HOKUTO編集部
6ヶ月前
乳房温存手術後に放射線治療(RT)を実施していない低リスクの非浸潤性乳管癌(DCIS)にタモキシフェン(TAM)を使用することで同側再発(IBR)、 特に浸潤性IBRリスクを低減できる可能性が、 第Ⅲ相非盲検無作為化比較試験NRG/RTOG 9804および第Ⅱ相非盲検試験ECOG-ACRIN E5194の一部コホートの統合解析の結果より示された。 米・University of North Carolina and the Lineberger Comprehensive Cancer CenterのJean Wright氏が発表した。
乳房温存手術後で低リスク (腫瘍径≦2.5cm、 Grade1-2、 手術マージン≧3mm) のDCISを対象とした第Ⅲ相試験NRG/RTOG 9804¹⁾では、 RT実施・非実施の2コホートにおいてIBRなどの予後を比較評価している。
一方で、 乳房温存手術後のDCISを対象とした第Ⅱ相試験ECOG-ACRIN E5194²⁾では、 RTを実施しなかった低リスク・高リスクの2コホートにおいてIBRなどの予後を比較評価している。 いずれの試験もTAMの使用は任意であるものの許容された。
本試験では、 NRG/RTOG 9804試験のRT非実施群および、 ECOG-ACRIN E5194試験の低リスク群 ("good risk"コホート) のデータを統合したデータベースより、 RTを実施しなかった低リスクのDCIS患者を対象にTAM使用・不使用の2群の予後を比較し、 TAMによる再発抑制効果を評価した。
NRG/RTOG 9804試験から317例 (TAM使用:208例、 TAM不使用:109例) 、 ECOG-ACRIN E5194試験から561例 (TAM使用:170例、 TAM不使用:391例) が統合され、 全878例 (TAM使用群 : 378例、 TAM不使用群 : 500例) について解析が行われた。
評価項目はIBR、 浸潤性IBR、 DCIS IBR、 対側乳癌 (CBE) などであった。
全集団の年齢中央値は59歳、 50歳以上は80%、 閉経前は23%、 マージン幅≧3mmまたは再切除による陰性化が計98%、 腫瘍径≦5mmは48%、 Grade1-2は計87%、 だった。
追跡期間中央値14.85年における15年IBR率はTAM使用群が11.4%、 TAM不使用群が19.0%で、 TAM使用とIBR発生率の低減に有意な関連が認められた (p=0.001) 。
再発形式別に解析を行った結果、 15年浸潤性IBR率はTAM使用群が6.0%、 TAM不使用群が11.5%で、 TAM使用と浸潤性IBRの低減に有意な関連が認められた (p=0.005) 。 一方で、 15年DCIS IBR率はそれぞれ5.5%、 8.1%で有意差が認められなかった (p=0.09) 。
また、 15年CBE発生率はそれぞれ5.6%、 8.8%で有意差が認められなかった (p=0.17) 。
単変量解析の結果、 IBRは、 腫瘍径 (5mm以下 vs 10mm超) およびDCISのGrade (1 vs 2) と有意に関連していた (それぞれp=0.0001、 p=0.042) 。
この結果を踏まえて、 DCISのGradeを除外して腫瘍径で調整したIBRの多変量解析において、 TAMの使用はIBRと有意に関連しており、 再発リスクは44%低減した (HR 0.56 [95%CI 0.38-0.84] 、 p=0.0044) 。
また、 腫瘍径を除外してDCISのGradeで調整した浸潤性IBRの多変量解析において、 TAMの使用は浸潤性IBRと有意に関連しており、 再発リスクは51%低減した(HR 0.49 [95%CI 0.28-0.84] 、 p=0.0092) 。
Wright氏は 「低リスクのDCISで乳房温存手術後にRTを実施していない患者では、 TAMを使用することでIBR、 特に浸潤性IBRリスクを低減できる可能性が示された」 と報告した。
¹⁾ J Clin Oncol. 2021 Nov 10;39(32):3574-3582.
²⁾ NPJ Breast Cancer. 2024 Feb 24;10(1):16.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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