HOKUTO編集部
1ヶ月前
本連載では、 2022年10月に発刊された『がん薬物療法時の腎障害ガイドライン2022』の要点を解説する。 第2回となる今回は、 臨床医が特に押さえておくべきクリニカル・クエスチョン (CQ) の推奨・提案について概説する (解説 : 愛知県がんセンター 呼吸器内科部長/ガイドライン作成委員 藤原豊氏)。
GFRの直接測定方法はイヌリンのほか、 51Cr-EDTAなどを用いたクリアランス測定があるが、 煩雑な手順により日常のがん診療で行えるものではない。 このためGFRの代用としてクレアチニンクリアランス (CCr) やGFR推定式による腎機能評価が用いられてきた。 CCr測定法は蓄尿法のほか、 Cockcroft-Gault式が普及している。
GFR推定式としては国際的にはMDRD式、 CKD-EPI式が、 日本では日本腎臓病学会のGFR推定式が普及している。 なお、 Cockcroft-Gault式ではCCr(mL/min)実測値が、 GFR推定式ではGFR (mL/min/1.73m²)と体表面積補正された値が算出されることに注意が必要である。
日本ではAKI疑いで測定可能な新規バイオマーカーとして、 尿中L-FABP、 尿中NGALがそれぞれ保険収載されているが、 臨床的有益性はそれほど高くない。
シスプラチンは、 投与後90%以上が血漿蛋白と共有結合し、 尿中累積回収率は投与終了5日目でも30%程度であり、 多くは体内に残存している。 透析で除去されるシスプラチンは基本的に血漿蛋白に結合していない遊離型のため、 透析後は蛋白結合型シスプラチンから遊離が起こり、 遊離型シスプラチンの血中濃度は再上昇(リバウンド) する。
末期腎不全で透析療法を受けている患者の場合、 シスプラチンによる腎障害は問題にならなくても、 骨髄抑制、 消化器毒性、 神経毒性などには注意が必要であり、 全量(100%)で投与している報告もある一方、 50~75%程度まで減量している報告も多い。
透析患者における細胞傷害性抗がん薬投与の用量調節、 タイミングに関する提案によると、 シスプラチンは同日透析の後、 または透析のない日に投与することが勧められている¹⁾。
シスプラチンによる腎毒性を回避するためさまざまな投与方法がこれまで検討され、 動物モデルにおいて①シスプラチン投与前後に大量補液(計2.5~5L、 10時間以上)を行う、 ②強制利尿を行う――の2点により急性腎障害を回避できるという提案がされてきた。
一方で、 シスプラチンによる近位尿細管障害などによるマグネシウム(Mg)の不適切な分泌や低Mg血症が、 広範な腎障害を惹起するとの動物モデルもある。 腎障害予防を目的とした小規模無作為化試験において、 シスプラチン投与時のMg投与により腎障害が軽減した。 Mg併用と強制利尿により補液用量、 補液時間を減らした方法として、 シスプラチンショートハイドレーション法が実臨床で頻用されている。
本解説は、 腫瘍内科医の視点で日本腎臓学会・日本癌治療学会・日本臨床腫瘍学会・日本腎臓病薬物療法学会編 「がん薬物治療時の腎障害診療ガイドライン2022」 (ライフサイエンス出版) から抜粋、 加筆し、 その要点を解説したものです。
がん専門病院として肺癌および胸部悪性腫瘍の標準的診療および治験など治療開発を行っているほか、 若い先生の研修および教育支援も行っています。
薬物療法部など他診療科でのフレキシブルな研修により、 消化器悪性腫瘍、 乳がん含む各種固形がん、 肉腫の内科的治療を学ぶことも可能です。 各個人に合わせた研修後のキャリアサポートも相談可能です。
興味のある先⽣はぜひ、 E-mail: y.fujiwara@aichi-cc.jpまでご連絡ください。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。