HOKUTO編集部
4日前

2026年6月11~14日にスウェーデン・ストックホルムで欧州血液学会 (EHA 2026) が開催されました。
本稿では大阪国際がんセンター血液内科 副部長の藤 重夫先生に、 同会における血液領域の注目演題についてご解説いただきました。

▼概要
FLT3変異を有するAMLに対し、 化学療法に上乗せするFLT3阻害薬として、 第二世代のギルテリチニブと第一世代のmidostaurinを比較した大規模な第Ⅲ相試験です。
▼結果とコメント
本邦ではmidostaurinが使用できないので、 ギルテリチニブ上乗せでどの程度のメリットが得られるのかが注目されていました。 結果、 ギルテリチニブは再発を抑制する効果は高かったものの、 全生存期間 (OS) は両群でほぼ同等であり、 全体としてはネガティブな結果でした。
特にギルテリチニブ群で血球回復の遅延が問題となっており、 他剤と併用する場合はその点に注意を要するかもしれません。
▼概要
小児高リスクB-ALLにおける地固め療法をCD19×CD3二重特異性抗体ブリナツモマブに置き換えることの有用性を検証した第Ⅲ相試験です。
▼結果とコメント
ブリナツモマブ群で4年無イベント生存率 (EFS) が10%を超える改善を認めており、 その意義は大きなものです。 毒性を抑えつつ再発を減らすという理想的な結果であり、 素晴らしい成果と考えられます。
ブリナツモマブは中枢への移行が乏しいとされているにもかかわらず、 中枢神経系の再発も抑制した点が議論になりました。
▼概要
再発・難治のCLL/SLLに対し、 ベネトクラクス+リツキシマブ (V-R) に非共有結合型BTK阻害薬ピルトブルチニブの上乗せの有無で比較した第Ⅲ相試験です。
▼結果とコメント
ピルトブルチニブ上乗せ群は、 対照群 (V-R単独) に対し無増悪生存期間 (PFS) で有意に優れる結果でした。 ただし、 PFSのカプランマイヤー曲線は全体としてプラトーには達しておらず、 現在でも、 いったん再発・難治となると長期的な疾患コントロールは難しい可能性も示唆されました。 そのような症例のうち若年でfitな場合には一部で同種造血幹細胞移植を検討してもよいと考えられます。
▼概要
再発・難治のLBCLに対し、 CD20×CD3二重特異性抗体エプコリタマブと担当医選択療法を比較した第Ⅲ相試験です。
▼結果とコメント
エプコリタマブ群では長期的にもPFSを維持する例が観察され、 担当医選択療法群よりもPFSが有意に優れていました。
最近では二重特異性抗体を含む併用療法の開発が盛んになってきており、 併用した場合にこの単剤療法よりどの程度優れるのか、 CAR-T細胞療法と比較してどうか、 といった点が今後の検討課題となります。
▼概要
再発・難治性のMMにおけるGPRC5D×CD3二重特異性抗体トアルクエタマブを含む併用療法に関する大規模な第Ⅲ相試験です。
▼結果とコメント
トアルクエタマブ使用例でのPFSが非常に優れた結果を示しており、 最近のBCMA×CD3二重特異性抗体テクリスタマブによる治療成績と比較しても遜色ないものと考えられます。 ポマリドミドまで上乗せするメリットは現時点ではっきりしていないようですが、 二重特異性抗体と免疫調節薬 (iMiDs) の併用効果にも期待したいです。
やはり体重減少が起こるようで、 もともと体格が比較的小さい日本人では注意を要すると考えられます。
▼概要
高リスクのくすぶり型のMMに対するテクリスタマブ導入の意義を検討した第Ⅱ相試験です。
▼結果とコメント
くすぶり型のMMは以前は経過観察が主体でしたが、 近年はリスク分類も広まり、 この段階で治療を行うことが一般化してきています。 本試験では、 テクリスタマブ群はレナリドミド+デキサメタゾン (Rd) 群に対し、 奏効の深さでもPFSでも有意に優れる結果でした。
有症状になるまで待たずに治療介入する流れは他の疾患においても参考になります。 費用対効果の観点から考えると、 テクリスタマブを用いるのは過剰との見方もあります。 ただ、 この段階での治療がほぼ治癒につながると示されれば、 今後の治療の流れも変わってくるかもしれません。
▼概要
HLA適合同種移植の移植片対宿主病 (GVHD) 予防で移植後シクロホスファミド (PTCy) と抗Tリンパ球グロブリン (ATLG) のどちらを用いるべきかを検討した大規模な第Ⅲ相試験です。
▼結果とコメント
興味深いことに、 OSでもほぼ有意差がつくほど、 ATLG群がPTCy群より優れる傾向が示されました。 PTCy群では年齢中央値が60歳を超えていたにもかかわらず、 PTCyを100 mg/kgで用いたことが非再発死亡 (NRM)、 特に感染症のNRMの増加につながった可能性があります。 しかし、 それでもPTCy群の2年NRM率は13%にとどまっており、 ATLG群では7%でした。
演者らはこの結果をもって、 HLA適合同種移植においてはPTCyではなく抗胸腺細胞グロブリン (ATG) を用いる方針を示唆していました。 本邦で使用できるATGと今回のドイツの試験で用いられているATLGは異なる製剤であり、 標準的な用量が異なる点には注意が必要です。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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