HOKUTO編集部
1年前
根治切除可能なII-IV期の大腸癌患者において、 術後腫瘍由来循環DNA (ctDNA) に基づく微小残存病変 (MRD) の検出は、 最も強力な予後予測因子であることが、 CIRCULATE-JapanにおけるGALAXY試験の最新解析結果から報告された。 ctDNA陽性/陰性にBRAF V600E遺伝子変異の有無とマイクロサテライト不安定性(MSI-H)の状態を組み合わせることで、 再発リスクをより明確に予測できたという。 横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器外科准教授の渡邉純氏が発表した。
CIRCULATE-Japan (リキッドバイオプシーによるがん個別化医療の実現を目指す新プロジェクト) の一環として実施されている前向き観察研究。 根治的外科手術を予定しているII-IV期の大腸癌患者を対象に、 リキッドバイオプシーを用いた術前および術後の再発リスクのモニタリング (米・ Natera 社が開発した高感度遺伝子解析技術Signateraアッセイを用いた検査) を実施している。
術後4週時点のctDNAに基づくMRDの検出は、 術後再発リスクと強く関連していた。
2020年5月〜2022年4月にGALAXY試験に登録されたII-IV期の大腸癌患者3,615例のうち、 組み入れ基準を満たした2,083例 (データカットオフ日:2022年11月10日)
術後1カ月、 3カ月、 6カ月、 9カ月、 12カ月、 18カ月、 24カ月または再発まで、 Signatera検査を実施し、 定期的にctDNAを解析。 CT検査は6カ月ごとに実施した。
主要評価項目:無病生存期間 (DFS)
今回は、 GALAXY試験から、 根治的切除可能なII-IV期の大腸癌患者において、 術後のMRD検出とBRAF V600E遺伝子変異の有無およびMSI-Hの状態との関連について検討した最新結果(追跡期間中央値16.3カ月)が報告された。
①術後1カ月時点のctDNA
HR 12.0、 p<0.001
再発リスクは術後1カ月時点のctDNA陽性患者において有意に高かった
②術後3カ月時点のctDNA変化
HR 3.5、 p<0.001
HR 14.5、 p<0.001
HR 25.4 、 p<0.001
1) ctDNA陰性患者
HR 2.06、 p=0.107
HR 0.09、 p=0.006
HR 0.07、 p=0.002
BRAF V600E遺伝子変異の有無に関係なく、 MSI-H患者はMSS患者と比べて再発リスクが低く、 ctDNA陰性例ではMSI-Hの影響が大きかった。
2) ctDNA陽性患者
HR 7.54、 p<0.001
HR 2.33、 p=0.043
HR 0.67、 p=0.488
MSI-Hの状態に関係なく、 BRAR V600E遺伝子変異陽性患者では再発率が高く、 ctDNA陽性例ではBRAR V600E遺伝子変異の影響が大きかった。
解析の結果、 術後4週時点のctDNA陽性 (vs陰性) は最も有意な予後予測因子であり (HR 11.68、 95%CI 8.61-15.85、 p<0.001)、 BRAF遺伝子変異 (vs 野生型:同2.05、 1.05-3.99、 0.035)、 MSI-H (vs MSS:同0.26、 0.10-0.62、 0.003) を上回る強い因子であった。
術後4週時点のctDNAの結果とBRAF V600遺伝子変異の有無およびMSI-Hの状態を組み合わせることで、 根治切除を行ったII-IV期大腸癌の再発リスクをより明確に予測することができ、 術後補助療法の個別化につながる可能性がある。 ctDNAに基づく術後補助療法の治療戦略については、 現在進行中の第Ⅲ相ランダム化比較試験であるVEGAおよびALTAIRの結果が待たれる。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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