脂肪性肝疾患 (SLD) に関する病型分類において､ MASLDは ｢代謝機能障害関連脂肪性肝疾患｣､ MASHは ｢代謝機能障害関連脂肪肝炎｣ と称されることが決定しました｡そこで今回は両疾患の日本語名決定を記念して､ MASLD/MASHに関連する過去の研究論文や､ 実臨床での肝疾患診断に役立つコンテンツをまとめました｡ 

病名変更･日本語名決定の経緯

2023年6月､欧米諸国の学会がNAFLD/NASHの名称変更を発表

従来より､ 非アルコール性脂肪肝疾患 (NAFLD) と非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) の用語には､ 偏見を生じる可能性が指摘されていた｡2023年6月､ 欧州肝臓学会 (EASL) らはこれらの病名と分類法を変更すると発表しました｡

2024年8月､ 日本消化器学会､肝臓学会がMASLD/MASHの日本語名を決定

日本消化器病学会および日本肝臓学会は､ 上記の変更に賛同する旨を同年9月に合同で発表し､ 日本語での新病名に関して検討を続けてきた｡そして8月22日､ 日本医学会の医学用語管理委員会で承認され､ 正式に決定したと発表しました｡

▼日本語病名の一覧

診断基準については今後検討とのことです

MASLD/MASH関連の最新論文

2023年の欧州肝臓学会らの発表以降､ MASLD/ MASHに関する論文が多数報告されています｡

MASLDのレビュー論文

レビュー論文と『肝疾患抽出簡易検査シート』

神奈川県内科医学会肝･消化器疾患対策委員会､ 横浜市立大学附属病院､ 国立病院機構横浜医療センターが共同執筆したMASLDに関するレビュー論文と､ その中で取り上げられている ｢肝疾患簡易抽出シート｣について(解説医師 : 横浜市立大学 米田正人氏)

MASLD関連の研究論文

低用量アスピリンで肝脂肪量が減少

JAMA. 2024 Mar 19;331(11):920-929.

長期予後予測に血清フェリチン値が有用

Gut. 2024 Apr 5;73(5):825-834.

MASH関連の研究論文

肝線維化を伴うMASHにチルゼパチドが有効

N Engl J Med. 2024 Jul 25;391(4):299-310.

症状改善にsurvodutideが有望

N Engl J Med. 2024 Jul 25;391(4):311-319.

新名称に関するアンケート結果

MASLD/MASHの認知度は未だ低い

病名変更も新名称も知っている医師は約4割にとどまっており､ 今後の浸透が課題といえます｡

NASH新名称 医師6割 ｢知らない｣

(HOKUTO会員医師395人アンケート)

MASLD/MASH関連ツール

HOKUTOでは肝疾患に関連する各種計算機能を実装しています｡ (今後解説名称は変更予定)

NAFLD線維化スコア (NFS)

非アルコール性脂肪性肝疾患の肝線維化リスク

NFS = -1.675 + (0.037*年齢) + (0.094*BMI [kg/m²]) + (1.13*耐糖能異常/DM [はい=1, いいえ=0]) + (0.99*AST/ALT比) – (0.013*血小板数[×10⁹⁾/L]) – (0.66*Alb [g/dl])

FIB-4 index

肝線維化のリスク評価

FIB-4 Index = (年齢 × AST [IU/L] ) / (血小板数 [10⁹/L × √ALT [IU/L] )

Child-Pugh分類

肝機能障害の重症度分類

その他肝疾患の関連ツール

MELDスコア

肝移植待機患者の3ヵ月予後予測

MELDスコア = 9.57*ln(Cre) + 3.78*ln(Bil) + 11.2*ln(INR) + 6.43

MELD-Naスコア

肝移植待機患者の90日予後予測 (スコアにNaを含む)

MELD＝9.57*ln(Cre) + 3.78*ln(Bil) + 11.2*ln(INR) + 6.43

MELD-Na ＝ MELD - Na - 0.025*MELD*(140-Na) +140

肝障害度分類

肝細胞癌患者の肝予備能評価スコア

ALBIスコア / modified ALBIグレード

肝細胞癌の肝予備能評価

(log10(総ビリルビン[mg/dL]×17.1)×0.66)+(アルブミン[g/dL]×10×-0.085)