【保存版】CYP3A4阻害薬 早わかりガイド&臨床ポイント
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HOKUTO編集部

8日前

【保存版】CYP3A4阻害薬 早わかりガイド&臨床ポイント

【保存版】CYP3A4阻害薬 早わかりガイド&臨床ポイント
複数の薬剤を併用する処方は、 日常診療においてごく一般的な光景です。 しかしその背後には、 薬物相互作用によるリスクが潜んでいます。 特に、 数多くの薬剤の代謝に関与するCYP3A4の活性が阻害されると、 治療効果の変化や予期せぬ副作用を引き起こす可能性があります。 本稿では、 注意すべきCYP3A4阻害薬を取り上げるとともに、 日常診療での具体的な活用例を共有します。

CYP3A4とは?

CYP3A4は、 肝臓や小腸に分布する薬物代謝酵素であり、 循環器系薬剤、 中枢神経系薬剤、 感染症治療薬など、 非常に幅広い薬剤の代謝に関与している。 そのため、 CYP3A4の活性が他の薬剤によって阻害されると、 併用薬の血中濃度が大きく変動し、 臨床効果に影響を及ぼす可能性がある。

「基質薬」 と 「感度」 とは?

代謝酵素によって代謝される薬剤は 「基質薬」 と呼ばれる。 これを特定の代謝酵素 (ここではCYP3A4) の阻害薬と併用した際に、 血中濃度 (主にAUC : 薬物血中濃度-時間曲線下面積) がどの程度上昇するかを示す指標が 「感度」 である。

一般に、 CYP3A4の強い阻害薬との併用によりAUCが5倍以上に上昇する薬剤は 「感度の高い基質薬」、 2倍以上5倍未満に上昇する薬剤は 「中程度の感度の基質薬」 とされる¹⁾。

すなわち、 「感度が高い基質薬」 とは、 酵素阻害の影響を強く受け、 血中濃度が大幅に上昇するリスクを有する薬剤である。

重要なCYP3A4阻害薬は?

強い、 または中程度のCYP3A4阻害薬は以下のとおり。

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本リストは、 出典¹⁾に基づき、 2024年8月31日時点で日本において承認されている品目を掲載している。 活用にあたっては、 添付文書や各種ガイドラインなど、 常に最新の情報を参照することを推奨する。

CYP3A4阻害薬の臨床的影響は?

CYP3A4を介した薬物相互作用は、 特定の診療科に限らず、 幅広い領域で注意が必要である。

循環器領域

一部のカルシウム拮抗薬やスタチン系薬はCYP3A4で代謝されるため、 阻害薬との併用により血中濃度が上昇し、 過度の血圧低下や横紋筋融解症などの副作用リスクが高まる可能性がある。

感度が高い基質薬の例

- シンバスタチン (リポバス®)

- フェロジピン (スプレンジール®)

- アゼルニジピン (カルブロック®)

- チカグレロル (ブリリンタ®)

- エプレレノン (セララ®)

- トルバプタン (サムスカ®)

- イバブラジン (コララン®)

- フィネレノン (ケレンディア®)

精神神経領域

ベンゾジアゼピン系睡眠薬、 オレキシン受容体拮抗薬 (例 : デエビゴ®)、 抗精神病薬 (例 : セロクエル®) もCYP3A4で代謝される。 阻害薬の併用により薬効が増強され、 過鎮静、 傾眠、 ふらつきなどの有害事象が強く現れるおそれがある。

感度が高い基質薬の例

- トリアゾラム (ハルシオン®)

- ミダゾラム (ドルミカム®)

- ブロチゾラム (レンドルミン®)

- クエチアピン (セロクエル®)

- ルラシドン (ラツーダ®)

- ブロナンセリン (ロナセン®)

- エレトリプタン (レルパックス®)

腫瘍領域

近年、 多くの分子標的薬、 特にチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) が開発されているが、 その多くはCYP3A4の基質である。 抗がん薬は治療域が狭く、 CYP3A4阻害薬との併用により血中濃度が大幅に上昇すると、 重篤な副作用のリスクが著しく高まる。 そのため、 厳密な用量調整および併用薬の選択が求められる。 実際、 イブルチニブやベネトクラクスなどは 「感度の高いCYP3A4基質」 として知られており、 阻害薬併用時の推奨用量が定められている。

感度が高い基質薬の例

- イブルチニブ (イムブルビカ®)

- アカラブルチニブ (カルケンス®)

- ダサチニブ (スプリセル®)

- ボスチニブ (ボシュリフ®)

- ベネトクラクス (ベネクレクスタ®)

- エベロリムス (アフィニトール®)

- ラロトレクチニブ (ヴァイトラックビ®)

- タゼメトスタット (タズベリク®)

その他

日常的に摂取されるグレープフルーツジュースもCYP3A4を強力に阻害することが知られており、 患者指導時には十分な注意が必要である。

CYP3A4以外の薬物代謝酵素は?

本稿では、 CYP3A4阻害薬のうち特に重要度の高いものに焦点を当てたが、 CYP3A4誘導薬やその他の代謝酵素に関連する薬物相互作用も、 臨床上注意を要するものが数多く存在する。

高齢化が進む中、 「多病」 患者への処方においては、 より一層の慎重な対応が求められる。

代謝酵素 (P450 分子種) およびトランスポーターを介する相互作用において留意すべき薬物のリスト¹⁾』を活用し、 適切な薬剤選択と患者モニタリングを行うことが、 安全かつ効果的な薬物治療につながる。

出典

1) 一般社団法人 日本医療薬学会、 代謝酵素 (P450 分子種) およびトランスポーターを介する相互作用において留意すべき薬物のリスト―第 1 版―

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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