Liang C らは, 不妊や反復流産, 死産が 「脳卒中」 の発症リスクに与える影響について8件の前向きコホート研究を基に検討した. その結果, 不妊や反復流産, 死産の経験は非致命的, 致命的脳卒中のリスク上昇と関係していることが明らかとなった. 本研究は, BMJ誌において発表された.
研究デザイン
- InterLACEコンソーシアムに参加する7カ国の前向きコホート研究8件を解析した.
- 不妊, 流産, 死産に関するデータ, 少なくとも1つのアウトカムイベント (非致命的または致命的脳卒中) , 共変量に関する情報を有する32歳~73歳の女性61万8,851名が対象となった.
- 非致死的脳卒中と致死的脳卒中のデータを有する者:27万5,863名
- 非致死的脳卒中のみのデータを有する者:5万4,716名
- 致死的脳卒中のみのデータを有する者:28万8, 272名
- 主要アウトカムは非致命的脳卒中, 致命的脳卒中とした
(非致命的脳卒中は自己報告式のアンケート, リンクされた病院データ, または全国患者登録により同定した. 致命的脳卒中は死亡登録データにより特定)
研究結果
- 追跡期間中央値は、 非致命的脳卒中:13.0年 (四分位範囲 12.0~14.0)、 致命的脳卒中:9.4年 (四分位範囲 7.6~13.0)であった.
- 非致命的脳卒中を初めて経験した女性は9,265人 (2.8%) , 致命的脳卒中を経験した女性は4,003人 (0.7%)であった.
- 不妊症は非致命的脳卒中のリスク増加と関連していた(HR 1.14, 95%CI 1.08~1.20).
- 3回以上の反復流産は, 非致命的 (HR 1.35, 95%CI 1.27~1.44) および致命的脳卒中 (HR 1.82, 95%CI 1.58~2.10) のリスクと関連していた.
- 死産を経験した女性は, 非致命的脳卒中のリスクが31%高く (HR 1.31, 95%CI 1.10〜1.57) , 死産を繰り返した女性は, 致命的脳卒中のリスクが26%高かった (HR 1.26, 95%CI 1.15〜1.39) .
- 不妊症や再発死産に関連する脳卒中 (非致命的または致命的) のリスク増加は, 主に単一の脳卒中サブタイプ (非致命的脳梗塞および致命的脳出血) によってもたらされ, 再発流産に伴う脳卒中 (非致命的または致命的) のリスク上昇は, 両方のサブタイプによってもたらされていることが示された.
結論
反復流産や死産の経歴に伴う脳卒中のリスクはサブタイプによって差があり, 女性特有の脳卒中リスク因子と考えることができる.
原著
Liang Chen, et al, Infertility, recurrent pregnancy loss, and risk of stroke: pooled analysis of individual patient data of 618 851 women. BMJ. 2022 Jun 22;377:e070603.PMID: 35732311
👨⚕️ HOKUTO監修医コメント
本研究結果の広い一般化可能性がやはりBMJだと思います. 女性の脳卒中診療においては、 必ず流産や死産の既往症確認が必要ですね.