海外ジャーナルクラブ
2ヶ月前
国立がん研究センター東病院副院長の吉野孝之氏、 兵庫医科大学消化器外科学の片岡幸三氏らの研究グループは、 大腸癌肝転移に対し肝切除を行った患者を対象に血中腫瘍循環DNA (ctDNA) の解析を実施し、 術後の再発リスクについて検討した。 その結果、 術後2~10週の間にctDNA陽性の患者は、 術後療法を受けることで再発リスクが低くなる一方で、 ctDNA陰性の患者は術後療法を受けても再発リスクが変わらないことが示された。 本研究はAnn Oncol誌にて発表された。
後ろ向き観察研究結果であってもRCTの元となり得る、 見本のような研究です。 仮説がシンプルで結果がクリアです。
大腸癌肝転移患者への術後療法の有効性はいまだ解明されておらず、 再発リスクに応じた術後療法の使用が期待されている。
大腸癌術後のリキッドバイオプシーが術後再発を予測する有用なバイオマーカーであることはGALAXY試験*の中間結果で報告されているが、 大腸癌肝転移の患者においても術後の個別化医療に有用であるかどうかは明らかではない。
GALAXY試験の登録例で、 大腸癌肝転移に対して初回手術を実施した患者190例を対象に、 術後2~10週の間でctDNAが陽性・陰性の患者に分け、 術後療法を受けた患者と受けなかった患者で再発割合を比較した。
術後2~10週にctDNA陽性の患者 (ctDNA陽性例) は61例、 ctDNA陰性の患者 (ctDNA陰性例) は129例であった。
ctDNA陽性例では、 術後療法を受けなかった患者の無病生存期間 (DFS) 中央値が1.45ヵ月であったのに対し、 術後療法を受けた患者では12.9ヵ月であり、 再発リスクが有意に低下した (HR 0.07、 p<0.0001)。
ctDNA陰性例では、 術後療法を受けなかった患者の24ヵ月時点のDFSは62.3%、 術後療法を受けた患者のDFSは72.3%であり、 両者に有意差は認められなかった (HR 0.68、 p=0.371)。
さらに再発臓器を比較したところ、 ctDNA陽性例では肝転移再発率が有意に高く (73.6% vs 33.3%、 p=0.0004)、 陰性例では肺転移再発率が有意に高かった (61.9% vs 26.4%、 p=0.0021)。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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