未治療の切除可能な局所進行胃/食道胃接合部 (G/GEJ) 腺癌の周術期における化学療法への抗PD-1抗体ペムブロリズマブ上乗せの有効性と安全性を検証した第Ⅲ相ランダム化二重盲検比較試験KEYNOTE-585の主解析結果から、 周術期にペムブロリズマブを上乗せすると、 化学療法単独と比べて病理学的完全奏効率 (pCR) を達成したものの、 無イベント生存期間 (EFS) の有意な延長は認められなかった。 国立がん研究センター東病院消化管内科長の設楽紘平氏が発表した。
研究デザイン
対象
未治療で切除可能な局所進行G/GEJ腺癌で深達度T3以上またはリンパ節転移陽性の患者
方法
メインコホート
804例を以下の2群に1:1で割り付けた。
術前療法として化学療法*+ペムブロリズマブ200mg IV (以下、全て3週おき) を3サイクル、 術後には化学療法+ペムブロリズマブを3サイクル、 その後はペムブロリズマブを最長11サイクルまで投与
*シスプラチン80mg/m² IV (day1) +カペシタビン1000mg/m² (1日2回経口投与、 day1-14) またはシスプラチン80mg/m² IV (day1) +5-FU 800mg/m² IV( day1-5、 最大4000 mg/m²)
ペムブロリズマブに代わりプラセボを投与
FLOTコホート
203例を以下の2群に1:1で割り付けた。
術前療法としてFLOT** (2週おき、 4サイクル) +ペムブロリズマブ200mgIV (以下、 全て3週おき) を3サイクル、 術後にはFLOT+ペムブロリズマブ、 その後はペムブロリズマブを最長11サイクルまで投与
**5-FU 2600mg/m²+ロイコボリン200mg/m²+オキサリプラチン85mg/m²+ドセタキセル50mg/m²
ペムブロリズマブに代わりプラセボを投与
層別因子として以下を設定
- 地域 (アジア vs 非アジア)
- 病期 (II期 vs III期 vs IVa期)
- 化学療法 (XP/FP vs FLOT)
評価項目
主要評価項目:盲検下独立中央評価 (BICR) によるpCR、 担当医評価によるEFS、 全生存期間 (OS;メインコホート) 、 安全性 (FLOTコホート)
副次評価項目:安全性、 客観的奏効割合 (ORR) 、 病勢制御率 (DCR) 、 OS、 治療の失敗までの期間 (TTF)
研究結果
追跡期間中央値
47.7ヵ月 (範囲26.8-63.6カ月)
患者背景 (ペムブロリズマブ併用群、 プラセボ併用群)
メインコホート
- 年齢中央値 (64歳、 63歳)
- 男性 (72%、 71%)
- アジア (47%、 48%)
- 欧米 (27%、 25%)
- MSI-H (高頻度マイクロサテライト不安定性) 両群とも9%
- III期 (75%、 76%)
- 胃癌 (79%、 80%)
- 術前治療完了率 (94%、 91%)
- 手術完了率 (85%、 82%)
- 完全切除 (R0) 率 (80%、 75%)
FLOTコホート
- アジア 両群とも38%
- 欧米 (34%、 35%)
- MSI-H (9%、 8%)
- III期 (75%、 74%)
- 胃癌 (75%、 76%)
- 術前治療完了率 (95%、 94%)
- 手術完了率 (88%、 87%)
- R0率 (79%、 80%)
pCR率
メインコホート
(95%CI 9.8-16.6%)
(95%CI 0.9-3.9%)
群間差 10.9% (95%CI 7.5-14.8%)、 p<0.0001
- 年齢、 性別、 地域などのいずれのサブグループ解析でもペムブロリズマブ併用群が優位。特にMSI-HグループでpCR率が37%と優位性が高かった。
メインコホート+FLOTコホート
(95%CI 10.2-16.3%)
(95%CI 1.3-4.2%)
群間差 10.6% (95%CI 7.4-14.0%)
EFS中央値
(95%CI 33.0ヵ月-NR)
(95%CI 20.6-33.9ヵ月)
HR 0.81 (95%CI 0.67-0.99)、 p=0.0198
事前に規定した有意水準 (片側P=0.0178) に達しなかった
EFS率 (24ヵ月時、 36ヵ月時)
- ペムブロリズマブ併用群:58%、 54%
- プラセボ併用群:51%、 44%
メインコホートにおけるEFSのサブグループ解析でも、 ほとんどのサブグループにおいてペムブロリズマブ群の優位性が認められた一方で、 CPS1以上/1未満のグループでは両群に差はなく、 CPS10以上/10未満ではペムブロリズマブ群のプラセボ群に対する優位性が認められた。
OS中央値
(95%CI 51.5ヵ月-NR)
(95%CI 41.5ヵ月-NR)
HR 0.90 (95%CI 0.73-1.12)
OS率 (24ヵ月時、 36ヵ月時)
- ペムブロリズマブ併用群:72%、 65%
- プラセボ併用群:69%、 60%
メインコホートにおけるOSのサブグループ解析では、 特にMSI-Hグループでペムブロリズマブの優位性が高かった (HR 0.38) 。
有害事象 (AE):治療関連AE (グレード3、 4) の発現率
治療関連有害事象 (TRAE)
- ペムブロリズマブ併用群:64%
- プラセボ併用群:63%
免疫関連有害事象
- ペムブロリズマブ併用群:11%
- プラセボ併用群:3%
設樂氏らの結論
切除可能な局所進行G/GEJ腺癌に対し、 周術期の化学療法にペムブロリズマブを上乗せすると、 化学療法単独と比べてpCRは有意に改善したものの、 EFSの有意な延長は認められなかった。 ペムブロリズマブ併用の安全性プロファイルは既報と一貫していた。 周術期の免疫チェックポイント阻害薬併用の有効性に関しては、 さらなる検討が必要である。