MRDガイダンス第2版、膀胱癌MRD陽性の術後補助療法を「強く推奨」
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HOKUTO編集部

1日前

MRDガイダンス第2版、膀胱癌MRD陽性の術後補助療法を「強く推奨」

MRDガイダンス第2版、膀胱癌MRD陽性の術後補助療法を「強く推奨」
日本癌治療学会のMRDガイダンス 「分子的残存病変 (MRD) 検査の適正臨床利用に関する見解書」 第2版が2026年10月に発刊された¹⁾。 クリニカル・クエスチョン (CQ) の推奨のうち8項目で推奨度が格上げされ、 膀胱癌の術後MRD陽性例に対する術後補助療法が初めて 「強く推奨する」 とされた。 治療効果判定に関するCQ9と、 今後の研究課題 (FRQ) 4題も新設された。 国立がん研究センター東病院肝胆膵外科医長/周術期治療開発推進室長の小林信氏が発表した²⁾³⁾。

改訂の背景 : MRD検査をめぐり何が変わった?

小林氏は、 第1版の発刊 (2024年10月) 以降、 MRD検査は予後予測のマーカーから治療方針を判断する検査へと発展したと述べ、 その背景として、 試験結果・臨床試験の設計・規制の3つの変化を挙げた。

MRDに基づく治療介入は癌種によって異なる結果に

膀胱癌ではIMvigor011試験で、 術後MRD陽性例へのアテゾリズマブが無病生存期間 (DFS) と全生存期間 (OS) を有意に延長した⁴⁾。

IMvigor011試験 : 筋層浸潤性膀胱癌の術後にMRD陽性となった患者を対象に、 アテゾリズマブとプラセボを比較した第III相試験

>>IMvigor011試験の詳細を確認する

一方、 大腸癌ではDYNAMIC-III試験とALTAIR試験がいずれも主要評価項目を達成しなかった⁵⁾⁶⁾。

DYNAMIC-III試験 : Stage III大腸癌の術後に、 MRD検査の結果に基づいて術後補助療法を強化 (陽性例) または簡略化 (陰性例) する意義を検証した無作為化比較試験

>>DYNAMIC-III試験の詳細を確認する

ALTAIR試験 : 大腸癌術後のサーベイランス中にMRD陽性となった患者を対象に、 トリフルリジン・チピラシルとプラセボを比較した無作為化二重盲検試験

MRDを組み込んだ臨床試験が増加

MRDを適格基準や評価項目とする臨床試験が増えている。 米食品医薬品局 (FDA) も2024年に公表した産業界向けガイダンス案で、 MRDを適格基準・割付因子に、 血中循環腫瘍DNA (ctDNA) 量の変化を奏効評価に用いる枠組みを提案した。

規制当局の審査姿勢が明確に

FDAは膀胱癌でSignateraをコンパニオン診断薬として承認し、 国内でも大腸癌 (2026年6月) と膀胱癌 (2026年9月) で薬事承認された。

改訂ポイントと構成は?

8項目で推奨度格上げ、CQ9とFRQを新設

改訂のポイントは次の4点である。

MRDガイダンス第2版、膀胱癌MRD陽性の術後補助療法を「強く推奨」
文献1を基に編集部作成

周術期の流れに沿いCQ・FRQを設定

CQは癌種横断的な臨床課題として設定され、 エビデンスレベル1の癌種には個別の推奨を示した。 推奨度はSR (強く推奨する)、 R (推奨する)、 ECO (考慮する)、 NR (推奨しない) の4段階で、 薬事承認・保険償還を考慮せずに委員の投票で決定された。

CQ 10題とFRQ 4題を周術期の流れに沿って整理したマップを以下に示す。

MRD検査の周術期マップ (第2版)
MRDガイダンス第2版、膀胱癌MRD陽性の術後補助療法を「強く推奨」

主な改訂・新設CQ・FRQは?

小林氏は講演で、 第2版のCQ・FRQのうちいくつかを取り上げて解説した。 以下にその概要を紹介する。

【CQ3】術後2週以降の検査を強く推奨、再発サーベイランス複数回測定も推奨

MRD検査はいつ行うことが推奨されるか?

再発リスク評価を目的とする場合では、 術後2週以降、 術後補助療法を行う場合はその開始前を目安にMRD検査を行うことが 「推奨する」 から 「強く推奨する」 に格上げされた。

再発サーベイランスを目的とする場合では、 各癌種のガイドライン等を参考に複数回検査を行うことが 「考慮する」 から 「推奨する」 に格上げされた。 ただし、 具体的な時期や回数は今後の検討課題とされた。

【CQ6】MRD陽性例の術後補助療法、膀胱癌で「強く推奨」

術後MRD陽性の患者に対して、 術後補助療法は推奨されるか?

第2版では膀胱癌とその他の癌種に分けて推奨が示された。 膀胱癌ではIMvigor011試験に基づき、 術後1年間にMRD陽性が確認された再発高リスクの筋層浸潤性膀胱癌に対し、 術後補助療法を行うことが 「推奨する」 から 「強く推奨する」 に格上げされた。 同試験では術後1年まで繰り返し検査が行われたが、 これは 「再発サーベイランス検査」 ではなく 「術後MRD検査」 に当たる。 そのため、 アテゾリズマブ開始後のサーベイランス検査を推奨するものではない。

その他の癌種では、 臨床病理学的因子により術後補助療法の対象と判断され、 かつ術後MRD陽性の患者に対し、 各癌種に応じた術後補助療法を行うことが 「強く推奨する」 とされた。 術後補助療法の対象外の患者がMRD陽性となった場合に、 術後補助療法を勧めるものではない。

【CQ8】MRD陰性でも術後補助療法を推奨、簡略化も選択肢

術後MRD陰性の患者に対して、 術後補助療法は推奨されるか?

臨床病理学的因子で術後補助療法の対象となる患者では、 MRD陰性でも術後補助療法を行うことが 「考慮する」 から 「推奨する」 に格上げされた。 大腸癌のMRD陰性例で術後補助療法を省略できるかは、 進行中の無作為化比較試験 (VEGA試験) の結果を待つ必要がある。 一方、 MRD陰性例は陽性例より予後良好であることから、 腫瘍因子・患者因子等を考慮して治療強度の低いレジメンや術後補助療法を行わないことも選択肢になりうると付記された。

【CQ7】サーベイランス中のMRD陽性例は追加治療を「考慮」

再発サーベイランス中のMRD陽性の患者に対して、 治療変更や追加治療は推奨されるか?

推奨度は第1版と同じ 「考慮する」 にとどまった。 サーベイランス中にMRD陽性となった例は再発リスクが高く、 治療変更や追加治療の必要性は考えられるものの、 その有効性はまだ証明されていない。 大腸癌のALTAIR試験ではトリフルリジン・チピラシルの有用性が示されず、 同様の試験は複数実施されたものの完遂したのは同試験のみである。 小林氏は、 有効性の証明が難しい試験デザインであることから 「考慮する」 にとどめたと説明した。

【CQ9・新設】ctDNAによる術前・術後の効果判定を推奨

ctDNA/MRD検査による術前治療や術後補助療法の治療効果判定は推奨されるか?

術前治療と術後補助療法の治療効果判定に、 ctDNA/MRD検査を用いることがいずれも 「推奨する」 とされた。 また、 効果判定の指標として、 ctDNAクリアランスを、 治療開始前に検出されたctDNAがその後の治療によって検出限界量 (LOD) 以下となることと定義し、 その後のctDNA量の経過は問わないとした。

ctDNAクリアランスが得られた例の予後が良好であることは複数の癌種で示されているが、 試験ごとにアッセイや評価時期が異なり、 臨床実装に向けてはそれらの標準化が課題とされた。

【FRQ】ctDNA陰性例の臓器温存など4つの研究課題

FRQ1は、 術前治療終了時にctDNA陰性の場合に切除せず臓器温存が可能かを問うもので、 膀胱癌ではNEO-BLAST試験で検証が進んでいる。

このほか、 次の3題が設定された。

  • 術前治療中の戦略変更 (FRQ2)
  • 縮小治療後の追加切除 (FRQ3)
  • 他モダリティとの統合 (FRQ4)

まとめ

小林氏は、 結語として 「本書のCQ・FRQがctDNA/MRD検査の適正臨床利用、 ならびに適切な臨床研究の一助となることを望む」 と述べた。 また、 今後MRD陰性例で術後補助療法を省略できるようになれば、 実臨床で最も大きなメリットになるとの期待を示した。

出典

1) 日本癌治療学会 編 (協力: 日本臨床腫瘍学会、 日本外科学会). 分子的残存病変 (molecular residual disease: MRD) 検査の適正臨床利用に関する見解書 第2版. 2026年10月.

2) 小林信. MRDガイダンス第2版発刊の背景. 会長企画シンポジウム2: JSCOが発出するMRD・MCEDガイダンス最新版, 第64回日本癌治療学会学術集会, 2026年10月22日, 神戸.

3) 小林信. MRDガイダンスにおけるCQ、 FRQ紹介. 会長企画シンポジウム2: JSCOが発出するMRD・MCEDガイダンス最新版, 第64回日本癌治療学会学術集会, 2026年10月22日, 神戸.

4) N Engl J Med. 2025 Dec 18;393(24):2395-2408.

5) Nat Med. 2025 Dec;31(12):4291-4300.

6) Nat Med. 2026 Jul;32(7):2473-2480.

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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