神経内分泌腫瘍にエベロリムス+ランレオチド併用は有効?
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HOKUTO編集部

2ヶ月前

神経内分泌腫瘍にエベロリムス+ランレオチド併用は有効?

神経内分泌腫瘍にエベロリムス+ランレオチド併用は有効?
切除不能進行・再発で予後不良因子を有する非機能性膵・消化管神経内分泌腫瘍 (GEP-NET) に対し、 標準治療のエベロリムス単剤療法とエベロリムス+ランレオチド併用療法を比較したSTARTER-NET (JCOG1901) 試験の中間解析において、 エベロリムス+ランレオチド併用の有効性が確認された。 本稿では、 このSTARTER-NET試験について解説する。 

神経内分泌腫瘍とは

神経内分泌腫瘍 (NEN) は神経内分泌細胞に由来し、 悪性度の低い神経内分泌腫瘍 (NET) と高い神経内分泌癌 (NEC) に分類される。

NENは希少癌であり、 特に消化器に多い (約60%)。 日本では大腸などの後腸原発が多いのに対し、 米国では胃や小腸などの前腸・中腸原発 が多い。 近年、 発症数は増加傾向にある。

NETのGrade分類

NETのGrade分類は、 「WHO分類2017」 で変更され、 膵臓原発NEMにおいて、 高分化だがKi-67 LI>20%を示す腫瘍をNET G3、 低分化でKi-67 LI>20%を示す腫瘍をNEC G3と分類された。

また、 「WHO分類 2019」 では、 消化管NENにも NET G3の定義が組み込まれ、 膵・消化管とも同じ悪性度 (Grade) 分類に統一された。 なお、 STARTER-NET試験はNET G1およびG2を対象としている。

「WHO分類 2019」 における悪性度分類を以下に示す。

神経内分泌腫瘍にエベロリムス+ランレオチド併用は有効?
(文献1を参考に編集部作成)

STARTER-NET (JCOG1901) 試験 : ランレオチド併用を検証

対象と研究デザイン

STARTER-NET (JCOG1901) 試験では、 Ki-67 LI 5-20%、 または Ki-67LI<5%かつ多発性肝転移を有するNET G1/G2を対象としている。

一般的にNET G1/G2は予後良好とされているが、 今回の試験対象としているNET G1/G2は5年生存割合が50%程度であり、 予後不良なサブセットであることが知られている。 このような対象における、 標準治療はエベロリムス単剤療法である。

この対象に対して、 さらなる予後の改善が望まれることから、 標準治療であるエベロリムス単剤療法に対する、 エベロリムス+ランレオチド併用療法の無増悪生存期間 (PFS) における優越性を検証する無作為化比較試験がSTARTER-NET (JCOG1901) 試験である。

試験結果

中間解析でEVE/LANの有効性確認、 早期中止

本試験では、 エベロリムス単剤治療を受けた88例 (EVE群) と、 エベロリムス+ランレオチド併用治療を受けた90例 (EVE/LAN群) の計178例が登録された。 両群の患者背景はおおむね同様であった。

2024年6月に実施された中間解析の結果、 EVE/LAN療法の有効性が確認されたため、 試験は早期有効中止となった。

EVE/LAN群でmPFSが有意に延長

中間解析におけるPFSの中央値を以下に示す。 EVE/LAN併用群ではEVE群に比して病勢進行を抑える効果が高く、 ハザード比 (HR) は0.38 (99.91%CI : 0.15-0.96)、 p=0.00017と統計的に有意な結果が得られた。

mPFS

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(文献2を参考に編集部作成)

高悪性度群でPFSの差が顕著

Ki-67 LIの数値によるサブグループ解析では、 Ki-67 LI≧10%のより悪性度の高い集団でPFSの差が目立つ結果となっている。 一方、 Ki-67 LI≦5%の集団ではPFSに差が認められなかった。 このような悪性度の低い集団では、 EVE/LAN併用治療の効果が少ない可能性が示唆されている。

神経内分泌腫瘍にエベロリムス+ランレオチド併用は有効?
(文献2を参考に編集部作成)

有害事象はコントロール可能

有害事象の発現は下記に示す結果となった。 EVE/LAN併用群において口内炎や高血糖が多く認められたが、 コントロール可能であった。

神経内分泌腫瘍にエベロリムス+ランレオチド併用は有効?
非血液学的有害事象はGrade 3以上を掲載
非血液学的有害事象以外は、 両群とも発現率が20%以上の有害事象を掲載
(文献2を参考に編集部作成)

結論

STARTER-NET試験の結果に基づき、 EVE/LAN併用療法は、 予後の悪いG1/G2 GEP-NET (消化管膵神経内分泌腫瘍) 患者において、 1次治療としてPFSを有意に延長した。

さらに、 安全性も良好で、 忍容性が高いことが確認された。 そのため、 EVE/LAN併用療法は、 予後不良なG1/G2 GEP-NET患者に対する新たな標準的な1次治療となる可能性がある。

エキスパートはこう考える

EVE/LAN併用療法はKi-67 LI 5~20%、または Ki-67LI<5%かつ多発性肝転移を有するNET G1/G2における標準治療となる治療である。

ただし、 Ki-67 LI≦5%の集団では、 PFSに差が認められていないことを認識して治療導入を行っていく必要がある。


<出典>
1) Histopathology. 2020 Jan;76(2):182-188.
2) J Clin Oncol 43, 2025 (suppl 4; abstr 652)
神経内分泌腫瘍にエベロリムス+ランレオチド併用は有効?

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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