【Lancet Rheumatol】悪性腫瘍合併のRA患者へのTNF阻害薬、 生存率への影響は?
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海外ジャーナルクラブ

10ヶ月前

【Lancet Rheumatol】悪性腫瘍合併のRA患者へのTNF阻害薬、 生存率への影響は?

【Lancet Rheumatol】悪性腫瘍合併のRA患者へのTNF阻害薬、 生存率への影響は?
Ruizらは、 関節リウマチ (RA) 患者におけるTNF阻害薬の使用が、 大腸癌、 肺癌、 前立腺癌の診断後3年間の生存率に及ぼす影響をコホート研究で検討した。 その結果、 TNF阻害薬の使用は生存率低下と関連しないことが明らかとなった。 本研究はLancet Rheumatol 誌にて発表された。

📘原著論文

Survival in patients with rheumatoid arthritis and recently diagnosed early-stage colorectal, lung, or prostate cancer receiving tumour necrosis factor inhibitors: a retrospective cohort study. Lancet Rheumatol. 2025 Feb 3:S2665-9913(24)00379-5. Epub ahead of print. PMID: 39914441.

👨‍⚕️HOKUTO監修医コメント

免疫と癌のgap領域の研究です。 今回検討した3つ以外での癌腫 (乳癌や子宮癌など) での検討結果が期待されます。


目的

TNF阻害薬は癌患者の生存に影響するか

腫瘍壊死因子 (TNF) 阻害薬は、 関節リウマチ患者の免疫調整に有効であるが、 腫瘍免疫を抑制する可能性もある。

本研究では、 大腸癌、 肺癌、 前立腺癌と診断された関節リウマチ患者への癌診断後3年間のTNF阻害薬の使用が、 生存に与える影響を明らかにすることを目的とした。

研究デザイン

対象は大腸癌、 肺癌、 前立腺癌と診断された関節リウマチ患者

本研究は、 Surveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) Medicare-linkedデータセットを用いたコホート研究である。

対象は、 2008年1月1日~19年12月31日に、 大腸癌、 肺癌、 前立腺癌で、 限局性または局所性の早期癌と診断された66歳以上の関節リウマチ患者であった。

癌診断後1年間の薬剤使用状況に基づき、 患者をTNF阻害薬使用群*、 従来型DMARDs使用群、 DMARDs非使用群に分類し、 それぞれの診断後3年間の生存率を解析した。

*TNF阻害薬単独、 またはTNF阻害薬とDMARDsを併用
DMARDs : disease-modifying anti rheumatic drugs

主要評価項目は5年全生存と癌特異的生存

主要評価項目は5年全生存と癌特異的生存であった。 傾向スコアを用いたCox回帰分析により、 癌診断後1年目、 2年目、 3年目時点でのランドマーク解析を実施した。

結果

3つのコホートを同定

早期大腸癌 (514例)、 肺癌 (864例)、 前立腺癌 (603例) と診断された患者の3つのコホートを同定した。 TNF阻害薬使用群*に分類された患者数は以下のとおりであった。

*癌診断後1年間のいずれかの時点でTNF阻害薬を投与された患者群。 従来型DMARDs併用の有無は問わない。
  • 大腸癌  : 80例 (16%)
  • 肺癌   : 102例 (12%)
  • 前立腺癌 : 120例 (20%)

癌診断後1年目、 2年目、 3年目のランドマークポイントで、 いずれの癌でも全生存、 癌特異的生存に有意な有害関連性は観察されなかった。

TNF阻害薬使用は生存率低下と関連せず

3コホートにおいて、 1年目時点のTNF阻害薬使用群 vs 従来型DMARDs使用群の全生存率のハザード比は以下の通りであった。

  • 大腸癌  : HR 0.72 (95%CI 0.43-1.21)
  • 肺癌   : HR 0.70 (95%CI 0.49-1.00)
  • 前立腺癌 : HR 0.80 (95%CI 0.44-1.44)

関節リウマチ患者において、 各癌の診断後3年間のTNF阻害薬の使用は、 使用しなかった患者群*と比較して、 生存率低下と関連していなかった。

*従来型DMARDs使用群、 DMARDs非使用群

3つの癌に関する多変量Cox比例ハザードモデルでは、 最初の1年間のグルココルチコイドの投与は、 全生存率および癌特異的生存率の有意な低下と関連していた。

結論

本知見は、 他集団・癌種へ一般化できない可能性あり

著者らは 「大腸癌、 肺癌、 前立腺癌の診断後3年間にTNF阻害薬で治療しても、 生存率が低下することはなかった。 ただし、 今回の知見は、 他の集団や癌種へ一般化できない可能性がある」 としている。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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