Beyond the Evidence
1年前
「Beyond the Evidence」 では、 消化器専門医として判断に迷うことの多い臨床課題を深掘りし、 さまざまなエビデンスや経験を基に、 より最適な解決策を探求することを目指す企画です。 気鋭の専門家による充実した解説、 是非参考としてください。
食道扁平上皮癌に免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) を用いた治療を行う場合、 免疫関連有害事象の早期発見のために、 どのような採血項目を定期的に行うか?
通常の化学療法前に確認する血算、 生化学検査に加えて、 血糖やHbA1c、 KL-6、 甲状腺関連ホルモン (TSH、 fT4)、 副腎機能関連ホルモン (ACTH、 コルチゾール) の測定を検討する。
切除不能な進行・再発食道扁平上皮癌の1次治療¹⁾²⁾や、 局所進行食道癌の術後療法³⁾としてICIの使用頻度が増えてきている。 ICIはその作用機序から、 殺細胞性抗癌薬でしばしば認める血液毒性の頻度は低いが、 免疫関連有害事象(immune related adverse event : irAE)が一定の頻度で発生する¹⁾⁻³⁾。 irAEは発疹や掻痒感といった病態から、 致死的な劇症1型糖尿病や副腎不全といった病態まで幅広く、 投与中のみならず投与終了後にも発生するため注意が必要である。
実臨床においては、 問診や身体診察、 バイタル測定もirAEの早期発見に役立つが、 同時に採血検査も重要である。 LDHやKL-6は間質性肺炎の診断の一助となり、 随時血糖やHbA1cは劇症1型糖尿病の診断に有用である。 また、 一部のirAEは初期には症状が乏しいことも多く、 甲状腺関連ホルモンであるTSHやfT4は甲状腺機能低下症や亢進症の診断に有用であり、 ナトリウムや副腎機能関連ホルモンであるACTH、 コルチゾールは、 副腎不全の診断に非常に有用である。 なお急激なASTやALT、 CKの上昇は肝機能障害や筋障害を念頭に置く必要がある⁴⁾。
前述のように、 食道癌診療においても今やirAEの早期発見・早期治療が求められるが、 特にニボルマブとイピリムマブ併用療法では、 内分泌関連のirAEの発生頻度が免疫チェックポイント阻害薬単剤と比較して高いことに加え、 全体的なirAEの発生頻度も高い傾向にある。 外来で投与可能であるニボルマブとイピリムマブ併用療法であるが、 限られた外来時間の中で、 致命的になりうるirAEを発見するために、 事前に逆算して採血検査を準備する必要がある。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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