海外ジャーナルクラブ
10ヶ月前

Ruizらは、 関節リウマチ (RA) 患者におけるTNF阻害薬の使用が、 大腸癌、 肺癌、 前立腺癌の診断後3年間の生存率に及ぼす影響をコホート研究で検討した。 その結果、 TNF阻害薬の使用は生存率低下と関連しないことが明らかとなった。 本研究はLancet Rheumatol 誌にて発表された。
免疫と癌のgap領域の研究です。 今回検討した3つ以外での癌腫 (乳癌や子宮癌など) での検討結果が期待されます。
腫瘍壊死因子 (TNF) 阻害薬は、 関節リウマチ患者の免疫調整に有効であるが、 腫瘍免疫を抑制する可能性もある。
本研究では、 大腸癌、 肺癌、 前立腺癌と診断された関節リウマチ患者への癌診断後3年間のTNF阻害薬の使用が、 生存に与える影響を明らかにすることを目的とした。
本研究は、 Surveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) Medicare-linkedデータセットを用いたコホート研究である。
対象は、 2008年1月1日~19年12月31日に、 大腸癌、 肺癌、 前立腺癌で、 限局性または局所性の早期癌と診断された66歳以上の関節リウマチ患者であった。
癌診断後1年間の薬剤使用状況に基づき、 患者をTNF阻害薬使用群*、 従来型DMARDs使用群、 DMARDs非使用群に分類し、 それぞれの診断後3年間の生存率を解析した。
主要評価項目は5年全生存と癌特異的生存であった。 傾向スコアを用いたCox回帰分析により、 癌診断後1年目、 2年目、 3年目時点でのランドマーク解析を実施した。
早期大腸癌 (514例)、 肺癌 (864例)、 前立腺癌 (603例) と診断された患者の3つのコホートを同定した。 TNF阻害薬使用群*に分類された患者数は以下のとおりであった。
癌診断後1年目、 2年目、 3年目のランドマークポイントで、 いずれの癌でも全生存、 癌特異的生存に有意な有害関連性は観察されなかった。
3コホートにおいて、 1年目時点のTNF阻害薬使用群 vs 従来型DMARDs使用群の全生存率のハザード比は以下の通りであった。
関節リウマチ患者において、 各癌の診断後3年間のTNF阻害薬の使用は、 使用しなかった患者群*と比較して、 生存率低下と関連していなかった。
3つの癌に関する多変量Cox比例ハザードモデルでは、 最初の1年間のグルココルチコイドの投与は、 全生存率および癌特異的生存率の有意な低下と関連していた。
著者らは 「大腸癌、 肺癌、 前立腺癌の診断後3年間にTNF阻害薬で治療しても、 生存率が低下することはなかった。 ただし、 今回の知見は、 他の集団や癌種へ一般化できない可能性がある」 としている。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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