HOKUTO編集部
10日前
2024年12月7~10日に米・サンディエゴで開催された米国血液学会 (ASH 2024) について、 Plenaly sessionおよびLate-Breaking Abstracts Session (LBA) の注目トピックスを紹介します (解説 : 大阪国際がんセンター 藤重夫氏)。
AALL1731試験は、 新たに米国立癌研究所 (NCI) 分類の標準リスク (SR) と診断された小児B細胞性急性リンパ芽球性白血病 (ALL) を対象に、 二重特異性抗体ブリナツモマブの化学療法への追加による無病生存期間 (DFS) の改善効果を評価した第Ⅲ相無作為化試験である。
結果は、 ブリナツモマブ上乗せにより DFSが有意に改善した。 成人とは大きく異なりコントロール群の成績も良い傾向にあることから、 既存の標準治療でも小児B-ALLの予後は非常に良好と考えられるが、 さらなる治療成績の向上のために、 同種造血幹細胞移植 (allo-HCT) の必要性のさらなる検証や化学療法における毒性の軽減などが今後期待される。 また、 同様の取り組みが成人でも進むことを期待したい。
米国での急性骨髄性白血病 (AML) 患者がallo-HCTを受けているかどうか、 および移植後の予後と経済的な指標の関連について検討した多施設観察研究である。 結果的には、 allo-HCTを受ける確率は社会経済的な指標と関連があるという結果であった。 また、 教育レベルと経済レベルは相関が強いと予想され、 これらの指標のレベルが低い場合に移植の施行率が低かった。
米国でも以前と比すると医療へのアクセスは改善されたというが、 このような問題点が注目されているのかもしれない。
LUNA3試験は、 免疫性血小板減少症 (ITP) を対象に、 BTK阻害薬rilzabrutinibの有効性と安全性を評価した第 Ⅲ 相無作為化比較試験である。
ITPにおいてはBTK阻害薬の開発というのが近年進んでいる。 結果は、 rilzabrutinibがプラセボと比較して、 持続的な血小板反応の達成、 出血の軽減、 レスキュー療法の必要性の減少、 身体的疲労の改善、 および安全かつ良好な忍容性を示した。 やはりBTK阻害薬はITPにおいて高い有効性を示すようであり、 日本でも開発が進むことを期待したい。
inMIND試験は、 再発または難治性の濾胞性リンパ腫 (FL) に対し、 レナリドミド+抗CD20抗体リツキシマブへの抗CD19抗体tafasitamabの上乗せ効果について、 プラセボを対照に検証した第Ⅲ相無作為化比較試験である。 結果は、 担当医評価の無増悪生存期間 (PFS) 中央値が22.4 ヵ月 vs 13.9ヵ月 (HR 0.43 [95%CI 0.32-0.58]、 p<0.0001) と有意な改善が示された。 tafasitamab群で若干COVID-19が多い点以外は、 有害事象にも大きな差はなかった。
EA4151試験は、 マントル細胞リンパ腫 (MCL) における自家造血幹細胞移植 (auto-HCT) のメリットと、 PCRにより測定した分子的残存病変 (MRD) 陰性化の関係を検討した第Ⅲ相無作為化比較試験である。 結果としてMRDが陰性化している例においてはauto-HCTのメリットは示されなかった。 一方、 MRDが陽性のままだった患者は、 auto-HCT後にMRD陰性を達成した例も報告され、 一定のメリットはあると考えられる。
鎌状赤血球症 (SCA) は日本でほとんど診ることがない疾患であるが、 今回ガーナで行われた前向き無作為化比較試験PIVOTが報告された。 SCAに対してはヒドロキシウレアが有効であることは既によく知られているようにも感じたが、 ヘモグロビンSC症 (HbSC) においては確立されていなかったようである。 今回、 他のSCAと同様に臨床的に大きなメリットが示されている。
SCAの小児におけるallo-HCTの有効性を評価した前向き研究の中で、 QoL等のパラメーターを長期にわたって評価した研究である。 結果は、 血縁HLA適合ドナーがいてallo-HCTを施行した例は、 標準治療を思考した例に比べ、 10年後においてもQoL等のパラメーターが優れていることが示されている。
この研究では、 ケトン生成食 (Ketogenic diet) が CAR-T細胞療法の有効性に与える影響がマウスモデルにおいて検証されている。 ケトン生成食を与えられたマウスは、 他の食事を与えられたマウスと比較して、 腫瘍の抑制および全生存期間の改善を示した。 この結果に関して、 ケトン生成食の主要代謝物であるβ-ヒドロキシ酪酸 (BHB) がCAR-T細胞に良い影響を与えているのではと述べられている。 実際にヒトで検討が進むと面白い。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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