西日本がん研究機構(WJOG)
2ヶ月前
WJOGのバスケット委員会は、 これまでの臓器別委員会の枠組みを超えて治療開発が必要である希少がんや、 遺伝子変異などのバイオマーカー特異的ながんを対象とした研究を行うグループです。 バスケット委員会の概要と取り組みなどを紹介します。
2023年よりバスケット委員会委員長を務めております近畿大学医学部内科学腫瘍内科の林 秀敏 (はやし ひでとし) と申します。
バスケット委員会は、 これまでの臓器別委員会の枠組みを超えて治療開発が必要である希少がんや、 遺伝子変異などのバイオマーカー特異的ながんを対象とした研究を行うグループです。
WJOGではこれまで肺がんや消化器がん、 乳がんにおいて新しい治療方法の開発などの研究を行ってまいりましたが、 近年では分子標的治療薬の対象となりうる特定の遺伝子異常が、 がんの種類に関わらず起こり得ることが知られています。 がんの種類でなく遺伝子異常などのがんの特徴に注目した治療戦略の必要性が高まっており、 実際にNTRK融合遺伝子陽性固形癌に対するNTRK阻害薬など、 がん種を問わない薬剤の保険適用も成し遂げられています。
そうした、 がん種を超えて特定の患者さんを対象とする治療薬を開発する臨床試験は 「バスケット試験」 と称されますが、 そのバスケット試験や希少がんを中心とした臨床研究を円滑に遂行するグループがバスケット委員会です。
バスケット委員会では、 これまでALK融合遺伝子陽性固形癌、 EGFR増幅固形癌、 HER2遺伝子変異陽性固形癌、 そして希少がんである原発不明がんを対象に、 3つの医師主導治験と1つの先進医療B、 合計4つの研究を推進してまいりました。 皆様の多大なるご協力のおかげをもちまして、 これらの研究は全て患者さんの登録を完遂し、 その成果の一部は、 世界的に権威のあるASCO (米国臨床腫瘍学会) およびESMO (欧州臨床腫瘍学会) にて発表するに至り、 これまで開発が困難とされてきた希少がん等の患者さんへ、 より良い治療を届けるという我々の活動が着実に実を結びつつあります。
現在、 これらの成果を礎に、 さらに新たな研究を立ち上げるべく検討を進めているところです。
がん治療の進歩には、 既存の仕組みを超えた発想も必要です。 バスケット委員会ではリモート治験やマスタープロトコール、 固形癌に対する簡便な遺伝子変異同定プログラム開発など、 様々な新しい試みにも挑戦しております。
また、 若手研究者の医師主導研究を支援するための専門チームを舛石副委員長 (愛知県がんセンター) にて立ち上げ、 加えて新たな治療開発を行う製薬企業との意見交換を高野副委員長 (がん研有明病院) を中心に進めております。 さらには新たに遺伝子変異別のチームを選定し、 活発な議論を行ってまいります。
加えてECOG-ACRINなど海外臨床研究グループとの共同や、 国立がん研究センターを中心とした希少がんに対する取り組みであるMASTER KEYプロジェクトとの連携の模索など様々な活動を検討しております。
毎月行われているアドバイザー会議 (第3月曜日19時半より約1時間) では、 引き続き様々なバックグラウンドを有する医師がこれらの新たな研究に対して議論を重ねております。
バスケット委員会の取り組みに興味のある方、 バスケット試験に関わりたいという皆様は、 ぜひ我々の活動にご参加ください!
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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