HOKUTO編集部
24日前

今年の米国臨床腫瘍学会 (ASCO 2026) の泌尿器癌領域における個人的な二大テーマは、 「治療強化」 と 「患者選択」 です。 前立腺癌では、 標準治療を変える可能性のあるデータが報告された一方で、 どの患者にどのような治療強化を行うべきかという課題も浮き彫りとなりました。 本稿では、 ASCO 2026で発表された泌尿器癌領域の主要演題を3回に分けて紹介するうち、 初回として前立腺癌に焦点を当てます。 今後の臨床実践や研究開発に影響を与えると考えられるトピックを取り上げ、 その重要性や今後の課題について、 私見も交えながら整理します。

▼試験概要
PROTEUS試験は、 根治治療として前立腺全摘術を前提とした高リスク前立腺癌患者を対象に、 周術期アパルタミド+アンドロゲン除去療法 (ADT) の有効性・安全性を検証した国際共同第III相試験です。 患者はアパルタミド+ADT群またはプラセボ+ADT群に無作為割り付けされ、 術前6ヵ月、 術後6ヵ月の治療が行われました。
▼結果
主要評価項目の一つである病理学的完全奏効 (pCR) または最小残存病変 (MRD) 率は8.9% vs 1.0% (OR 10.17) と有意に改善しました。 また、 5年無転移生存率 (MFS) は78.2% vs 73.5%で、 ハザード比は0.80でした。 さらに、 後治療開始までの期間中央値は6年以上であり、 対照群と比較して約2.7年延長しました。
本試験は、 高リスク限局性前立腺癌における周術期治療強化戦略の有効性を示した初の大規模第III相試験であり、 今後の標準治療を変える可能性があります。 一方で全生存期間 (OS)は未成熟であり、 対照群の設定やPSMA-PETを含むMFSの解釈については議論が残ります。
治療期間延長や有害事象リスクも考慮した場合、 「全ての高リスク患者に一律に推奨されるべき治療であるか」 については今後の議論が必要です。
▼試験概要
TALAPRO-3試験は、 HRR遺伝子異常を有する転移性ホルモン感受性前立腺癌 (mCSPC) を対象に、 タラゾパリブ+エンザルタミド併用療法を検証した国際共同第III相試験です。
▼結果
599例が登録され、 主要評価項目である画像評価無増悪生存期間 (rPFS) は、 対照群であるプラセボ+エンザルタミド群と比較し、 タラゾパリブ群で有意に延長し、 ハザード比は0.48でした。 3年rPFS率は77% vs 56%でした。 効果はBRCA変異群のみならず非BRCAのHRR異常群でもおおむね一貫して認められました。
一方、 OSは中間解析時点でハザード比0.77であり、 有意差には到達していません。 タラゾパリブ群では骨髄抑制などの有害事象が多くみられました。
TALAPRO-3試験は、 ASCO 2025で発表されたAMPLITUDE試験と同様に、 HRR遺伝子異常を有するコホートにPARP阻害薬をフロントラインで使用することの有用性を示した重要な試験です。 今後、 このようなコホートに対してはmCSPCの段階から積極的にPARP阻害薬を使用していくことが増えていくと思われます。
一方で、 OSの優越性が未確立であること、 転移性ホルモン抵抗性前立腺癌 (mCRPC) でのPARP阻害薬の導入と比較した場合の真の上乗せ効果は明らかではないことを考慮すると、 今後は 「PARP阻害薬をいつ使うべきか」 が重要な論点となると考えられます。
▼試験概要
ABBV-969は、 PSMAとSTEAP1を同時に標的とする二重標的抗体薬物複合体 (ADC) であり、 トポイソメラーゼI阻害薬をペイロードとしています。
本第I相試験では、 ARPI、 タキサン系抗癌薬、 ¹⁷⁷Lu-PSMA治療歴を含む前治療歴を有するmCRPC患者49例を対象に、 ABBV-969の安全性や有効性が検討されました。 患者の前治療ライン数中央値は5でした。
▼結果
全用量での奏効率は45%でした。 3 mg/kg以上の用量でPSA応答が認められ、 PSA50達成率は67%、 PSA90達成率は30%でした。 安全性はおおむね管理可能でした。
PSMAを標的とした治療戦略は急速に発展していますが、 近年はPSMA発現の不均一性や治療抵抗性を克服するため、 STEAP1やKLK2など新規標的の開発も進んでいます。
ABBV-969はPSMAとSTEAP1を同時に標的とする新しいコンセプトのADCであり、 今後の開発動向に注目したいと思います。
【ハイライト】ASCO2026特集|領域別 注目演題レポート&解説まとめ(更新中)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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