【1分間で学べる】アンガーマネジメント① : 必要な3つの理由
著者

メイヨークリニック感染症科 松尾貴公

4ヶ月前

【1分間で学べる】アンガーマネジメント① : 必要な3つの理由

【1分間で学べる】アンガーマネジメント① : 必要な3つの理由
メイヨークリニック感染症科 松尾貴公先生による連載です。 今回は 「アンガーマネジメントが必要な3つの理由」 を解説します。  

アンガーマネジメントとは?

怒りのコントロールは重要なスキル

日常生活の中でイラッとしたり、 ムカッとしたりすることが、 どれくらいあるでしょうか?おそらく多くの人が、 程度の差はあれ怒りの感情を抱く瞬間があると思います。

この怒りの感情を医療現場でどのようにコントロールするかは、 社会人として、 そして医療従事者として非常に重要なスキルです。 そこで今回は、 アンガーマネジメントについてご紹介したいと思います。

怒りは 「抑え込む」 ではなく「適切に制御」

アンガーマネジメントは、 1970年代にアメリカで生まれた、 怒りの感情を予防・制御するための心理的対処法です。

心理学者レイモンド・ノヴァコは、 「怒りは誰もが経験する感情であり、 それが過剰になる場合に問題となる」 と述べています¹⁾。 つまり、 怒りを抑え込むのではなく、 それを適切に処理し、 コントロールするスキルを身に付けることが重要です。

特に医療現場では、 さまざまな価値観や背景をもつ患者や多職種の同僚と関わる機会が多いため、 このスキルは医師として欠かせないものといえます。

アンガーマネジメントが必要な理由

1. 患者とのトラブルを減らす

怒りの感情を適切にコントロールできないと、 患者やその家族とのトラブルに発展する可能性があります。

医療従事者の怒りは、 患者からの要求やクレームに起因することが多いですが、 冷静に対応することで不要なトラブルを防ぐことができます。 また、 患者やその家族の言葉の背景にある感情を理解する力も養われ、 より良い医療の提供につながります。

2. 医療ミスを防止する

怒りが原因で周囲とのコミュニケーションが阻害されると、 情報共有が遅れたり、 重要な報告が見過ごされることがあります。 その結果、 患者ケアの質が低下し、 最悪の場合は医療ミスに発展することもあります。

怒りの感情をコントロールすることは、 医療安全の観点からも非常に重要です。

3. チームの生産性を向上させる

職場の雰囲気は、 チームの生産性に大きく影響を与えます。 もし、 指導医や同僚が常に怒りを抱えた状態であれば、 仕事への意欲が下がるだけでなく、 怒りが職場全体に広がる可能性もあります。

一方で、 自分が冷静に感情をコントロールできるようになれば、 周囲の雰囲気も良くなり、 結果的にチーム全体のパフォーマンス向上につながります。

アンガーマネジメントの有用性

アンガーマネジメントは、 医療現場だけでなく私生活においても非常に役立つスキルです。 怒りが原因で、 友人間、 夫婦間、 親子間などさまざまな人間関係がこじれることがありますが、 アンガーマネジメントを習得することで、 自分自身のストレスと相手のストレスを同時に軽減することが可能になります。

特に、 仕事とプライベートの間で怒りを持ち込んでしまうケースは注意が必要です。 例えば、 朝に夫婦喧嘩をしたまま職場で気分転換できず、 イライラを患者さんやチームメンバーにぶつけてしまう、 逆に職場でのストレスを家庭に持ち帰り、 家族や子どもに当たってしまう、 など皆さんの中で心当たりがある方も少なくないと思います。 この結果、 周囲に悪影響を及ぼすだけでなく、 自分自身をさらに追い詰める結果につながります。

アンガーマネジメントを意識することで、 怒りの感情を適切に処理し、 環境や人間関係の中で冷静に対応できるようになります。 
次回は、 具体的なアンガーマネジメントの実践方法についてご紹介します。
<出典>
1) Novaco, RW : Anger control: The development and evaluation of an experimental treatment. Lexington, 1975.

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第4回 : 習慣化する7つのコツ

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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