Hanらは, 10箱年以上の喫煙者を対象に, 吸入気管支拡張薬2剤併用 (インダカテロール+グリコピロレート) の有効性を検討する無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間試験を実施 (RETHINC試験) . その結果, 吸入気管支拡張薬の2剤併用は, 肺機能が保たれている症候性タバコ曝露者の呼吸器症状を改善させなかった. 本研究は, NEJM誌において発表された.
📘原著論文
Han MK, et al, Bronchodilators in Tobacco-Exposed Persons with Symptoms and Preserved Lung Function. N Engl J Med. 2022 Sep 4. doi: 10.1056/NEJMoa2204752.PMID: 36066078
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
本研究において 「吸入気管支拡張薬2剤併用は有意な効果がない」 のは間違いなさそうです. その一方で, プラセボ群の約6割に臨床効果がみられていることから, そもそも喫煙による呼吸器症状というのは経過で変化しやすい症状であることが言えると思います.
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背景
喫煙歴がある人の多くは, スパイロメトリーで評価した気流閉塞がないにもかかわらず, 臨床的に重大な呼吸器症状を有している. 彼らはしばしば慢性閉塞性肺疾患 (COPD) の治療薬が処方されるが, この治療法を支持するエビデンスは不足している.
研究デザイン
- 喫煙歴が10箱年以上あり, 🔢COPD Assessment Testのスコアが10点以上, スパイロメーターで肺機能が保たれている人 (FEV₁とFVCの比が0.70以上) の患者を以下の群にランダムに割り付け.
- 吸入気管支拡張薬2剤併用群:227名
(インダカテロール:27.5μg+グリコピロレート:15.6μg)
- プラセボ群:244名
- 各群ともに1日2回, 12週間投与.
- 主要評価項目:治療失敗 (長時間作用型吸入気管支拡張薬, グルココルチコイド, または抗生物質による治療を受けた下気道症状の増加と定義) がなく, 12 週間後にSGRQスコアを少なくとも 4 ポイント低下させること.
研究結果
有効性評価
- SGRQスコアの4ポイント低下
- 併用群:56.4% (227名中128名)
- プラセボ群:59.0% (244名中144名)
(差 -2.6%ポイント, 95%CI -11.6-6.3, aOR 0.91, 95%CI 0.60-1.37, P=0.65)
- 予測FEV₁ 率の平均変化
- 併用群: 2.48 (95%CI 1.49-3.47)
- プラセボ群:-0.09 (95% CI -1.06-0.89)
- 吸気容量の平均変化
- 併用群:0.12L (95%CI 0.07-0.18)
- プラセボ群:0.02L (95%CI -0.03-0.08 )
安全性評価
- 重篤な有害事象は併用群4件, プラセボ群11件において発生したが, 治療またはプラセボと関連する可能性があると判断されたものはなかった.
結論
吸入気管支拡張薬の二剤併用による治療は, スパイロメトリーで評価した肺機能が保たれている症候性のタバコ曝露者の呼吸器症状を減少させなかった.