甲状腺機能低下症の既往、65歳以上の認知症診断リスク上昇と関連 (Neurology)
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海外ジャーナルクラブ

2年前

甲状腺機能低下症の既往、65歳以上の認知症診断リスク上昇と関連 (Neurology)

 甲状腺機能低下症の既往、65歳以上の認知症診断リスク上昇と関連 (Neurology)
Wielandらは, 台湾の国民健康保険研究データベースを基に, 甲状腺疾患による認知症リスクの関係を検討する人口ベース症例対照研究を実施. その結果, 65歳以上の患者において, 甲状腺機能低下症の既往が認知症診断リスクの増加と関連していることが明らかとなった. 本研究は, Neurology誌において発表された.

📘原著論文

Wieland DR, et al, Thyroid Disorders and Dementia Risk: A Nationwide Population-Based Case-Control Study. Neurology. 2022 Jul 6;10.1212/WNL.0000000000200740. PMID: 35794019

👨‍⚕️ HOKUTO監修医コメント

「甲状腺機能低下は認知症発症のリスクになる」という第一段階の研究です. 早期からの適切な甲状腺ホルモン補充が認知症発症を抑制できるのかどうか, ここまで次回作で解明してもらいたいです. 次回作が期待される研究は, 映画やドラマと同じで"良い研究"です.

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研究の背景

認知症は, 2020年には全世界で5,000万人が発症すると推定されており, 米国では人口の12%が生涯に甲状腺疾患を発症する可能性があると言われている. これまでアジア人における甲状腺疾患と認知症の相関を調査した研究は限られている.

研究デザイン

台湾の国民健康保険研究データベースを利用した全国規模の人口ベース症例対照研究.

対象と方法

対象は認知症や神経変性疾患の既往がなく, 新たに認知症と診断された成人7,843人. 認知症と診断されておらず, 年齢と性別をマッチさせた7,843名を対照群とした. これらをロジスティック回帰モデルで解析し, 性別, 年齢, 高血圧, 糖尿病, 冠動脈疾患, うつ病, 高脂血症, アルコール依存症候群, 耳鳴り, 難聴, 放射性ヨード治療歴で調整された.

研究結果

  • 合計15,686人の患者が研究に参加. 症例群, 対照群ともにやや女性が多かった (4,066名) .
  • 認知症患者の平均年齢は74.9歳, 非認知症患者の平均年齢は74.5歳であった.
  • 65歳以上の患者では, 甲状腺機能低下症の既往は認知症診断リスクの増加と関連していたが (aOR 1.81, 95%Cl 1.14-2.87, P=0.011) , 50歳以上65歳未満の患者にはそのような関連性は見られなかった.
  • この関連は, 甲状腺機能低下症の既往があり治療を受けている65歳以上の患者において最も顕著であった (aOR 3.17, 95%Cl 1.04-9.69, P=0.043) .

考察

本研究により, 65歳以上の人のうち, 甲状腺機能低下症の既往がある人は認知症になるリスクが81%高く, その中でも甲状腺ホルモン補充治療が必要な甲状腺疾患では認知症リスクが3倍以上高くなることがわかった. 今後, これらの潜在的な機序と関係を解明するために, きめ細やかな前向き縦断研究を実施する必要がある.

こちらの記事の監修医師
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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