大腸癌の術後ctDNAと再発リスクとの関連にBRAF V600E変異の有無、MSI-Hが影響:日本発GALAXY試験
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HOKUTO編集部

1年前

大腸癌の術後ctDNAと再発リスクとの関連にBRAF V600E変異の有無、MSI-Hが影響:日本発GALAXY試験

大腸癌の術後ctDNAと再発リスクとの関連にBRAF V600E変異の有無、MSI-Hが影響:日本発GALAXY試験
根治切除可能なII-IV期の大腸癌患者において、 術後腫瘍由来循環DNA (ctDNA) に基づく微小残存病変 (MRD) の検出は、 最も強力な予後予測因子であることが、 CIRCULATE-JapanにおけるGALAXY試験の最新解析結果から報告された。 ctDNA陽性/陰性にBRAF V600E遺伝子変異の有無とマイクロサテライト不安定性(MSI-H)の状態を組み合わせることで、 再発リスクをより明確に予測できたという。 横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器外科准教授の渡邉純氏が発表した。 

背景

GALAXY試験とは

CIRCULATE-Japan (リキッドバイオプシーによるがん個別化医療の実現を目指す新プロジェクト) の一環として実施されている前向き観察研究。 根治的外科手術を予定しているII-IV期の大腸癌患者を対象に、 リキッドバイオプシーを用いた術前および術後の再発リスクのモニタリング (米・ Natera 社が開発した高感度遺伝子解析技術Signateraアッセイを用いた検査) を実施している。

同研究の中間解析の結果

術後4週時点のctDNAに基づくMRDの検出は、 術後再発リスクと強く関連していた。

  1. 術後4週時点のctDNA陽性例は、 陰性例に比べて再発リスクが高い(HR 10.0)
  2. II-III期で術後4週時にctDNA陽性症例では、 術後補助化学療法を施行すると、 施行しなかった場合と比べて再発リスクが低い

Nat Med 2023; 29(1): 127-134

試験の概要

対象

2020年5月〜2022年4月にGALAXY試験に登録されたII-IV期の大腸癌患者3,615例のうち、 組み入れ基準を満たした2,083例 (データカットオフ日:2022年11月10日)

方法

術後1カ月、 3カ月、 6カ月、 9カ月、 12カ月、 18カ月、 24カ月または再発まで、 Signatera検査を実施し、 定期的にctDNAを解析。 CT検査は6カ月ごとに実施した。

評価項目

主要評価項目:無病生存期間 (DFS)

試験の結果

今回は、 GALAXY試験から、 根治的切除可能なII-IV期の大腸癌患者において、 術後のMRD検出とBRAF V600E遺伝子変異の有無およびMSI-Hの状態との関連について検討した最新結果(追跡期間中央値16.3カ月)が報告された。

患者背景(2,083例)

  • 年齢中央値69歳
  • 男性54%
  • 腫瘍原発巣の位置:右側 25%、 左側 75%
  • 病理学的病期:II 42%、 III 51%、 IV 7%
  • RAS変異の:野生型 57%、 変異型 43%
  • 術後4週時点のctDNA陽性例:14%(286例)
  • BRAF遺伝子変異およびMSI-Hの状態
  • BRAF野生型/MSS:1,707例
  • BRAF V600E変異型/MSS:59例
  • BRAF野生型/MSI-H:97例
  • BRAF V600E変異型/MSI-H:110例

ctDNAと18カ月DFS率

①術後1カ月時点のctDNA

  • ctDNA(+):51.6%
95%CI 45.2-57.6%、 286例(14%)
  • ctDNA(−):93.9%
95%CI 92.5-95%、1,797例 (86%)

HR 12.0、 p<0.001

95%CI 9.1-15
再発リスクは術後1カ月時点のctDNA陽性患者において有意に高かった

②術後3カ月時点のctDNA変化

  • 陰性→陰性:94.9%
95%CI 93.5-96.0%、1,529例
  • 陽性→陰性:82.2%
95%CI 72.3-88.9%、112例

HR 3.5、 p<0.001

95%CI 1.9-5.8
  • 陰性→陽性:47.4%
95%CI 30.4-62.7%、43例

HR 14.5、 p<0.001

95%CI 8.8-23.8
  • 陽性→陽性:33.8%
95%CI 25.0-42.8%、124例

  HR 25.4 、 p<0.001

95%CI 18.3-35.3

術後1ヶ月時点でのctDNAとBRAF V600E遺伝子変異およびMSI-Hと18カ月DFS率

1) ctDNA陰性患者

  • BRAF野生型/MSS:93.3%
95%CI 91.7-94.6%、1,450例
  • BRAF V600E/MSS:86.3%
95%CI 71.8-93.7%、50例

HR 2.06、 p=0.107

95%CI 0.84-4.23
  • BRAF野生型/MSI-H:100%
88例

HR 0.09、 p=0.006

95%CI 0.001-0.61
  • BRAF V600E/MSI-H:100%
107例

HR 0.07、 p=0.002

95%CI 0.001-0.50
BRAF V600E遺伝子変異の有無に関係なく、 MSI-H患者はMSS患者と比べて再発リスクが低く、 ctDNA陰性例ではMSI-Hの影響が大きかった。

2) ctDNA陽性患者

  • BRAF野生型/MSS:50.9%
95%CI 44.1-57.3%、257例
  • BRAF V600E/MSI-H:0%
3例

HR 7.54、 p<0.001

95%CI 2.37-24.0
  • BRAF V600E/MSS:33.3%
95%CI 7.8-62.3%、9例

HR 2.33、 p=0.043

95%CI 1.03-5.30
  • BRAF野生型/MSI-H:66.7%
95%CI 28.2-87.8%、9例

HR 0.67、 p=0.488

95%CI 0.21-2.20
MSI-Hの状態に関係なく、 BRAR V600E遺伝子変異陽性患者では再発率が高く、 ctDNA陽性例ではBRAR V600E遺伝子変異の影響が大きかった。

DFSの多変量解析

解析の結果、 術後4週時点のctDNA陽性 (vs陰性) は最も有意な予後予測因子であり (HR 11.68、 95%CI 8.61-15.85、 p<0.001)、 BRAF遺伝子変異 (vs 野生型:同2.05、 1.05-3.99、 0.035)、 MSI-H (vs MSS:同0.26、 0.10-0.62、 0.003) を上回る強い因子であった。

結論

術後4週時点のctDNAの結果とBRAF V600遺伝子変異の有無およびMSI-Hの状態を組み合わせることで、 根治切除を行ったII-IV期大腸癌の再発リスクをより明確に予測することができ、 術後補助療法の個別化につながる可能性がある。 ctDNAに基づく術後補助療法の治療戦略については、 現在進行中の第Ⅲ相ランダム化比較試験であるVEGAおよびALTAIRの結果が待たれる。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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