海外ジャーナルクラブ
2年前
Zhouらは、 FDA Adverse Event Reporting System (FAERS) データベースに登録された情報を基に、 免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) 関連の精神科的有害事象(pAE)とその生物学的メカニズムについて探索的研究で検討。 その結果、 2012年1月~21年12月に報告されたpAEは2.71%であり、 21.54%が致命的な転帰をとっていたことが明らかとなった。 本研究はEClinicalMedicineにおいて発表された。
このEClinical MedicineはLancet familyの雑誌のようです。 今回のように元のデータセットにselection biasなどのバイアスが強い場合には無理して仮説研究とせず、 本研究のように図を多用して視覚的わかりやすい探索的研究が良いです。
ICIの使用が増える中で、 免疫関連有害事象 (irAE) は重要な課題となっており、pAEはその一部である。
FDA Adverse Event Reporting System (FAERS) データベースに登録された2012年1月~2021年12月のICI有害事象報告。
FAERSデータベースを用いてICI使用者とその他の薬剤使用者を比較し、 報告オッズ比 (ROR) を基づいて、 ICIとの関係が強力なpAEを探索。
癌ゲノムアトラス (TCGA) の汎がんトランスクリプトームデータを調査し、 ICIに関連するpAEについての潜在的な生物学的メカニズムを探索。
FAERSデータベースにおけるICI有害事象報告全体のうち、 pAEの報告は2.71%を占めた。
ICIとの強い関連が示唆された5つの症状についてICI関連精神科有害事象 (pAE) と定義した。
pAEが報告された年齢中央値は70歳 (IQR 24-95歳) であり、 21.54%の報告が致命的な転帰をとっていた。
pAE発症者のICIの適応症は肺癌、 皮膚癌、 腎癌が過半数を占めた。
pAEは高齢者に多く、 65歳未満の患者と比較した65~74歳のオッズ比は1.44 (95%CI 1.22-1.70、 P<0.0001)、 75歳以上のオッズ比は1.84 (95%CI 1.54-2.20、 P<0.0001であった。
pAEの発生は、 NOTCH信号伝達や、 シナプス関連経路の調節障害に関連している可能性が示唆された。
ICI治療と精神科有害事象の関連性、 影響因子、 潜在的な生物学的メカニズムを明らかにし、 さらなる研究の基礎を提供した。 しかし、 本研究は探索的であり、 大規模な前向き研究で確認する必要がある。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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