【INNOVATION】HER2+胃癌、 周術期のトラスツズマブ併用でPFS・OSは改善せず?
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HOKUTO編集部

17日前

【INNOVATION】HER2+胃癌、 周術期のトラスツズマブ併用でPFS・OSは改善せず?

【INNOVATION】HER2+胃癌、 周術期のトラスツズマブ併用でPFS・OSは改善せず?
切除可能なHER2陽性胃・食道胃接合部癌に対する化学療法 (CT)+抗HER2抗体トラスツズマブ、 またはCT+トラスツズマブ+抗HER2抗体ペルツズマブ併用の有効性について、 CT単独を対照に検証した第Ⅱ相無作為化比較試験EORTC-1203 GITC (INNOVATION) の結果より、 トラスツズマブを上乗せしてもPFSとOSは改善しない可能性が示唆された。 またトラスツズマブ+ペルツズマブの上乗せは、 毒性が強く効果も乏しいことが示された。 スイス・Lausanne University Hospital and University of LausanneのAnna Dorothea Wagner氏が発表した。 

背景

HER2陽性胃癌への抗HER2療法の有効性は不明

HER2陽性乳癌において、 術前の抗HER2療法は有効性を示すと考えられているが、 HER2陽性胃癌においては、 その有効性は明確ではない。

試験の概要

対象は切除可能なHER-2陽性胃・食道胃接合部癌

UICC TNM分類でStageIb-Ⅲの切除可能なHER2陽性胃・食道胃接合部癌が対象とされた。

トラスツズマブorトラスツズマブ+ペルツズマブ上乗せを検証

対象の172例が以下の3群に1 : 2 : 2で無作為に割り付けられ、 術前・術後に下記治療が実施された。

  • 化学療法 (CT) 群 : 35例
2015年の試験開始時はシスプラチン+カペシタビン (アジアでは5-FU) レジメンを使用。 2019年以降は欧州の施設では5-FU+ロイコボリン+オキサリプラチン+ドセタキセル (FLOT) レジメンに変更され、 FLOT不適の患者はフルオロウラシル+レボホリナート+オキサリプラチン (mFOLFOX6) もしくはカペシタビン+オキサリプラチン (CapOx) レジメンを使用。
  • CT+T群 : 67例
化学療法+トラスツズマブ 1回目8mg/kg、 2回目以降6mg/kgを3週毎に投与。 術後療法終了後もトラスツズマブは計17サイクル継続。
  • CT+T+P群 : 70例
化学療法+トラスツズマブ+ペルツズマブ840mgを3週毎に投与。 術後療法終了後もトラスツズマブとペルツズマブは計17サイクル継続。

PFSとOSの解析結果が新たに報告

同試験の主要評価項目である病理学的奏効率 (mpR率) については、 2023年の米国臨床腫瘍学会 (ASCO 2023) で既に報告されている¹⁾。

中央判定によるmpR率は、 CT群23.3%、 CT+T群37.0%、 CT+T+P群26.4%だった。 またCTレジメン変更前のmpR率はそれぞれ12.5%、 16.7%、 8.3%であるのに対し、 CTレジメン変更後のmpR率は37.9%、 53.3%、 33.3%と、 トラスツズマブ投与によるmpR率の改善が認められていた。

今回は副次評価項目である追跡期間中央値4.5年の無増悪生存期間 (PFS) と全生存期間 (OS) が報告された。

試験の結果

患者背景は3群で概ね一致

年齢中央値、 性別、 腫瘍部位、 組織型などの患者背景は3群間で概ねバランスが取れていた。 HER-2 IHC 3+はCT群87.9%、 CT+T群75.0%、 CT+T+P群75.0%だった。

化学療法レジメン変更後はPFS改善せず

全体におけるPFS中央値は、 CT群が未到達 (NR)、 CT+T群がNR、 CT+T+P群が3.32年 (95%CI 1.56年-NE) であり、 3年PFS率はそれぞれ63.6% (95%CI 45.0-77.5%)、 64.7% (同 51.5-75.2%)、 52.0% (同 38.8-63.8%) だった。

またCT+T群のCT群に対するハザード比 (HR) は、 0.84 (同 0.43-1.63) であり、 トラスツズマブ上乗せによる良好な傾向が認められた。 一方、 CT+T+P群のCT群に対するHRは1.32 (同 0.70-2.49) であり、 トラスツズマブ+ペルツズマブを上乗せする効果は認められなかった。

さらに、 同試験ではCTレジメンが途中で変更されたが、 CTレジメン変更前の3年PFS率については、 CT群 (57.1%) と比較したHRは、 CT+T群 (64.2%) が0.64、 CT+T+P群 (50.4%) が1.18とCT+T群で良好な結果だったのに対し、 CTレジメン変更後のHRはCT+T群 (65%) が1.04、 CT+T+P群 (53.3%) が1.45と、 CT+T群vsCT群間の差は見られなくなった。

OSもPFSと同様の結果

全体におけるOS中央値は3群ともNRであり、 3年OS率はCT群75.6% (95%CI 57.1-87.0%)、 CT+T群76.9% (同 64.1-85.6%)、 CT+T+P群65.2% (同 51.3-76.1%) で、 CT群と比較したHRは、 CT+T群で0.89 (同 0.42-1.88)、 CT+T+P群で1.29 (同 0.62-2.66) だった。

一方、 CTレジメン変更前の3年OS率において、 CT群と他の2群を比較したHRは、 CT+T群0.77、 CT+T+P群1.28と、 PFSと同様にCT+T群で良好な結果だったものの、 CTレジメン変更後のHRはCT+T群0.99、 CT+T+P群1.30と、 CT+T群の優越性は見られなくなった。

mpR率の有無によるPFSとOS評価では、 mpRが得られた患者は得られなかった患者と比較し、 PFS・OSともに有意にな改善を示した (PFSのHR 0.26、 p=0.0008 / OSのHR 0.25、 p=0.0041)。

トラスツズマブ+ペルツズマブ併用群で毒性が増加

有害事象発現率 (Grade3/4) は、 CT群 (44.1% / 11.8%)、 CT+T群 (43.9% / 22.7%) に比べ、 CT+T+P群 ( 65.2% / 13.0%) でやや高い傾向にあった。

好中球減少症は、 それぞれ32.4% / 2.9%、 21.2% / 10.6%、 CT+T+P群 21.7% / 5.8%で認められた。

結論

トラスツズマブ上乗せでPFS・OSは改善せず

Wagner氏は 「切除可能なHER2陽性胃・食道胃接合部癌に対し、 レジメン変更後の化学療法にトラスツズマブを追加してもPFSとOSは改善しなかった。 また化学療法+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法は、 毒性が強く効果も乏しかった。 mpR率が高いことを考慮すると、 根治手術のために腫瘍縮小が必要な場合はトラスツズマブ上乗せが検討される」 と報告した。

出典

¹⁾ J Clin Oncol. 2023;41(67_suppl) : 4057.

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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