オシメルチニブを含むEGFR阻害薬に抵抗性でEGFR遺伝子変異陽性の転移性IV期非扁平上皮非小細胞肺がん (NSCLC) に対し、 ペメトレキセド (PEM)+プラチナ製剤 (Chemo) 併用療法への抗PD-1抗体ペムブロリズマブ上乗せ効果をPEM+Chemo単独を対照に検証した二重盲検第III相ランダム化比較試験KEYNOTE-789の最終解析結果から、 無増悪生存期間 (PFS) および全生存期間 (OS) の有意な延長は認められなかった。
2023年6月2~6日に開催された米国臨床腫瘍学会 (ASCO 2023) において、 台湾・National Taiwan University Hospital and National Taiwan University Cancer CenterのJames Chih-Hsin Yang氏が発表した。
KEYNOTE-789試験の概要 対象 EGFR遺伝子変異陽性で遠隔転移を有するIV期非扁平上皮NSCLCで、 EGFR阻害薬による治療後に病勢進行(PD) を認めた患者。 前治療としては、 以下の症例が対象とされた。 T790M遺伝子変異が陰性で第一・二世代EGFR阻害薬による治療後にPD T790M遺伝子変異が陽性で第一・二世代EGFR阻害薬による治療後、 さらにオシメルチニブを投与後PD T790M遺伝子変異陽性の有無にかかわらず一次治療としてオシメルチニブを投与後にPD 方法 対象を1:1で以下の2つの群に割り付け
ペムブロリズマブ+プラチナ製剤 (カルボプラチンまたはシスプラチン)+PEM併用療法:245例 (ペムブロリズマブ併用群) ペムブロリズマブ200mg+PEM 500mg/m²+プラチナ製剤(カルボプラチンAUC 5またはシスプラチン75mg/m²) を3週ごとに4サイクル投与後、 ペムブロリズマブ (最大31サイクル) +PEM(サイクル数の上限なし)を3週ごとに投与。 プラチナ製剤+ペメトレキセド併用療法:247例 (化学療法単独群) ペムブロリズマブに代わりプラセボを投与 化学療法単独群でPDを認めた場合には、 クロスオーバーが認められ、 ペムブロリズマブが最大35サイクル投与された。 評価項目 主要評価項目:盲検独立中央判定 (BICR) によるRECIST v1.1基準に基づくPFSおよびOS 副次評価項目:BICRによるRECIST v1.1基準に基づく全奏効率 (ORR) および奏効期間 (DOR)、 安全性、 患者報告アウトカム (PROs) KEYNOTE-789試験の結果 今回は事前に規定されたOSの最終解析結果が報告された。
患者背景 両群で同様だった。
年齢中央値62~64歳。 女性61.1~62.0%。 アジア人は60.7~61.2%。 PD-L1 TPS≧50%は20.6~21.2%。 T790M遺伝子変異陽性:35.2~38.8%。
PFS ランダム化からデータカットオフ (2021年12月3日) までの期間の中央値は28.6カ月。 PFS中央値(95%CI)
ペムブロリズマブ併用群:5.6カ月 (5.5-5.8カ月) 化学療法単独群:5.5カ月 (5.4-5.6カ月) HR 0.80、 95%CI 0.65-0.97、 P=0.0122 (有意水準に到達せず)
事前に設定された境界値は片側P=0.0117 OS ランダム化からデータカットオフ(2023年1月17日)までの期間の中央値は42.0カ月。 OS中央値(95%CI)
ペムブロリズマブ併用群:15.9カ月(13.7-18.8カ月) 化学療法単独群:14.7カ月(12.7-17.1カ月) HR 0.84、 95%CI 0.69-1.02、 P=0.0362 (有意水準に到達せず)
事前に設定された境界値は片側P=0.0117 OS率(1年時、 2年時、 3年時)
ペムブロリズマブ併用群:61.6%、 30.6%、 14.6% 化学療法単独群:59.4%、 26.4%、 11.4% OSのサブグループ解析 PD-L1の発現状況別にみたOSのHRにおいても、 両群に差を認めなかった。
TPS≧50%:HR 0.84、 95%CI 0.55-1.30 TPS 1~49%:HR 0.85、 95%CI 0.69-1.05 TPS<1%:HR 0.91、 95%CI 0.70-1.19 ORR(95%CI) ペムブロリズマブ併用群:29.0% (23.4-35.1%) 化学療法単独群:27.1% (21.7-33.1%) DOR(95%CI) ペムブロリズマブ併用群:6.3カ月 (2.3-40.8+カ月) 化学療法単独群:5.6カ月 (1.8+-40.6+カ月) 有害事象(AE) グレード3以上の治療関連AEと、 免疫関連AEおよびインフュージョン・リアクションの発現は以下の通り。
ペムブロリズマブ併用群:43.7%、 4.5% 化学療法単独群:38.6%、 2.0% Yang氏らの結論 EGFR阻害薬に治療抵抗性でEGFR遺伝子変異陽性の進行非扁平上皮NSCLCに対し、 化学療法に抗PD-1抗体を併用してもOSおよびPFSに対する有益性は認められなかった。