【解説】オリゴ転移時代の食道扁平上皮癌診療 : 東アジア各国の最新動向
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HOKUTO編集部

7日前

【解説】オリゴ転移時代の食道扁平上皮癌診療 : 東アジア各国の最新動向

【解説】オリゴ転移時代の食道扁平上皮癌診療 : 東アジア各国の最新動向
2026年5月17日に、 日本食道学会主催の 「3rd East Asia Esophageal Cancer Forum」 が開催されました。 本稿では山本駿先生 (国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科) に、Forumで議論された食道扁平上皮癌診療の最新動向について、現地の印象とともにご解説いただきました。 
※記事内写真は全て山本駿氏提供

はじめに

食道がんの約90%を占める食道扁平上皮癌では、 手術や薬物療法、 放射線療法を組み合わせた集学的治療が行われている。 一方、 切除不能な進行・再発例は根治が難しく、 長らく緩和的治療としての薬物療法が中心であった。

しかし近年、 切除不能な進行・再発例であっても根治が望める対象として"オリゴ転移"の概念が提唱されている。 抗PD-1抗体をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬の開発も進み、 実臨床に資するオリゴ転移のエビデンス創出には、 食道扁平上皮癌の発生頻度が高い東アジア地域の医療環境を踏まえた検討が求められている。

今回、 3rd East Asia Esophageal Cancer Forumが築地で開催され、 "Optimizing the Management of Oligometastatic Disease With Immune Checkpoint Inhibitors"と題して、 中国や韓国、 台湾の研究者とディスカッションが行われた。 その内容を、 写真や私見とともに報告する。

▼Forumのプログラム
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参加セッションの印象

Session 1 : Standard management of ESCC in Asian patientsでは、 食道扁平上皮癌に関する標準治療について、 局所病期と進行病期に分けて情報共有とディスカッションが行われた。

東アジア各国における標準治療

局所病期に対する治療戦略

局所病期については、 cStageごとに各国の治療戦略が示された。

cStage I (cT1bN0M0) においては、 各国で手術を基本とした治療戦略であった。 治療オプションとして化学放射線療法や、 内視鏡的切除(±化学放射線療法)が選択されていた。

cStage II/III (non T4) においては、 日本ではJCOG1109試験¹⁾やJCOG1409試験²⁾の結果から、 術前DCF療法と低侵襲食道切除術を軸とした治療戦略である。 一方、 韓国や台湾ではCROSS試験³⁾やCheckMate 577試験⁴⁾の結果から、 術前化学放射線療法と手術、 術後ニボルマブ療法 (non-pCRのみ) を軸とした治療戦略を採用していた。

なお中国では、 術前治療として化学放射線療法のみならず、 ESCORT-NEO試験⁵⁾のように免疫チェックポイント阻害薬を含む術前化学免疫療法が実臨床では行われているとのことだった。

本領域は各国の術前・術後治療の多様性や術式の違いが明瞭になることから、 毎回活発なディスカッションが行われている。 
本セッションでは司会を担当したが、 現在は周術期治療であっても国際共同研究が当たり前になっていることを踏まえると、 この領域のハーモナイズも今後希求されるであろうと考えながら司会を務めていた。

進行・再発病期に対する薬物療法

進行病期については、 治療次数ごとに治療戦略が示された。

1次治療においてはCheckMate 648試験⁶⁾やKEYNOTE-590試験⁷⁾、 RATIONALE-306試験⁸⁾などの結果から、 2剤併用療法と抗PD-1抗体を軸とする治療戦略が汎用されていた。

なお、 日本や韓国、 台湾ではフッ化ピリミジン系とプラチナ系を軸とする2剤併用療法が頻用されているが、 中国では伝統的にタキサン系とプラチナ系を軸とする2剤併用療法が頻用されている。 このような背景もあり、 近年のLEAP-014試験⁹⁾等の国際共同研究ではタキサン系とプラチナ系の併用も選択肢とされている。

2次治療以降では、 タキサン系やイリノテカン、 遺伝子パネル検査に基づく治療などが選択されており、 有効な治療選択肢が限られている食道扁平上皮癌の薬物療法の難しさが垣間見えた。

次のセッションへのつなぎとして、 切除不能な進行・再発病期に対するコンバージョン治療の可能性の質問を考えていたが、 予想以上にディスカッションが盛り上がり時間超過したため、 やむなく質問を断念した。 司会の難しさを痛感したセッションでもあった。
▼セッション中の壇上
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オリゴ転移をめぐる国際共同研究

標準治療のセッションの後は、 食道扁平上皮癌のオリゴ転移に関する情報共有とディスカッションのセッションが行われた。

OMESQプロジェクトの概要

最初に、 食道扁平上皮癌のオリゴ転移に対する包括的なプロジェクトであるOligometastatic esophageal squamous cell carcinoma (OMESQ) の説明が行われた。 本プロジェクトは5つの段階に分けられてデザインされている。 以下に詳細を示す。

OMESQ-1 : 文献レビューによる食道扁平上皮癌のオリゴ転移に関する定義を策定

OMESQ-2 : MDTカンファレンスにおける具体的な症例をディスカッション

OMESQ-3 : 5個以下の遠隔転移例の後ろ向き研究を実施

OMESQ-4 : OMESQ-3までの知見を踏まえた上で、 国際的なコンセンサスを形成

OMESQ-5 : オリゴ転移に対する前向き研究を実施

OMESQ-3で示された臨床データ

OMESQ-3の一部データは、 既に国際学会で報告されている。 特に日本国内の多施設で実施されたOMESQ-3に関しては、 6年間で279例の5個以下の遠隔転移例が集積され、 これらの対象に全身薬物治療に局所治療を加えることで良好な無増悪生存期間 (PFS) や全生存期間 (OS) が報告された。

さらに、 患者背景を統計的に合わせたプロペンシティスコアマッチ後の解析でも、 全身薬物療法に局所療法を追加した群は、 全身薬物療法単独群と比較して、 PFS(HR 0.42、 95%CI : 0.21-0.83)やOS(HR 0.39、 95%CI : 0.16-0.90)が良好な結果であった。

OMESQ-5に向けた課題と展望

上記のデータをもとに、 OMESQ-5を見据えた研究に関するディスカッションがなされた。

東アジアの各国では、 免疫チェックポイント阻害薬を含む化学療法の保険承認状況が異なっている。 そのため、 局所治療に関する詳細の規定やクオリティコントロールも求められる。

今後は上記の課題を克服した上で、 本会を起点とした国際共同研究の実施が期待される。
▼集合写真
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おわりに

日本食道学会では、 2021年から国際共同研究を見据えて、 東アジアのオピニオンリーダーの研究者と幅広いディスカッションを続けてきた。 当初はコロナウイルスのパンデミックもあり、 web開催がメインであったが、 この3年は国内で現地開催しており、 より東アジア各国の研究者と心理的にも近づけている気がしている。

一部の学会では、 このような国際交流の機会を積極的に設けている。 ぜひHOKUTOユーザーの先生方も、 時間を見つけて飛び込んでいただきたい。

<出典>

1) Lancet. 2024; 404: 55-66.

2) Lancet Gastroenterol Hepatol. 2025; 10: 1104-1116.

3) N Engl J Med. 2012; 366: 2074-84.

4) N Engl J Med. 2021; 384: 1191-1203.

5) Nat Med. 2024; 30: 2549-2557.

6) N Engl J Med. 2022; 386: 449-462.

7) Lancet. 2021; 398: 759-771.

8) Lancet Oncol. 2023; 24: 483-495.

9) Future Oncol. 2024; 20: 2709-2721.


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Q. 食道扁平上皮癌の病期別標準治療は?

Q. オリゴ転移食道癌の局所治療は?

Q. 食道癌の術前DCF療法の効果は?

Q. 食道扁平上皮癌のICI一次治療は?

Q. CheckMate648試験の結果は?

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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