海外ジャーナルクラブ
2年前
Usuiらは、 バイオバンク・ジャパンに登録された胃癌患者を対象に、 遺伝性腫瘍関連遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントとH. pylori感染の組み合わせが胃癌リスクに及ぼす影響を調査。 その結果、 9つの遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントが胃癌リスクと関連しており、 H. pylori 感染陽性の病的バリアント保持者は胃がんの累積リスクが高かった。 本研究は、 NEJM誌において発表された。
本研究はバイオバンクを用いていますが、 日本からの後ろ向き研究です。 NEJMに掲載された理由としては、 本研究において病的バリアント保持者でピロリ菌感染の両方を持つ人の胃癌の生涯リスクは45.5%に対して、 病的バリアント保持者でピロリ菌非感染者では5%未満、 病的バリアント非保持者のピロリ菌感染者では14.4%であったことから、 胃癌のリスクに対する遺伝的寄与が従来考えられていたよりも重要であることを示唆したこと、 さらにピロリ菌によって誘発されたDNA損傷が、 間違って修復されたり全く修復されなかったりした場合、 胃癌発生の主要な要因となることを示唆したことだと思います。
H. pylori感染は、 胃癌のリスク要因として知られている。 しかし、 遺伝性腫瘍関連遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントの胃癌リスクへの寄与と、 それらがH. pylori感染と組み合わされた際の胃癌リスクについては、 広く評価されていない。
27個の遺伝性腫瘍関連遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントと胃がんリスクとの関連を評価 (バイオバンク・ジャパン)
病的バリアントと H. pylori 感染状態の組合せが胃がんリスクに及ぼす影響を評価 (愛知県がんセンター病院疫学研究;HERPACC) )
9つの遺伝子 (APC, ATM, BRCA1, BRCA2, CDH1, MLH1, MSH2, MSH6, PALB2) の生殖細胞系列病的バリアントにおいて胃癌リスクとの関連が見られた。
HERPACCサンプルにおいて、 胃がんリスクに関してH. pylori感染と相同組換え遺伝子の病的バリアントとのあいだに交互作用がみとめられた。
85歳の時点で、 H. pylori感染陽性と病的バリアントを持つ人は、 H. pylori感染陽性で病的バリアントを持たない者よりも胃癌の累積リスクが高かった。
H. pylori感染は,相同組換え遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントに関連する胃癌のリスクに影響を与える。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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