HOKUTO編集部
2年前
前回までRetを指標とした貧血初期評価を解説しました。 今回はMCV値を取り上げます!
MCVとは平均赤血球容積: mean corpuscular volumeの略で、 以下の式で計算される。 要は赤血球1個の大きさの平均値の指標の一つである。
MCV = ヘマトクリット(Hct) ÷ 赤血球数(×10⁶/μl) × 10 (fL: フェムトリットル)
最も遭遇する頻度が高い貧血、 特に「鉄欠乏性貧血」は貧血全体でみても最多原因
鉄欠乏性貧血、 慢性疾患/炎症に伴う貧血(ACD)、 サラセミアなど
フェリチン、 T-SATなど鉄動態指標をもとに鑑別を進める (詳細は次回)。
小球性の時点で、 赤血球産生に鉄が利用できていない病態があると考えたほうがよい。
大球性貧血は小球性貧血と合併すると正球性~小球性となることがあり要注意
巨赤芽球性貧血(ビタミンB12/葉酸欠乏)、 肝疾患やアルコールによる貧血、 甲状腺機能低下症、 骨髄異形成症候群など
後述のRDW (赤血球分布幅) や血液像、 血球数、骨髄穿刺などで鑑別を進める (詳細は次回以降)
巨赤芽球性貧血以外の疾患はMCV100~110程度であることが多い
小球性貧血と合併している場合には、 MCVが正常~低値となることがある
出血や溶血性貧血では、 網状赤血球が増加しMCVは上昇する
正球性貧血は何でもあり。 複数病態が合併する場合も多く、 正球性貧血を適切にアプローチしてマネジメントできれば貧血マスター!
腎性貧血、 溶血性貧血(網状赤血球&RPIで鑑別しているはず)、 血液腫瘍(他系統の血球減少を伴う)、 骨髄癌腫症など
腎性貧血や複数の貧血病態の複合を念頭に鑑別していく (詳細は次回以降)。
小球性貧血+大球性貧血でも正球性となる
鉄欠乏性貧血やACDは初期には正球性となる
正球性貧血を呈するとされる腎性貧血でも、 鉄欠乏性貧血を合併すれば小球性貧血となる。
RDWとは、RBC Distribution Widthの略で、 赤血球容積の均一性を表す指標である。 多くの自動血球計数器で自動計算されている。
複数病態(小球性貧血+大球性貧血)では大きい赤血球や、 小さい赤血球が混在しており、 RDWは高値となる。 赤血球液輸血後も高値となる
単一病態による貧血はRDWが正常値となる。
RDWは簡便で有用な指標だが、 研究では精度の低さが示唆される²⁾³⁾。 熟練者による末梢血液塗抹標本の鏡検に優るものではない。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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