リンパ節転移陽性乳癌の術後療法において、 2つのレジメン (EC療法:エピルビシン+シクロホスファミドとフルオロウラシルを追加したFEC療法) と投与間隔 (2週毎と3週毎) の2x2で検討した第Ⅲ相ランダム化比較試験GIM2の結果より、 フルオロウラシルの追加による臨床転帰の改善は示されず、 2週毎レジメンの無病生存期 (DFS) に対する有効性が示された。
原著論文
▼中間解析結果
Fluorouracil and dose-dense chemotherapy in adjuvant treatment of patients with early-stage breast cancer: an open-label, 2 × 2 factorial, randomised phase 3 trial. Lancet. 2015 May 9;385(9980):1863-72. PMID: 25740286
▼追加報告
Fluorouracil and dose-dense adjuvant chemotherapy in patients with early-stage breast cancer (GIM2): end-of-study results from a randomised, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2022 Dec;23(12):1571-1582. PMID: 36370716
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GIM試験の概要
対象
18-70歳のリンパ節転移陽性乳癌の術後患者
方法
2,091例を以下の2群に1:1:1:1で割り付けた。
フルオロウラシル600mg/m²、 エピルビシン90mg/m²、 シクロホスファミド600mg/m²をday1に投与し、 2週毎に4サイクル実施。 その後、 PTX175mg/m²を2週毎に4回投与
エピルビシン90mg/m²、 シクロホスファミド600mg/m²をday1に投与、 2週毎に4サイクル実施。 その後、 PTX175mg/m²を2週毎に4回投与
q3FEC-P群と同じ用量の薬剤を全て3週毎に投与
q2EC-P群と同じ用量の薬剤を全て3週毎に投与
q2群には、 化学療法24時間後にペグフィルグラスチム6mgの皮下投与が行われた。 しかし早期の白血球増加が見られたため、 2004年3月の修正により、 化学療法72時間後の投与に変更された。
評価項目
- 主要評価項目:DFS
- 副次評価項目:全生存期間 (OS) 、 安全性
GIM試験の結果
患者背景
- 4群間で同様であった。
- 年齢中央値は51-53歳、 閉経前患者は45-53%、 HER2陽性患者は21-24%、 ホルモン受容体陽性患者は77-81%
- 計画された化学療法のサイクル数を完了したのは、 q3EC-P群87%、 q3FEC-P群89%、 q2EC-P群90%、 q2FEC-P群88%。
- レジメンの比較ではEC-P群1047例とFEC-P群1044例が、 治療間隔の比較ではq3群1001例とq2群1002例が解析に組み入れられた。
追跡期間中央値
15.1年
DFS中央値
レジメンによる比較
(95%CI 15.51ヵ月-NR)
(95%CI 17.54ヵ月-NR)
HR 1.12 (95%CI 0.98-1.29)、 p=0.11
治療間隔による比較
(95%CI 17.45ヵ月-NR)
(95%CI 14.24-17.54ヵ月)
HR 0.77 (95%CI 0.67-0.89)、 p=0.0004
DFS率 (5年時、 15年時)
レジメンによる比較
- FEC-P群:78%、 55.4%
- EC-P群:79%、 59.4%
治療間隔による比較
- q2群:81%、 61.1%
- q3群:76%、 52.5%
5年時:p=0.004
ホルモン受容体の状態は影響を及ぼさないことが示された。
OS中央値
レジメンによる比較
FEC-P群、 EC-P群ともに未到達
HR 1.13 (95%CI 0.94-1.36)、 p=0.18
治療間隔による比較
q2群、 q3群ともに未到達
HR 0.72 (95%CI 0.60-0.86)、 p=0.0004
ホルモン受容体の状態は影響を及ぼさないことが示された。
OS率 (5年時)
レジメンによる比較
p=0.234
治療間隔による比較
p=0.001
有害事象 (AE)
- Grade3-4の有害事象で多く見られたのは、 好中球減少症 (q2FEC-P群20%、 q2EC-P群10%、 q3FEC-P群48%、 q3EC-P群37%) および脱毛症 (それぞれ48%、 46%、 47%、 44%) であった。
- q3群と比較しq2群で多く見られたのは、 Grade3-4の貧血 (1.4%vs0.2%、 p=0.002) 、 トランスアミナーゼ上昇 (1.9%vs0.4%、 p=0.001) 、 筋肉痛 (3.1%vs1.6%、 p=0.019) であった。 好中球減少症はq2群の方が少なかった (14.9%vs44.0%、 p<0.0001) 。
- 投与量の減量が必要であった患者は、 q2FEC-P群で4%、 q2EC-P群で4%、 q3FEC-P群で3%、 q3EC-P群で3%であった。
- Grade3以上の毒性で治療を中止した患者は、 q2FEC-P群で5%、 q2EC-P群で5%、 q3FEC-P群で5%、 q3EC-P群で4%であった。
著者らの結論
リンパ節転移陽性の乳癌患者の術後療法において、 2q群は、 3q群と比較してDFSを延長させることが示された。 EC-Pレジメンへフルオロウラシルを追加することは、 臨床転帰の改善とは関連しないことも示された。