【新連載】乾癬の診断基準と病型分類 (大塚篤司氏)
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HOKUTO編集部

11ヶ月前

【新連載】乾癬の診断基準と病型分類 (大塚篤司氏)

【新連載】乾癬の診断基準と病型分類 (大塚篤司氏)
乾癬治療は、 生物学的製剤や新規経口薬の登場により選択肢が多様化しています。 本連載では薬剤ごとの特徴や選択の考え方、 現場での運用のポイントを整理します。 

はじめに

乾癬は、 境界明瞭な紅斑と鱗屑を特徴とする慢性の炎症性角化症である。 患者のQOLに影響し、 全身性炎症性疾患として関節炎やメタボリックシンドロームなどの合併症リスクも指摘される。

本邦のガイドライン¹⁾では主に尋常性乾癬、 乾癬性関節炎、 膿疱性乾癬、 乾癬性紅皮症の4型に分類され、 正確な診断と病型分類が治療戦略立案に不可欠である。

本稿では、 これらの主要病型の特徴、 診断基準、 鑑別点を最新の知見に基づき概説する。


乾癬の診断

「皮疹の視診」 と 「病歴聴取」 が基本

乾癬の診断は、 特徴的な皮疹の視診と詳細な病歴聴取が基本である。

典型像では、 境界明瞭な紅斑上に銀白色の鱗屑が付着する。 Auspitz現象*¹やケブネル現象*²も参考所見となる。

*¹乾癬の病変部の鱗屑をこすり取ると、 点状の出血がみられる現象。 表皮の菲薄化および真皮乳頭の毛細血管の拡張・脆弱化に起因する。
*²外傷や刺激を受けた部位に、 皮疹が新たに出現する現象。 例えば掻破や手術痕などに沿って、 新しい皮疹が形成される。
乾癬に典型的な病理組織像
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スケールバー : 500μm
(著者より提供)

非典型例や鑑別困難例では皮膚生検が有用であり、 錯角化を伴う表皮肥厚などの特徴的病理組織像を示す。

なお、 特異的な血液検査マーカーはないが、 病型や重症度に応じ、 炎症反応や自己抗体などを評価する。


尋常性乾癬

全乾癬の約90%を占める最頻型

頭部、 肘、 膝など刺激を受けやすい部位に好発し、 境界明瞭な紅斑上に銀白色の厚い鱗屑を呈する。

尋常性乾癬
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(著者より提供)

爪症状 (点状陥凹、 混濁・肥厚、 剥離、 油滴様局面など) も高頻度に認められ、 乾癬性関節炎との関連も示唆される。

典型例の診断は比較的容易であるが、 初期や非典型的な形態では脂漏性皮膚炎などとの鑑別が必要である。

乾癬がQOLに与える影響は、 皮疹の範囲だけでなく発生部位や掻痒の程度にも左右される。 そのため、 個別の対応が重要である。

乾癬性関節炎 (PsA)

乾癬患者の約10~30%に合併する、 慢性進行性の関節炎

皮膚症状と関節症状の出現時期は多様である。

末梢関節炎、 体軸関節炎、 指趾炎、 付着部炎などを呈し、 爪症状はPsAのリスク因子とされる。 診断にはCASPAR分類基準²⁾などが用いられる。

CASPAR分類基準 >>計算ツールを利用する

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(文献2を参考に編集部作成)

PsAは見逃されると不可逆的な関節破壊をきたすため、 早期発見・早期治療介入が極めて重要である。 皮膚科医は関節症状の問診を徹底し、 リウマチ専門医との連携を図る必要がある。

膿疱性乾癬

GPPは致死的となり得るため特に注意

急な発熱や全身症状と共に、 紅斑上に多数の無菌性膿疱が出現する稀な病型である。 特に汎発性膿疱性乾癬 (GPP) は指定難病であり、 生命を脅かすこともある。

誘因は感染症、 妊娠、 薬剤 (例 : ステロイドの急な中止) などがあり、 IL36RN遺伝子変異も関与する。

診断は臨床症状、 血液検査での炎症反応、 皮膚生検でのKogoj海綿状膿疱の確認が重要である。

膿疱性乾癬の病理組織像
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スケールバー:上 250μm、 下 100μm
(著者より提供)

GPPは急速進行し致死的となり得るため、 迅速な診断と入院での集学的治療が必須である。 尋常性乾癬からの移行もあり注意が必要である。

乾癬性紅皮症

全身皮膚の90%以上が潮紅・落屑

皮疹が広範囲に及び、 全身状態にも影響する重症型である。 尋常性乾癬の拡大や不適切治療、 膿疱性乾癬からの移行などで発症する。

発熱などの全身症状を伴い、 皮膚バリア破綻による体温調節障害、 体液・タンパク質喪失、 二次感染リスクが高まる。

診断は臨床像と既往歴が基本であるが、 他疾患との鑑別が重要である。

入院加療が原則であり、 全身管理 (体液・電解質補正、 栄養、 感染対策) が最重要である。 原因薬剤の中止、 ステロイド内服は慎重に行い、 シクロスポリンや生物学的製剤が選択される。


おわりに

乾癬は多様な病型を有し、 それぞれ治療戦略が異なる。 正確な病型診断は最適な治療選択、 疾患活動性コントロール、 合併症抑制、 QOL最大化の基盤である。

特に乾癬性関節炎や膿疱性乾癬では早期発見・介入が予後を左右する。

近年の生物学的製剤などの新規治療薬は乾癬診療に大きな進歩をもたらした。 日常診療では、 特徴的な皮疹を見逃さず、 関連症状を聴取し、 必要に応じて専門医と連携することが医師の責務である。

<出典>
1) 日本皮膚科学会 : 乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス (2022 年版) .
2) Arthritis Rheum. 2006 Aug;54(8):2665-73.

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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