メイヨークリニック感染症科 松尾貴公
4ヶ月前
メイヨークリニック感染症科 松尾貴公先生による連載です。 今回は 「アンガーマネジメントが必要な3つの理由」 を解説します。
日常生活の中でイラッとしたり、 ムカッとしたりすることが、 どれくらいあるでしょうか?おそらく多くの人が、 程度の差はあれ怒りの感情を抱く瞬間があると思います。
この怒りの感情を医療現場でどのようにコントロールするかは、 社会人として、 そして医療従事者として非常に重要なスキルです。 そこで今回は、 アンガーマネジメントについてご紹介したいと思います。
アンガーマネジメントは、 1970年代にアメリカで生まれた、 怒りの感情を予防・制御するための心理的対処法です。
心理学者レイモンド・ノヴァコは、 「怒りは誰もが経験する感情であり、 それが過剰になる場合に問題となる」 と述べています¹⁾。 つまり、 怒りを抑え込むのではなく、 それを適切に処理し、 コントロールするスキルを身に付けることが重要です。
特に医療現場では、 さまざまな価値観や背景をもつ患者や多職種の同僚と関わる機会が多いため、 このスキルは医師として欠かせないものといえます。
怒りの感情を適切にコントロールできないと、 患者やその家族とのトラブルに発展する可能性があります。
医療従事者の怒りは、 患者からの要求やクレームに起因することが多いですが、 冷静に対応することで不要なトラブルを防ぐことができます。 また、 患者やその家族の言葉の背景にある感情を理解する力も養われ、 より良い医療の提供につながります。
怒りが原因で周囲とのコミュニケーションが阻害されると、 情報共有が遅れたり、 重要な報告が見過ごされることがあります。 その結果、 患者ケアの質が低下し、 最悪の場合は医療ミスに発展することもあります。
怒りの感情をコントロールすることは、 医療安全の観点からも非常に重要です。
職場の雰囲気は、 チームの生産性に大きく影響を与えます。 もし、 指導医や同僚が常に怒りを抱えた状態であれば、 仕事への意欲が下がるだけでなく、 怒りが職場全体に広がる可能性もあります。
一方で、 自分が冷静に感情をコントロールできるようになれば、 周囲の雰囲気も良くなり、 結果的にチーム全体のパフォーマンス向上につながります。
アンガーマネジメントは、 医療現場だけでなく私生活においても非常に役立つスキルです。 怒りが原因で、 友人間、 夫婦間、 親子間などさまざまな人間関係がこじれることがありますが、 アンガーマネジメントを習得することで、 自分自身のストレスと相手のストレスを同時に軽減することが可能になります。
特に、 仕事とプライベートの間で怒りを持ち込んでしまうケースは注意が必要です。 例えば、 朝に夫婦喧嘩をしたまま職場で気分転換できず、 イライラを患者さんやチームメンバーにぶつけてしまう、 逆に職場でのストレスを家庭に持ち帰り、 家族や子どもに当たってしまう、 など皆さんの中で心当たりがある方も少なくないと思います。 この結果、 周囲に悪影響を及ぼすだけでなく、 自分自身をさらに追い詰める結果につながります。
アンガーマネジメントを意識することで、 怒りの感情を適切に処理し、 環境や人間関係の中で冷静に対応できるようになります。
次回は、 具体的なアンガーマネジメントの実践方法についてご紹介します。
連載バックナンバー
第11回 : クレーム対応のコツ① 知っておきたい2つのギャップ
第12回 : クレーム対応のコツ② 円滑に進めるための4つのポイント
第13回 : クレーム対応のコツ③ 実践で活用できる4つのフレーズ
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本書では自分が失敗から学んできた社会人としての院内・院外で必要なマナーや、 医師としての心得、 自己成長を成し遂げていくために必要な仕事術を解説していきます。 特に若手医師の皆さんにこれらを少しでも早い段階で共有することにより、 医師としてのキャリアを成功させるためのお手伝いが少しでもできれば幸いです。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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