプリメントによる葉酸補充の頻度が高いことは、 乳児の川崎病累積発症リスク低下と関連性がある。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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