HOKUTO編集部
10日前
2020年代に入り、 免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) やチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) の進展により、 泌尿器癌領域の薬物療法は大きく変化しました。 本稿では、 がん研有明病院 総合腫瘍科の仲野兼司先生による人気連載『がん薬物療法注目論文レビュー』をもとに、 主要トピックを簡潔にまとめています。
EV+ペムブロリズマブ (EV-302試験)
GC+ニボルマブ (CheckMate 901試験)
両治療ともに全生存期間 (OS) の延長効果が認められました。特にEV + ペムブロリズマブ療法は無増悪生存期間 (PFS) のHR 0.45、 OSのHR 0.47という大きな予後改善を示しました。
エルダフィチニブ (THOR試験)
尿路上皮癌では約20%にFGFR3異常 (遺伝子変異または融合遺伝子陽性) が含まれます。 FGFR阻害薬エルダフィチニブが第Ⅲ相試験THORで、 殺細胞性抗腫瘍薬を対照群に置いたコホートにおいて、OSを有意に延長しました。この結果を受け、2024年12月にエルダフィチニブが日本で承認されました。
ddMVAC (VESPER試験)
デュルバルマブ+GC (NIAGARA試験)
いずれのレジメンも、 GC療法との比較においてOSの改善が報告されています。
トラスツズマブ デルクステカン (DESTINY-PanTumor02試験)
HER2過剰発現は尿路上皮癌の約50%に認められるとも言われ、HER2標的ADC (抗体薬物複合体) の開発が進んでいます。
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ペムブロリズマブ+レンバチニブ (CLEAR試験)
最終解析で、 OS中央値が57.3ヵ月であることが示されました。
ベルズチファン (LITESPARK-005試験)
ICIの再投与ではOSの改善が認められないことが示される中、 後方ラインにおける新たな治療選択肢として、 VHL遺伝子の機能不全により活性化されるHIF-2αを標的とする、 HIF-2α阻害薬ベルズチファンが注目されています。 日本でも2024年7月にベルズチファンの承認申請が行われています。
術後ペムブロリズマブ (KEYNOTE-564試験)
KEYNOTE-564試験の最終解析では、 ペムブロリズマブが無病生存期間に加えてOSも延長することが示されました。
ベルズチファン+カボザンチニブ (LITESPARK-003試験)
ベルズチファンは単剤だけでなく、 既存のTKIやICIとの併用療法についても臨床試験が進められています。
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ADT+ドセタキセル+アビラテロン (PEACE-1試験)
ADT+ドセタキセル+ダロルタミド (ARASENS試験)
日本では、 2023年2月にADT+ドセタキセル+ダロルタミドが保険承認されました。
オラパリブ (PROfound試験)
タラゾパリブ+エンザルタミド (TALAPRO-2試験)
PARP阻害薬を使用するには、 BRCA遺伝子変異の検出が必要となります。 癌遺伝子パネル検査は、 BRCA遺伝子変異検出のコンパニオン診断薬 (CDx) として承認されていますが、 原則として標準治療終了後に包括的癌ゲノムプロファイリング (CGP) 検査として実施されます。 そのため、 ホルモン感受性の段階でCDxとしてパネル検査を行うことは難しく、 標準治療の早い段階でCGP検査を実施することが重要です。
Lu-177-PSMA-617 (VISION試験)
Lu-177-PSMA-617は、 放射性同位元素を利用した内部照射療法であり、 実施可能な施設が限られます。 日本では既に神経内分泌腫瘍に対するペプチド受容体放射性核種療法が承認されていますが、 前立腺癌は対象患者が多く、 十分な医療提供体制の整備が課題です。
Xaluritamig : STEAP-1を標的とするT細胞エンゲージャー
前立腺癌では、 これまでICIの有効性は示されていませんが、 新たな癌免疫療法の開発が進められています。
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📝 アンケート企画の結果と解説
📝 関連レジメン
専門 : 腫瘍内科 (骨軟部腫瘍、 頭頸部腫瘍、 原発不明癌、 希少がん、 その他がん薬物療法全般)
一言 : がん薬物療法に関する論文を中心に、 勉強した内容を記事にしています。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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