【RCTメタ解析】早期乳癌に対する術後化学療法または術後ホルモン療法
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11ヶ月前

【RCTメタ解析】早期乳癌に対する術後化学療法または術後ホルモン療法

【RCTメタ解析】早期乳癌に対する術後化学療法または術後ホルモン療法
早期乳癌患者の術後化学療法またはホルモン療法における、 複数の無作為化比較試験(RCT)の結果を評価したメタアナリシスの結果より、 15年死亡率を減少させる治療の存在が示された。

原著論文

解析結果

Effects of chemotherapy and hormonal therapy for early breast cancer on recurrence and 15-year survival: an overview of the randomised trials. Lancet. 2005 May;365(9472):1687-717. PMID: 15894097

関連レジメン

タモキシフェン錠10mg

1日20mgを1~2回に経口投与

1日最高量は40mg

タモキシフェン錠20mg

1日20mgを1回に経口投与

1日最高量は40mg

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本研究の概要

対象

早期乳癌患者

方法

  • 1995年までに開始されたすべてのRCTより、 術後化学療法または術後ホルモン療法(1ヵ月以上施行)として下記の2つの治療群で比較した試験を選択。
  • 単剤化学療法 vs 化学療法なし
  • 多剤併用化学療法 vs 化学療法なし
  • アントラサイクリンベースの多剤併用化学療法 vs CMF (シクロホスファミド、 メトトレキサート、 フルオロウラシル) を併用した標準的多剤併用化学療法
  • 多剤併用化学療法の長期療法 vs 短期療法
  • タモキシフェン vs タモキシフェンを使用しない術後療法
  • タモキシフェンの長期療法 vs 短期療法
  • 卵巣切除または卵巣機能抑制療法 (50歳未満) vs術後の卵巣機能抑制療法なし
  • すべてのRCTより、 下記情報が集められた。
  • 治療法、 無作為化日、 年齢、 閉経の有無、 局所リンパ節転移の有無、 エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体の測定結果、 初回局所再発日、 遠隔再発日、 対側乳癌発生日、 他の2次原発癌の発生日、 死亡日

評価項目

初回再発、 乳癌死亡率、 全死亡率、 再発以外の原因による死亡率、 再発前の他の2次原発癌の発生率

本研究の結果

術後単剤/多剤併用化学療法 vs 術後療法なし

単剤化学療法レジメンは再発率を低下させ、 多剤化学療法レジメンは再発と乳癌による死亡率 (ひいては総死亡率) を低下させた。

単剤化学療法

  • 再発イベント発生率の比 (対対照) :0.86、 p=0.001
  • 乳癌死亡イベント発生率の比:0.96、 p=0.4

多剤化学療法

  • 再発イベント発生率の比 (対対照) :0.77、 p<0.00001
  • 乳癌死亡イベント発生率の比:0.83、 p<0.00001

若年および高齢患者の術後多剤併用化学療法 vs 術後療法なし

  • 若年患者および高齢患者の15年時再発率と乳癌死亡率は、 年齢に関わらず多剤併用化学療法で有意に低かったが (すべてp<0.00001) 、 高齢患者より若年患者の方が多剤併用化学療法の予後改善効果が約3倍大きかった。
  • 若年患者・高齢患者のどちらにおいても、 CMFベースのレジメンとアントラサイクリンベースの有効性に差は見られなかった。
  • 結節の有無はいずれの年齢層においても乳癌死亡率の減少にはほとんど関係しない。

化学療法はエストロゲン受容体(ER)発現の乏しい若年患者にも高齢患者にも有効であった

  • 若年患者:再発率比 0.61 (p<0.00001) 、 死亡率比 0.68 (p=0.0002) 
  • 高齢患者:再発率比 0.72 (p<0.00001) 、 死亡率比 0.81 (p=0.0004)

ER陽性の患者では、 化学内分泌療法は内分泌療法単独よりも有意に優れていた。

  • 若年患者:再発率比 0.64 (p<0.00001) 
  • 高齢患者:再発率比 0.85 (p<0.00001)

術後多剤併用化学療法の長期療法 vs 短期療法

  • 最初の2年間の再発率は、 治療期間が長いほど有意に低かった (11.2 vs 13.0%/年、 再発率比0.84、 p=0.003) が、 長期的に見ると、 治療期間が長いことによる利益はほとんどなかった (再発率8.3 vs 8.7%/年、 再発率比0.95、 乳癌死亡率比 0.98) 。
  • アントラサイクリンベースのレジメンとCMFベースのレジメンの間接的比較では、 有効性に差は見られなかったが、 直接的比較では、 若年層でアントラサイクリンが有利であった。
  • アントラサイクリンvs CMF:再発率比0.89 (p=0.001) 、 乳癌死亡率比0.84 (p<0.00001) 

死亡率に対するアントラサイクリンベースのレジメンの効果

  • アントラサイクリンベースの術後化学療法 vs 術後化学療法なし:乳癌死亡率比は若年患者で0.74、 高齢患者で0.83。
  • 若年患者・高齢患者のどちらにおいても、 アントラサイクリンベースのレジメンの乳癌死亡率に対する効果は、 ERの状態と有意な関係はなかった。

アントラサイクリン系レジメン間の比較

  • アントラサイクリンをベースとしたレジメン間に、 有意な異質性はみられなかった。
  • FACまたはFEC vs 術後補助化学療法なしの比較:乳癌死亡率比は若年患者で0.69、 高齢患者で0.79
  • FACまたはFEC vs CMFの比較:乳癌死亡率比は若年患者で0.74、 高齢患者で0.78

タモキシフェン vs タモキシフェンを使用しない術後療法

  • ER陽性の女性において、 タモキシフェンの1-2年投与、 約5年投与のどちらにおいても、 再発率と乳癌死亡率の大幅かつ有意な減少を認め、 特に5年投与の方が減少率が大きかった (1-2年投与 vs 5年投与:再発p<0.00001、 乳癌死亡p=0.0001)。
  • ER発現の乏しい女性では、 タモキシフェンを1-2年投与した試験でいくらかの有効性があるように思われたが、 約5年投与した試験では有効性は認めなかった。

ER陽性患者における5年間のタモキシフェン投与

  • 5年投与を行うことで、 年間の再発率はほぼ半減し (再発率比0.59) 、 乳癌死亡率は3分の1減少した (死亡率比0.66) 。
  • 再発に対する効果は、 タモキシフェン投与中の最初の5年間に見られるが、 乳癌死亡に対する効果はこの期間以降に現れる。
  • タモキシフェンによるリスク減少は、 20mg/日でも30-40mg/日でもほぼ同様であり、 年齢や結節の状態にもほとんど影響されなかった。
  • 乳癌死亡率に関しては、 10年確率はリンパ節転移陽性の女性 (32.0% vs 44.5%、 p<0.00001) だけでなく、 リンパ節転移陰性の女性 (12.2% vs 17.5%、 p<0.00001) においても有意であった。
  • 対側乳癌の発生率は約3分の1減少し (年間1,000人当たり4.0 vs 6.0人) 、 子宮体癌の発生率は約3倍に増加した (年間1,000人当たり1.9 vs 0.6人) 。

タモキシフェンの術後長期ホルモン療法 vs 術後短期ホルモン療法

  • 治療期間が長い方が治療期間が短い場合よりも乳癌の抑制効果が高かった (乳癌死亡率比0.92、 p=0.01、 再発率比0.85、 p<0.00001) 。
  • 治療期間が長くなるにつれて、 他の原因による死亡率 (血栓塞栓症、 脳卒中等) がわずかに多くなった (死亡率比0.98 vs 0.94%/年、 p=0.5) 。
  • 治療期間が長くなるにつれて、 子宮体癌の発生率は有意に増加した (0.21 vs 0.11%/年、 p=0.00002) 。
  • タモキシフェン5年投与とタモキシフェン1-2年投与の比較では、 約5年間の治療の方が優れていた (再発率比0.82、 p<0.00001、 乳癌死亡率比0.91、 p=0.01) 。

卵巣切除または卵巣機能抑制療法 (50歳未満) vs術後の卵巣機能抑制療法なし

卵巣切除または機能抑制は、 再発率 (p<0.00001) および乳癌死亡率 (p=0.004) に対して明確な効果を認めた。

著者らの結論

1980年代に実施された試験の早期乳癌に対する術後療法のうちいくつかは、 5年再発率だけでなく15年乳癌死亡率も大幅に減少させた。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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