HOKUTO編集部
4日前

欧州臨床腫瘍学会 (ESMO 2026) が、 10月23~27日にスペイン・マドリードで開催される。 肺癌ではPresidential Symposiumに3演題が採択された。 本稿では、 Presidential Symposiumおよび口演に採択された肺癌の演題のうち、 第Ⅲ相試験に絞って編集部が選んだ15演題を、 非小細胞肺癌 (NSCLC) と小細胞肺癌 (SCLC) に分けて開幕に先立って予告する。
PD-L1陰性の進行非扁平上皮NSCLCの1次治療を対象に、 TROP2を標的とする抗体薬物複合体 (ADC) sacituzumab tirumotecanとペムブロリズマブの併用を、 化学療法とペムブロリズマブの併用と比較した無作為化第Ⅲ相試験である。 PD-L1陰性例でも化学免疫療法の有効性は示されているが、 さらなる治療成績の改善が求められる。 既に主要評価項目である無増悪生存期間 (PFS) の有意な改善が公表されており、 今回は効果の大きさや安全性の詳細が注目される。
PD-L1発現50%以上の進行NSCLCの1次治療を対象に、 ペムブロリズマブ単剤とペムブロリズマブ+プラチナ併用化学療法を直接比較した第Ⅲ相試験である。 PD-L1高発現例に化学療法を上乗せするかは実地で判断が分かれ続けてきた論点で、 これまで両者を直接比較した無作為化試験は限られていた。 上乗せの是非と、 上乗せが有用な患者像が示されるかが焦点となる。
未治療のEGFR変異陽性進行NSCLCのうちMET過剰発現を伴う症例を対象に、 MET阻害薬savolitinibとオシメルチニブの併用を、 オシメルチニブ+プラセボと比較した第Ⅲ相試験である。 MET増幅はEGFR阻害薬に対する代表的な耐性機序であり、 耐性が顕在化する前に併用する戦略が検証された。 開発元は主要評価項目であるPFSの有意な改善を公表しており、 今回は効果の大きさや全生存期間 (OS) の解析結果が注目される。 ❺SAFFRONが耐性後の併用を扱うのに対し、 本試験は1次治療での併用を扱う。
同時性オリゴ転移のNSCLCを対象に、 全身療法に地固め放射線療法を加える意義を検証した無作為化比較試験の主要結果である。 オリゴ転移への局所療法は各国のガイドラインで言及されているが、 無作為化比較試験のエビデンスは限られてきた。 全身療法が進歩した現在の設定で局所療法の上乗せが成立するか、 また対象となる患者像が焦点となる。
オシメルチニブ投与後に増悪したEGFR変異陽性進行NSCLCのうち、 MET過剰発現またはMET増幅を伴う症例を対象に、 オシメルチニブとsavolitinibの併用をプラチナ・ペメトレキセドと比較した第Ⅲ相試験の主要結果である。 オシメルチニブ耐性後は、 国内でもアミバンタマブ+カルボプラチン+ペメトレキセドが承認されており、 耐性機序に応じた治療選択が可能かが論点となる。 PFSとOSの有意な改善が既に公表されており、 今回は効果の大きさと安全性の詳細が注目される。 Presidential Symposiumに選ばれた1演題。
EGFR-TKI投与後に増悪したEGFR変異陽性・MET増幅を伴う進行NSCLCを対象に、 MET阻害薬dalmelitinibと第3世代EGFR-TKI aumolertinibの併用を、 プラチナ併用化学療法と比較した無作為化第Ⅲ相試験である。 ❺SAFFRONと同様にMETを介したEGFR-TKI耐性を扱うが、 前治療やMETの選択基準は異なる。
EGFR-TKI投与後に増悪したEGFR変異陽性NSCLCを対象に、 sacituzumab tirumotecanとプラチナ併用化学療法を比較した第Ⅲ相試験の最終OS解析である。 化学療法を中心とする耐性後治療に対し、 ADCが耐性機序を問わない選択肢として位置付けられるかが論点となる。 既報の中間解析ではOSの有意な改善が示されており、 今回は最終解析による生存利益の持続性が注目される。
第3世代EGFR-TKI投与後に増悪したEGFR変異陽性の非扁平上皮NSCLCを対象に、 EGFR×HER3二重特異性抗体を基盤とするADC izalontamab brengitecanを検証した無作為化第Ⅲ相試験である。 本薬は乳癌領域でも第Ⅲ相が進行しており、 国内でも臨床試験が動いている。EGFR-TKI耐性後の新たな治療選択肢として、 有効性と安全性が注目される。
EGFR-TKI投与後に増悪したEGFR変異陽性進行NSCLCを対象に、 HER3を標的とするADC ruzaltatug rezetecanとプラチナ併用化学療法を比較した第Ⅲ相試験の中間解析である。 HER3標的ADCはこの設定で複数の開発が進んできた経緯があり、 第Ⅲ相での位置付けが問われる。 ❼OptiTROP-Lung04 (TROP2標的)、 ❽PANKU-Lung01 (EGFR×HER3) と合わせ、 EGFR-TKI耐性後における標的の異なるADCの成績が報告される。
既治療のKRAS G12C変異陽性進行NSCLCを対象に、 新規KRAS G12C阻害薬divarasibを、 ソトラシブまたはadagrasibと直接比較した第Ⅲ相試験である。 同じ標的の薬剤を直接比較する設計は稀で、 プラセボや化学療法を対照に置く試験とは読み方が変わる。 開発元は2026年に主要評価項目を達成した旨を公表しているが、 詳細は本セッションが初出となる。 Presidential Symposiumに選ばれた1演題。
既治療の非扁平上皮NSCLCを対象に、 インテグリンβ6を標的とするADC sigvotatug vedotinとドセタキセルを比較した第Ⅲ相試験である。 化学免疫療法後の2次治療はドセタキセルが長く標準で、 これを置き換える試みが各種のADCで進んでいる。 全体集団では主要評価項目のOSで有意な改善を示さなかったことが公表されており、 今回は詳細な有効性・安全性や治療ライン別の結果が注目される。
切除可能なStage II~IIIのNSCLCを対象に、 周術期の抗PD-1抗体toripalimabと化学療法の併用を検証した第Ⅲ相試験の最終解析である。 周術期免疫療法は既に国内でも標準となりつつあるが、 長期追跡でのイベント無発生生存期間とOSが揃った報告は限られる。 周術期治療の長期的な有用性が論点となる。
切除された早期NSCLCを対象に、 術後補助療法としてのペムブロリズマブをプラセボと比較した第Ⅲ相試験の最終解析である。 本試験は中間解析で全体集団の無病生存期間が改善した一方、 PD-L1高発現集団では当初の解析で有意差に至らず、 術後補助療法としての位置付けに議論が残っていた。 最終解析でPD-L1発現別の結果がどう整理されるかが焦点となる。
進展型SCLCで導入化学免疫療法を終えた症例を対象に、 1次維持療法としてDLL3を標的とする二重特異性T細胞誘導抗体タルラタマブをデュルバルマブに上乗せする意義を検証した第Ⅲ相試験の主要解析である。 国内でタルラタマブは化学療法後に増悪した症例に承認されており、 本試験はこれを1次維持療法へ前倒しする設計である。 主要評価項目のOSおよび副次評価項目のPFSで有意な改善が公表されており、 効果の大きさとサイトカイン放出症候群などの安全性の詳細が注目される。 Presidential Symposiumに選ばれた1演題。
既治療のSCLCを対象に、 タルラタマブと化学療法を比較した第Ⅲ相試験のOSの延長追跡結果である。 本試験は2026年3月の国内電子添文改訂の根拠となった試験であり、 既に実地で使われている薬剤の長期成績という位置付けになる。 ⓮DeLLphi-305が1次維持療法への前倒しを扱うのに対し、 本演題は現行の使用設定での長期データを示す。
本稿に採らなかった演題のうち、 進行NSCLCでは二重特異性抗体・三重特異性抗体の初期データ (ROSETTA Lung-107、 CS2009)、 KRAS G12C変異例への新規阻害薬 (olomorasib、 calderasib)、 HER2変異陽性例への1次治療トラスツズマブ デルクステカンの患者報告アウトカム (DESTINY-Lung04) が示される。 胸部腫瘍ではSCLCへの新規ADC (ABBV-706、 SKB500)、 胸腺上皮性腫瘍への薬物療法 (THRIVE、 iTHYM)、 中皮腫のMTAP欠失に関する病理・トランスクリプトーム解析が並ぶ。
HOKUTOでは各演題のレポートを順次公開予定。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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