HOKUTO編集部
11ヶ月前
がん薬物療法におけるG-CSFの使用について、 日本癌治療学会が 「G-CSF適正使用ガイドライン2022年10月改訂第2版」 を2022年に発表した。 第61回日本癌治療学会学術集会では、 日本癌治療学会G-CSF適正使用ガイドライン改訂WG委員長で、 がん研有明病院乳腺内科部長の高野利実氏が、 同ガイドラインの主な改訂のポイントを解説した。
主に以下の3つの改訂ポイントを取り上げる
G‒CSF の使用法として、 以前は発熱性好中球減少症 (FN) または高度な好中球減少が確認された際の治療として投与する 「治療投与」 が主流であった。 2001年に出された、 「G-CSF適正使用ガイドライン」 では、 好中球数によらず、 FN発症を防ぐ目的で投与を開始する 「一次予防投与」 が推奨されてはいたが、 保険適用の問題から、 予防投与が広まることはなく、 現場では、 当然のように、 治療投与だけが行われていた。
今回の改訂では、 本来の使用法は 「治療投与」 ではなく 「一次予防投与」 であることを念頭に、 「一次予防投与」 に関する記載が多くを占める構成となっている。
前回大幅に改訂された2013年版では、 一次予防投与が強く推奨され、 「FN発症率が20%以上のレジメンを使用する時は、 FNを予防するためにG-CSFの一次予防投与が推奨される」 と記載された。 しかしながら、 この20%という数値は科学的根拠に乏しく、 また臨床試験によりFNの発症率が異なるため、 現場の判断が困難であると指摘されていた。
今回の改訂では、 エビデンスに基づくガイドライン作成が必要と考えられ、 FN20%の基準を脱却し、 がん種ごとにCQを設定し、 それぞれシステマティックレビューが実施された。
ガイドライン全体で46項目のCQを設定し、 それぞれシステマティックレビューが実施された。 エビデンスが十分になく、 システマティックレビューが困難であった課題は、 CQからFuture Research Question(FQ)に変更された。 CQではG-CSF投与についての推奨が明示され、 FQでは現状を踏まえた解説文と今後研究課題が記載された。
一次予防投与に関するCQと、 治療強度増強に関するCQはがん種ごとに設定されたため、 項目数が多くなっている。 2013年版における一次予防投与に関するCQは 「G-CSFの一次予防投与は有用か?」 の1項目のみであったが、 2022年版では24項目*となった。 治療強度増強に関するCQも1項目から11項目に増加した。 がん種ごとにG-CSFの推奨を行うのは、 世界で初めての試みであったという。
本ガイドラインに関する5-10分程度の解説動画が、 現時点 (2023年10月) で10本、 既にm3で公開されている。 今後、 日本癌治療学会のホームページでの公開が検討されている。
現在もG -CSFの添付文書では、 「用法・用量」 が、 「好中球数1,000/μL未満で発熱、 あるいは好中球数500/μL未満が観察された時点から投与する」 とされており、 今後添付文書の改訂を求めていく必要がある。
本ガイドライン全体の要約と、 本ガイドライン改訂のために行われたシステマティックレビューは、 今後論文化される予定であるという。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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