寄稿ライター
10ヶ月前
前回までのシリーズで、 長期投資をすれば負けナシのインデックスファンド 「S&P500」 を紹介しました。 ただ、 「暴落が怖くて投資に踏み出せない」 という先生もいるでしょう。 連載「医師による医師のための財テク術」の7回目では、 「株価の暴落は敵?味方?」をテーマにお話します。
株価チャートは山あり谷ありで、 上がり続ける相場も、 下がり続ける相場もありません。 短期、 中期、 長期それぞれで理論的な景気循環があり、 中央銀行による経済対策などが加わり、 複雑なチャートが形成されています。
歴史を振り返ると 「暴落」 と言われる状況はいくつもありました。
1929年 「世界恐慌」 「ブラックサーズデー」
1971年 金ドル交換停止 「ニクソンショック」
1987年 ブラックマンデー
1990年 日本バブル崩壊
1997年 アジア通貨危機
2001年 ITバブル崩壊
2008年 リーマンショック
2020年 コロナショック
経済学・金融工学が発展した現代でさえも、 こうした大暴落を正確に回避することは困難で、 「暴落は必然的に起こりうる」 ことを前提に投資を考えるべきでしょう。
歴史上最悪の暴落として世界恐慌を振り返りましょう。 1929年9月に大暴落が起き、 暴落前の株価に回復したのは25年後の1954年11月でした。
90%以上値下がりした銘柄も多く、 投資家の多くは 「二度と株には手を出すまい」 と誓ったことでしょう。 しかし、 長期投資家にとってこの25年間の景色は全然違います。
確かに株価は大暴落しましたが、 配当金がゼロになったわけではありません。 配当金を愚直に再投資に回すと、 約15年で元本を取り戻し、 株価が戻る頃には4.4倍のトータルリターン (年平均で6%超) を得ることができました。
恐慌時には減配 (配当金を下げること) をした企業も多かったですが、 それ以上に株価が下がることで、 結果的に高い利回りで株式を買い増すことができました。 これにより、 株価の回復局面で一気にリターンを押し上げることができたのです。
仮に大恐慌が起きず、 株価暴落や減配がされなかったらどうなっていたのでしょう。 シミュレーションでは緩やかに資産は増えますが、 25年間のトータルリターンは2.72倍にしかなりません。 つまり、 長期投資は暴落を味方につけ、 リターンを押し上げることができるといえます。
投資方法として、 積立NISAのように、 株価の上下に関わらず、 一定金額を購入するのをドルコスト平均法といいます。 投資時期による 「運」 のリスクを低減でき、 有用な投資手法といえます。
上のグラフは、 株式と債券に50%ずつ分散投資をした場合のシミュレーションです。 株式100%ではないので単純に比較はできませんが、 ドルコスト平均法を用いれば、 わずか3年9か月で元本を取り戻せていることが分かります。
ドルコスト平均法は安値の時期にも株を買い増すことができ、 その後の株価上昇局面で一気に取り戻すことができるのです。
株価が暴落する中で買い続けることは実際には勇気がいりますが、 「大恐慌でも4年くらいで取り戻せた」 ことを知っていれば、 暴落に対する恐怖心もだいぶ和らぐと思います。
いかがでしたでしょうか。 今回のTake Home Messageは
となります。 次回は、 そんな暴落を予見して投資できないかを考えます。
日本経済新聞 : 「オンリー・イエスタディ」、 米大恐慌の時代 長期分散投資の真実 (2) (2010/03/29)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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