【亀田呼吸器2023】気胸の診かた (中島啓先生)
著者

亀田総合病院

4ヶ月前

【亀田呼吸器2023】気胸の診かた (中島啓先生)

【亀田呼吸器2023】気胸の診かた (中島啓先生)
本コンテンツは昨年11月23日に開催された 「亀田総合病院 呼吸器セミナー2023」 にて行われた講演を基に作成したものとなります。 多くの先生の臨床の参考となれば幸いです。

講演情報

講師 : 中島啓先生

亀田総合病院呼吸器内科主任部長

はじめに : 気胸診療の流れ

実臨床で気胸疑いの患者を診る機会は多い。 下記の順序で、 診断のポイント、 虚脱の程度の判断基準、 治療選択の検討基準を解説する。
  1. 定義 (原発性、 続発性)
  2. 診断 (病歴・身体所見、 画像)
  3. 重症度 (Ⅰ度、 Ⅱ度以上)
  4. 初期治療 (ドレナージ)
  5. 追加治療 (手術、 胸膜癒着術、 EWS)

1.定義

胸腔に空気が侵入した状態と定義される。 明らかな外的要因がなく発生する気胸は自然気胸といい、 自然気胸は原発性と続発性に分類される。

原発性自然気胸

肺の基礎疾患を有さず、 気腫性嚢胞 (ブラ・ブレブ) の破裂によって生じる。

リスク因子は以下の通り。

  • 喫煙
  • 気圧低下

患者の10-30%は、 1~5年フォローアップ期間に再発が認められる。 また、 再発の多くは前エピソードの1年以内に起こるとされる。

続発性自然気胸

基礎肺疾患を有する患者に起こり、 COPD、 間質性肺疾患に続発することが多い。 

再発率は50%程度とされる。 また、 全身状態不良、 胸腔ドレーン挿入後のエアリークの持続など、 治療難渋事例が多い。

2.診断

病歴、 身体所見

  • 突発的な一側性の胸痛と呼吸困難を呈し、 安静時に起こることが多い
  • 虚脱がある場合は呼吸音減弱、 打診時鼓音、 皮下気腫を認めることもある
  • 虚脱の程度により、 低酸素血症を呈する場合もある

画像診断

胸部X線読影のポイント

  • 胸膜が見えづらい場合もあるため、 肺野の血管陰影を追う癖をつけておく
  • 気胸診断では 「肺野の血管が追えないこと」 を確認する
  • 皮膚の皺はしばしば胸壁を横切るため注意が必要となる

胸部CTのポイント

  • 気胸を繰り返す患者や続発性気胸では癒着リスクがあるため、 胸部CTを考慮する
  • 原因となるブラ、 蜂巣肺などの存在診断に有用である
  • 癒着ありの場合のドレーン挿入部位の決定にも役立つが、 必須ではない

3.重症度

判断のポイント

Ⅰ度 (small) かⅡ度 (large) 以上かを考える。

  •  肺尖が鎖骨レベルより頭側にあればⅠ度気胸とする
  • ≧Ⅱ度の気胸では、 脱気や胸腔ドレナージを考慮する

気胸の肺虚脱の程度分類

国内で用いられる分類

【亀田呼吸器2023】気胸の診かた (中島啓先生)
※Ⅱ度以上の場合は胸腔ドレーン挿入を行うこと。
画像提供:中島啓先生

欧米の分類

【亀田呼吸器2023】気胸の診かた (中島啓先生)
Small or largeの2分類が主流であり、 largeの場合は脱気または胸腔ドレーン挿入を検討。
画像提供:中島啓先生

4.初期治療

治療のポイント

気胸治療における世界的な統一基準はない。 BTSの気胸ガイドライン2010のフローチャート、 およびBTSの胸膜疾患ガイドライン2023は世界的に有名であるが、 日本の実臨床ではそのまま使用することは難しいため国内の状況、 国際ガイドライン、 専門書を総合して検討する。

治療方針

喫煙者の場合は喫煙を中止させ、 酸素吸入で気胸腔の空気の吸収速度を向上させる。

気胸の状態により、 初期治療は以下の通り適応する。

気胸の状態

初期治療

Ⅰ度 (small) 

経過観察

あるいは脱気

Ⅱ度以上 (large) 

 - 続発性

 - 両側気胸

 - バイタル異常 

 - 血気胸

胸腔ドレーン挿入

胸腔ドレナージにおけるポイント

  • アスピレーションキットまたは胸腔ドレーン (12-16fr)
  • 続発性気胸かつ胸膜癒着術を想定の場合はダブルルーメン
  • ドレーン挿入後は水封 (再膨張性肺水腫のリスク低減のため) 
  • 肺膨張が不良の場合は-5~-15cmH₂Oの陰圧で吸引
  • 肺が拡張してエアリークが12時間以上止まったらチューブクランプを行い、 6~12時間後の胸部X線検査で臍虚脱を認めなければドレーン抜去
  • 48時間以上エアリークが持続する場合は呼吸器外科に相談

気胸治療の注意点

以下の病態に注意すること。

血気胸

自然気胸発生時、 胸腔内の索状癒着の断裂や異常血管の破綻によって発症する。 胸腔ドレーン挿入が適応となる。

再膨張性肺水腫

典型的には気胸発症~3日以上経過した高度虚脱例にドレナージを行い拡張することで発症する。 病態はself-limitedであり、 呼吸管理によって自然軽快する。

5.追加治療

外科治療 (胸腔鏡手術)

肺の虚脱改善に乏しく、 エアリークが5日以上持続する場合に外科治療 (胸腔鏡手術) を検討する。

手術困難な場合に検討される治療

胸膜癒着術

胸膜癒着術で使用する薬剤にはピシバニール、 テトラサイクリン系薬剤、 タルク、 自己血、 50%ブドウ糖などがある。 自然気胸で外科手術の困難な症例は高齢者の続発性気胸で、 間質性肺炎やCOPDの合併例が多いため、 副作用が少ない自己血や50%ブドウ糖の選択を推奨する。

固形シリコン製気管支充填剤 (EWS)

気管支鏡下で気管支内に充填剤を充填・閉塞し、 末梢肺からの気漏を止める。


亀田総合病院呼吸器内科からのメッセージ

呼吸器内科をもっと深く学びたい方は 「レジデントのための呼吸器診療最適解」 (医学書院) でぜひ勉強されて下さい!

亀田総合病院 呼吸器内科 初期研修医向けオンライン説明会 3月~4月の案内

亀田総合病院 呼吸器内科の紹介

呼吸器内科 後期研修医・スタッフ募集

一言 : 当科では教育および人材交流のために、 日本全国から後期研修医・スタッフ (呼吸器専門医取得後の医師) を募集しています。 ぜひ一度見学に来て下さい。

連絡先 : 主任部長 中島啓

メール : kei.7.nakashima@gmail.com

Twitter : https://twitter.com/keinakashima1

Instagram : https://www.instagram.com/kei_nakashima7

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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