亀田総合病院
5ヶ月前
亀田総合病院リウマチ・膠原病・アレルギー科の専門医が担当する新連載をお届けします。 リウマチ・膠原病診療に関わるさまざまな疑問とそのTipsについて、 分かりやすく解説します (第3回解説医師 : 六反田諒先生) 。
リウマトイド因子 (rheumatoid factor ; RF) はリウマチ・膠原病疾患を疑った際に幅広く用いられる、 抗体検査の代表的存在の1つです。 安価で簡便に測定できることから、 実臨床のみならず健診などでも測定されることがありますが、 その検査特性を知らずにいると結果の解釈が難しくなってしまいます。
各疾患におけるRFの陽性率 (表1)¹⁾ を見ると、 関節リウマチ (RA) 以外にもシェーグレン症候群・混合性結合組織病 (MCTD) などの膠原病、 そして非膠原病であるさまざまな感染症や悪性腫瘍でも一定の割合で陽性になることが分かります。
背景として、 1987年に発表された米国リウマチ学会 (ACR) による関節リウマチ分類基準では 「RFは健常人での陽性率が5%を超えない方法で検査する」 と定められており²⁾、 現在でもその指針に従ってカットオフ値が定められています。 そのため、 健常人に対しRFを測定しても必然的に5%程度に陽性反応が生じます。
また、 RFは生理的にもさまざまな免疫に関与する役割 (後述) があるため、 免疫が刺激される非膠原病疾患で陽性になることもまた当然なのです。
これらの点から、 関節リウマチの検査前確率が低い場合にRFを測定することはあまりお勧めできません。
一例としてChoosing Wisely Canadaでは、 RFの測定は"臨床的に疑いのある関節痛 (clinically suspect arthralgia) "のある患者に限るべきであると推奨されています (表2)³⁾。
筆者の私見ですが、 それ以外に不明炎症、 間質性肺炎、 アミロイドーシスなどの原因精査の際にも、 RF測定を契機にして背景疾患の関節リウマチが診断された場合があります。 このように、 ある程度検査前確率が高い状況で、 かつRF陽性であれば関節リウマチの可能性が高まると解釈して良いと思います。
また、 カットオフ値の3倍を超える高力価のRF陽性は関節リウマチの予後不良因子と報告されており、 診断後の治療にも関係します⁴⁾。
では検査前確率が高い症例で、 RF陰性であった場合はどう考えるのでしょうか?
関節リウマチに対するRFおよび抗CCP抗体の診断精度に関するメタ解析によれば、 RFの感度は69%と報告されており⁵⁾、 RF陰性であっても関節リウマチの除外はできません。
また、 関節リウマチの約2割はRF・抗CCP抗体ともに陰性である血清反応陰性関節リウマチであると言われており、 血清反応陰性例の場合には、 経過・身体所見・画像所見・治療反応性など総合的な判断で他疾患を鑑別することが必要になります。
可能であれば専門家に委ねることが望ましいと思いますが、 あえて主な鑑別疾患を挙げるとすれば、 変形性関節症、 結晶性関節炎、 リウマチ性多発筋痛症、 乾癬性関節炎、 更年期関節症などです。
実は、 RFとは特定の1つの抗体ではなく、 IgGのFc領域に結合する抗体全てを指します。 また、 通常日常臨床で測定されているRFはIgM型ですが、 IgG型/IgA型など他のアイソタイプも存在しており、 RFと言っても実は幅広い抗体が存在していることが分かります。
RFは免疫複合体の除去・免疫寛容・抗原除去の補助など生理的にもさまざまな役割を果たしており、 その機能にはまだまだ不明な部分も多いのですが、 一部のRFRFは抗CCP抗体として検出される抗シトルリン化蛋白抗体 (ACPA) にin vitroで結合することが報告されており、 ACPAの病的はたらきを増強している可能性が示唆されています⁶⁾。
¹⁾ Kelley's Textbook of Rheumatology. 2013. ELSEVIER.
²⁾ 日本リウマチ学会 : リウマトイド因子標準化のガイドライン (日本臨床検査標準化協議会認証) .2011
³⁾ Ann Rheum Dis. 2017;76(3):491-496.
⁴⁾ Ann Rheum Dis. 2005 Dec;64(12):1731-6.
⁵⁾ Ann Intern Med. 2007;146(11):797.
⁶⁾ Arthritis Rheumatol. 2014 Apr;66(4):813-21.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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