【リウマチ・膠原病のQA】全身性強皮症疑いで測定すべき抗体と関連病変は?
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亀田総合病院

3ヶ月前

【リウマチ・膠原病のQA】全身性強皮症疑いで測定すべき抗体と関連病変は?

【リウマチ・膠原病のQA】全身性強皮症疑いで測定すべき抗体と関連病変は?
亀田総合病院リウマチ・膠原病・アレルギー科の専門医が、 リウマチ・膠原病診療に関わるさまざまな疑問とそのTipsについて、 分かりやすく解説します (第9回解説医師 : 小田修宏先生)。 

SSc疑いで測定すべき自己抗体

保険下で実施可能な3種が特に重要

全身性強皮症(SSc)を疑った場合に現在測定できる自己抗体は以下のとおりです。

保険適用されている検査

  • 抗トポイソメラーゼⅠ (Scl-70) 抗体
  • 抗RNA ポリメラーゼⅢ抗体
  • 抗セントロメア抗体
上記のほか、 混合性結合組織病 (MCTD) で陽性となる抗RNP抗体も保険収載されている。

保険適用外の検査

  • イムノブロット法 (Euroline®︎)
  • 間接蛍光抗体法 (A-cube®︎)
詳細は各検査会社 (EUROIMMUN、 伏見製薬所) 公式サイトを参照のこと。

このうち、 現在保険適用されている3つの自己抗体 (表1太字) はすべてACR/EULAR 2013のSSc分類基準 (表2)²⁾にも含まれており、 臨床的にも特に重要な抗体です。

表1) SScの自己抗体一覧
【リウマチ・膠原病のQA】全身性強皮症疑いで測定すべき抗体と関連病変は?
*肘/膝より近位に皮膚硬化がある場合にはびまん皮膚硬化型、 遠位にとどまる場合は限局皮膚硬化型と呼ぶ。
Nat Rev Dis Primers. 2015 Apr;1:15002.¹⁾を参考に編集部作成
表2) ACR/EULAR 2013の強皮症分類基準
【リウマチ・膠原病のQA】全身性強皮症疑いで測定すべき抗体と関連病変は?
Arthritis Rheum. 2013;65(11):2737-47.²⁾を参考に編集部作成

今回は、 実臨床で特に重要な3つの自己抗体を中心に解説していきます。

※以下、 引用文献が示されていない部分はFirestein & Kelley’s Textbook of Rheumatology. 12th ed. Philadelphia: Elsevier; 2024を参考に記載。

重要な自己抗体の特徴と関連病変

抗トポイソメラーゼⅠ (Scl-70) 抗体

抗トポイソメラーゼⅠ抗体は別名 「抗Scl-70抗体 (ATA) 」としても知られており、 主にびまん皮膚硬化型SScに関連しているとされています。 ただし、 限局皮膚硬化型SScの最大30%にも同抗体が検出され、 実際には皮膚病変の表現系は多様です。

主な臓器病変としては、 ①重度の間質性肺炎 ②腎クリーゼ ③心臓病変 ④皮膚の拘縮 ⑤関節炎⑥"tendon friction rubs"と呼ばれる腱摩擦音などがあります。 ATA陽性患者は強皮症の中でも予後不良であり、 時に皮膚硬化が急速に進行する症例もあります。 特に重要な臓器病変は間質性肺炎ですが、 腎クリーゼも多く、 皮膚硬化の急速な進行はこれらのリスクとされています。

抗RNAポリメラーゼⅢ抗体

抗RNAポリメラーゼⅢ抗体 (ARA) は急速かつアグレッシブなびまん性の皮膚硬化、 腎クリーゼ、 胃前庭部血管拡張症 (GAVE) による消化管出血と関連しています。 皮膚硬化は最も重度で、 指・手首・肘・肩・股関節・膝・足首の屈曲拘縮は疾患活動性開始~数ヵ月以内に発生する可能性のある合併症です。 また、 "tendon friction rubs"の合併症も一般的です。

特に重要な臓器病変としては、 ARA陽性患者の25~40%が発症する腎クリーゼおよび強皮症関連腎不全があり、 皮膚硬化の進行初期段階で特にリスクが高くなります。 一方で、 ATAと異なり間質性肺炎を発症する可能性は低いとされています。

またARAは悪性腫瘍と関連がある自己抗体であり、 同抗体陽性患者はSScの発症後2年以内に悪性腫瘍と診断されるリスクがあります³⁾。 びまん皮膚硬化型SScでは乳癌・前立腺癌・舌癌のリスクが、 限局皮膚硬化型SScでは肺癌のリスクが高い⁴⁾ため、 注意が必要です。

抗セントロメア抗体

抗セントロメア抗体 (ACA) は限局皮膚硬化型SScに高い特異性を示しますが、 びまん皮膚硬化型SScの約5%にも認められます。 主に、 指に限局した皮膚硬化と緩徐な臨床経過を呈します。 症状としてはいわゆるCREST症候群の特徴を示すことが多く、 特にレイノー現象が重症化しやすいです。

間質性肺炎は一般的ではないものの、 肺高血圧とそれに伴う右心不全の合併率は高いことが特徴とされます。 ただし全体としては、 ACA陽性はSScにおいて予後良好な予測因子であることがわかっています。

またACAはシェーグレン症候群、 全身性エリテマトーデス、 関節リウマチ、 自己免疫性感染、 原発性胆汁性胆管炎でも認められます。

抗核抗体の核小体パターン

抗Th/To抗体、 抗U3-RNP抗体等

SScの最大40%で抗核抗体の核小体(Nucleolar)パターンを呈すことが明らかにされており、 核小体パターン陽性の場合、 前述した3つの自己抗体が陰性であってもSScの可能性を疑います。

核小体パターンを呈す抗体には、 限局皮膚硬化型SScと関連する抗Th/To抗体と抗PM/Scl抗体、 およびびまん皮膚硬化型SScと関連する抗U3-RNP抗体があります。 抗Th/To抗体は重度の間質性肺炎と肺高血圧を発症するリスクが高く、 抗U3-RNP抗体は間質性肺炎・肺高血圧・腎クリーゼなど内臓病変の発症頻度が高く予後不良とされています。

抗PM/Scl抗体は主にオーバーラップ症候群で認められますが、 日本人で陽性になることは非常にまれです⁵⁾。

解説医師

【リウマチ・膠原病のQA】全身性強皮症疑いで測定すべき抗体と関連病変は?

出典

¹⁾ Nat Rev Dis Primers. 2015 Apr 23;1:15002.

²⁾ Ann Rheum Dis. 2013 Nov;72(11):1747-55.

³⁾ Arthritis Rheumatol. 2015 Apr;67(4):1053-61

⁴⁾ Proc Natl Acad Sci U S A. 2016 Nov 22;113(47):E7526-E7534.

⁵⁾ Arthritis Res Ther. 2015 Mar 11;17(1):57.

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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