亀田総合病院
12ヶ月前
本コンテンツは昨年11月23日に開催された 「亀田総合病院 呼吸器セミナー2023」 にて行われた講演を基に作成したものとなります。 多くの先生の臨床の参考となれば幸いです。
亀田総合病院呼吸器内科主任部長
実臨床で気胸疑いの患者を診る機会は多い。 下記の順序で、 診断のポイント、 虚脱の程度の判断基準、 治療選択の検討基準を解説する。
胸腔に空気が侵入した状態と定義される。 明らかな外的要因がなく発生する気胸は自然気胸といい、 自然気胸は原発性と続発性に分類される。
肺の基礎疾患を有さず、 気腫性嚢胞 (ブラ・ブレブ) の破裂によって生じる。
リスク因子は以下の通り。
患者の10-30%は、 1~5年フォローアップ期間に再発が認められる。 また、 再発の多くは前エピソードの1年以内に起こるとされる。
基礎肺疾患を有する患者に起こり、 COPD、 間質性肺疾患に続発することが多い。
再発率は50%程度とされる。 また、 全身状態不良、 胸腔ドレーン挿入後のエアリークの持続など、 治療難渋事例が多い。
胸部X線読影のポイント
胸部CTのポイント
Ⅰ度 (small) かⅡ度 (large) 以上かを考える。
国内で用いられる分類
欧米の分類
気胸治療における世界的な統一基準はない。 BTSの気胸ガイドライン2010のフローチャート、 およびBTSの胸膜疾患ガイドライン2023は世界的に有名であるが、 日本の実臨床ではそのまま使用することは難しいため国内の状況、 国際ガイドライン、 専門書を総合して検討する。
喫煙者の場合は喫煙を中止させ、 酸素吸入で気胸腔の空気の吸収速度を向上させる。
気胸の状態により、 初期治療は以下の通り適応する。
気胸の状態 | 初期治療 |
Ⅰ度 (small) | 経過観察 あるいは脱気 |
Ⅱ度以上 (large) - 続発性 - 両側気胸 - バイタル異常 - 血気胸 | 胸腔ドレーン挿入 |
以下の病態に注意すること。
血気胸
自然気胸発生時、 胸腔内の索状癒着の断裂や異常血管の破綻によって発症する。 胸腔ドレーン挿入が適応となる。
再膨張性肺水腫
典型的には気胸発症~3日以上経過した高度虚脱例にドレナージを行い拡張することで発症する。 病態はself-limitedであり、 呼吸管理によって自然軽快する。
肺の虚脱改善に乏しく、 エアリークが5日以上持続する場合に外科治療 (胸腔鏡手術) を検討する。
胸膜癒着術
胸膜癒着術で使用する薬剤にはピシバニール、 テトラサイクリン系薬剤、 タルク、 自己血、 50%ブドウ糖などがある。 自然気胸で外科手術の困難な症例は高齢者の続発性気胸で、 間質性肺炎やCOPDの合併例が多いため、 副作用が少ない自己血や50%ブドウ糖の選択を推奨する。
固形シリコン製気管支充填剤 (EWS)
気管支鏡下で気管支内に充填剤を充填・閉塞し、 末梢肺からの気漏を止める。
呼吸器内科をもっと深く学びたい方は 「レジデントのための呼吸器診療最適解」 (医学書院) でぜひ勉強されて下さい!
亀田総合病院 呼吸器内科 初期研修医向けオンライン説明会 3月~4月の案内
一言 : 当科では教育および人材交流のために、 日本全国から後期研修医・スタッフ (呼吸器専門医取得後の医師) を募集しています。 ぜひ一度見学に来て下さい。
連絡先 : 主任部長 中島啓
メール : kei.7.nakashima@gmail.com
Twitter : https://twitter.com/keinakashima1
Instagram : https://www.instagram.com/kei_nakashima7
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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