海外ジャーナルクラブ
2ヶ月前
Leeらは、 乳癌術後放射線療法の分割照射法について、 通常分割照射 (CF)、 中等度寡分割照射 (MHF)、 超寡分割照射 (UHF)の3つを系統的レビューとメタ解析で検討した。 その結果、 MHFはCFと比較して、 治療効果が同等であり、かつ安全性・美容・QOLにおいて改善を認めた。 またUHFについては、 MHFやCFと比較した試験は少ないものの、 短期間の追跡では有効性と安全性は3者で同程度であった。 本研究は、 BMJ誌にて発表された。
副反応を主要評価項目としたメタ解析です。 今後、 同様の解析が増えていくと予想されます。
乳癌術後放射線療法ではさまざまな分割方式が試行されているが、 最適なものは依然として不明確である。
特に副作用、 美容、 QOL、 再発リスク、 生存転帰についての情報は限られている。 本研究ではこれらに焦点を当てて評価が行われた。
2023年10月23日までに発表された、 乳癌術後放射線療法 (CF、 MHF、 UHF) の有効性・安全性に関する文献59本に含まれる臨床試験35件 (患者数 : 2万237例) を対象に、 2人の研究者が独立して研究をスクリーニングし、 データを抽出した。
バイアスリスクとエビデンスの質、 確実性は、 コクランバイアスリスクツールおよびGrading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluations (GRADE) アプローチにより評価した。
メタ解析では、 リスク比 (RR)、 HR、 95%CIをランダム効果モデルを用いて算出した。 異質性についてはコクランのQ検定およびI²統計量を用いて分析した。 また、 利用可能なすべてのエビデンスを統合するために、 frequentistランダム効果モデルを用いてネットワークメタ解析を行った。
主要評価項目はGrade 2以上の急性放射線皮膚炎および晩期放射線障害、 副次評価項目は美容、 QOL、 局所再発、 無病生存期間 (DFS)、 全生存期間 (OS) とした。
MHFとCFを比較した場合のGrade 2以上の急性放射線皮膚炎のRRは、 乳房温存術の患者のみを対象とした8試験で0.54 (95%CI 0.49-0.61、 p<0.001)、 乳房切除術の患者のみを対象とした10試験では0.68 (同0.49-0.93、 p=0.02) であり、 MHFで副作用リスクが低減した。
乳房温存療法と乳房切除術を合わせてUHFとMHFを比較した場合のGrade 2以上の急性放射線皮膚炎のRRは0.85 (95%CI 0.47-1.55、 P=0.60) であった。
色素沈着とGrade 2以上の乳房縮小は、 CF後よりもMHF後において頻度が低く、 乳房温存術のみの試験のRRは0.77 (95%CI 0.62-0.95、 p=0.02)、 乳房切除術のみのRRは0.92 (同0.85-0.99、 p=0.03) であった。
ただし、 乳房温存術のみの試験では、 色素沈着 (RR 0.79、 同0.60-1.03、 p=0.08) および乳房縮小 (0.94、 同0.83-1.07、 p=0.35) に関する差は統計的に有意ではなかった。
MHFはCFと比較して美容とQOLの改善と関連していた。 一方で、 UHFとの比較では関連はみられなかった。
再発および生存率に関してはUHF、 MHF、 CF間で差は認められなかった。
著者らは 「MHFは、 治療効果を維持しつつ、 安全性プロファイルと美容、 QOLにおいて改善を示した。 UHFと他の分割方式を比較した無作為化比較試験は少ないが、 短期の追跡調査では、 その安全性と腫瘍学的効果は他の分割方式と同等であると思われる。 治療時間の短縮、 患者の利便性の向上、 潜在的な費用対効果などの利点を考慮すると、 臨床においては、 CFよりもMHFおよびUHFが望ましい選択肢として考慮されるべきであるが、 これらの知見を確固たるものにするにはさらなる研究が必要である」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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