北里研究所病院IBDセンター
4ヶ月前

北里大学北里研究所病院 (北研) IBDセンターの抄読会では、 治療選択をめぐる専門医同士の活発な議論から、 臨床に直結する示唆が数多く生まれています。 本連載では、 注目論文に加え、 抄読会で実際に交わされた治療判断の視点や議論のエッセンスを凝縮してお届けします。
第1回は、 急性重症UCにおけるアザチオプリンとトファシチニブの維持療法を比較した最新エビデンスを取り上げます。
Azathioprine or Tofacitinib as Maintenance Therapy in Corticosteroid-Responsive Acute Severe Ulcerative Colitis.
Aliment Pharmacol Ther. 2025 Oct.
急性重症潰瘍性大腸炎 (ASUC) に対する最適な維持療法は明らかではない。
ステロイド大量静注療法に反応するASUC患者におけるアザチオプリン (AZA) とトファシチニブ (TOFA) の寛解維持の有効性を評価する。
傾向スコアマッチング法を用いた単施設後ろ向きコホート研究により、 ステロイド大量静注療法に反応するASUC患者におけるAZAとTOFAの有効性と安全性を評価した。 ASUCの定義には、 modified Truelove and Witts' criteriaを用いた。
ステロイド大量静注療法として、 ヒドロコルチゾンを100mgを6~8時間ごとに投与し、 効果が認められた場合に経口プレドニゾロン40mg/日に移行後、 12週間かけて漸減中止した。 ステロイドの反応性は、 以下のように定義した。
退院時に、 主治医の判断でAZA (1.5-2mg/kg) もしくはTOFA (10mg/BID) を開始した。 再燃は 「再入院、 ステロイド再投与、 治療強化、 結腸切除」 のいずれかと定義し、 主要評価項目は1年間の累積非再燃とした。
対象は115例 (AZA65例、 TOFA50例) で、 年齢中央値は38歳 (IQR : 28~49歳)、 女性54例 (46.95%) であった。
主要評価項目である1年間累積非再燃率は、 AZA群の44.0%に比べ、 TOFA群では75.0%と有意に高かった (log-rank検定、 p =0.01)。 イベント別の検討では、 再入院や治療強化はAZA群で有意に多かったが、 結腸切除率については両群間で差を認めなかった。
有害事象は、 AZA群では白血球減少、 TOFA群でざ瘡が有意に多かったが、 その他の有害事象では両群間に有意差は認められなかった。
ステロイド反応性ASUCにおける寛解時として、 TOFAがAZAと比較し優れている。

本研究は、 ASUCでステロイドに反応した後の維持療法として、 AZAとTOFAの有効性を比較した研究になります。 全体的なイベント抑制で見るとTOFAの方が優れていましたが、 結腸切除においては両群間で差を認めませんでした。
同様のコンセプトの研究として、 AZA単独とIFX+AZA併用療法による維持療法の有効性を比較した無作為化比較試験 (RCT) では、併用療法がAZA単独療法と比較し有効であることが報告されています¹⁾。
今後、 他の薬剤を用いた同様の検討が進展することで、 欧米においてはこのような治療戦略が主流になるのかもしれません。
医療経済的な観点も考慮すると、 すべての症例に対し 「AZAではなくadvanced therapyを用いるべき」 ということではなく、 AZAで維持困難な症例を見極め、 そのうえで治療を選択していくことが、 今後ますます重要になると考えられます。


コホート全体でステロイド投与歴ありは約45%でした。 ご紹介したようにIFXでの比較のRCTはありますが、 他のadvanced therapyでの検討は見つけられませんでした。
研究デザインは異なりますが、 ASUCでタクロリムス (Tac) により寛解導入した場合に免疫調節薬でなくウステキヌマブ (UST) やVDZによる維持療法の有効性の既報はあります。
本研究では、 TOFAは後発医薬品があるために、 医療経済的にも有用な選択肢になりえると考察で述べていました。 この点を考慮すると、 USTのバイオシミラーも選択肢になり得るのでしょう。

本研究施設では6-チオグアニンヌクレオチド (6-TGN) 濃度の測定が困難であったため、 平均赤血球容積 (MCV) を指標としていました。 しかし、 MCVの中央値に関する具体的な記載はありませんでした。 この集団において至適投与量のAZAが投与されていた症例がどの程度存在したかは不明と考えられます。

その解釈で問題ありません。 結腸切除のみをアウトカムとした場合、 AZA群とTOFA群では差を認めませんでした。 しがって、 AZA群で再燃した場合でも、 その時点でadvanced therapyを導入すれば、 一定数の症例で結腸切除を回避できる可能性があると考えられます。

ご指摘のとおり、 AZAの投与歴は両群で約20%でした。 ただし、 AZA既投与歴は 「4週間以内の使用」 とされており、 どのような状況で使用され、 なぜ短期で中止に至ったかは不明です。
短期使用であることから、 維持効果が不十分と判断されたとは限らず、 患者希望や副作用で早期に中止の症例があった可能性が推察されます。 なお本研究では、 傾向スコアによる調整は行われていますが、 投与歴は除外されていませんでした。

両薬剤ともに、 薬剤誘発性の有害事象により治療が中止された症例は認められなかったと記載されています。
<出典>
1) Gut. 2025 Jan 17;74(2):197-205.
北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター (IBDセンター)

潰瘍性大腸炎・クローン病を中心とした炎症性腸疾患に対し、 消化器内科を軸に多職種が連携し、 先進的な診療と研究を推進する拠点である。 専門医が高度な治療選択を提供し、 IBD診療の質向上を目指して活動している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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