HOKUTO編集部
3ヶ月前
本邦の進行非扁平上皮非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者を対象に、 バイオマーカー検査の選択がドライバー遺伝子の検出率および臨床転帰に及ぼす影響を評価した後ろ向き多施設共同コホート研究において、 シングルプレックス検査はマルチプレックス検査と比較してEGFR遺伝子変異検出率が高く、 全生存期間 (OS) の有意な延長を示した。 京都府立医科大学の石田真樹氏が発表した。
進行NSCLC患者のドライバー遺伝子を検出するバイオマーカー検査は、 シングルプレックス検査とマルチプレックス検査に大別される。
包括的なドライバー遺伝子の評価としてマルチプレックス検査が推奨されているが、 バイオマーカー検査の選択がドライバー遺伝子の検出率および臨床転帰に及ぼす影響は不明であり、 過去の報告によるとマルチプレックス検査は患者の半数以上で実施されていなかった¹⁾。
2019年6月-22年12月に日本の12施設でバイオマーカー検査を受けた、 化学療法歴がある進行非扁平上皮NSCLC患者934例を対象に、 バイオマーカー検査の選択がドライバー遺伝子の検出率および臨床転帰に及ぼす影響を後ろ向き多施設共同コホート研究で検討した。
受けたバイオマーカー検査の種類別の患者数は以下のとおり。
主な評価項目は以下の3点であった。
シングルプレックス群はマルチプレックス群と比べて全身状態 (ECOG PS) が良好な傾向がみられた (ECOG PS0-1の割合 : 94.1% vs 90.1%)。
一方で、 ドライバー遺伝子の検出率や分子標的治療を受けた患者割合などは両群間で差が認められなかった。
EGFR変異の検出率およびEGFRチロシンキナーゼ阻害薬 (EGFR-TKI) 投与患者の割合は、 いずれも、 シングルプレックス群がマルチプレックス群と比べて有意に高かった (それぞれ39.5% vs 31.5%、 p=0.01、 36.6% vs 28.8%、 p=0.02)。
シングルプレックス検査はマルチプレックス検査と比べ最小検出感度 (limit of detection : LOD) が低く (感度が高く) ²⁾³⁾、 上記のEGFR変異検出率の差は、 このLOD、 および検出範囲の違いによるものと考えられる。
EGFR変異陽性患者では、 免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) による臨床効果が低い傾向にある⁴⁾が、 マルチプレックス検査でEGFR変異が検出できず、 結果としてICIによる治療を選択し、 予後不良に繋がるリスクが想定される。
対象934例のOS中央値は30.0ヵ月 (95%CI 27.2-35.4ヵ月) であった。
バイオマーカーの種類別のOS中央値は、 シングルプレックス群が33.3ヵ月 (95%CI 28.6-44.8ヵ月) で、 マルチプレックス群の27.2ヵ月 (95%CI 22.9-37.6ヵ月) と比べて有意な延長を示した (log-rank p=0.02)。
1次治療でICIを含む治療を受けた患者においても同様の傾向がみられた (29.8ヵ月 vs 21.2ヵ月、 log-rank p=0.04)。
さらに、 ECOG-PSやPD-L1発現率などの交絡因子を多変量解析で調整しても、 シングルプレックス検査はOS延長の独立した予測因子であることが示された。
石田氏は 「シングルプレックス検査は、 マルチプレックス検査よりもEGFR変異の検出率が高く、 OSを有意に延長した。 シングルプレックス検査によるドライバー癌遺伝子の評価の臨床的意義を考慮すべきである」 と報告した。
日本臨床腫瘍学会に入会を希望される方は、下記より入会手順をご確認の上、手続きをお進めください。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。