【医療用麻薬】よく分かる!中等度~高度の強さの痛みに使用するオピオイドの特徴
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HOKUTO編集部

5ヶ月前

【医療用麻薬】よく分かる!中等度~高度の強さの痛みに使用するオピオイドの特徴

【医療用麻薬】よく分かる!中等度~高度の強さの痛みに使用するオピオイドの特徴
本項では、 中等度~高度の強さの痛みに用いられるオピオイド鎮痛薬の種類と使用方法について、 厚生労働省の 「医療用麻薬適正使用ガイダンス」¹⁾や添付文書を基に、 HOKUTO編集部協力薬剤師のコメントとともに概説する。
出典 : 厚生労働省 : 医療用麻薬適正使用ガイダンス (令和6年)
【医療用麻薬】よく分かる!中等度~高度の強さの痛みに使用するオピオイドの特徴

>>軽度~中等度の痛みに使用する医療用麻薬

>> メサドン

モルヒネ

【医療用麻薬】よく分かる!中等度~高度の強さの痛みに使用するオピオイドの特徴

特徴

経口剤、 注射剤、 坐剤がある。

経口剤は錠剤、 散剤、 カプセル剤、 液剤など製剤が豊富。 また、 細粒徐放製剤は経管投与が可能である。

経口剤の投与方法

速放製剤と徐放製剤がある。

定時投与薬

開始量 : 1日20~30mg

維持量 : 1日120mg以上になる場合がある

投与量の増減 : 30~50%の範囲で調節

投与間隔 : 速放製剤は4時間ごと、 徐放製剤は12時間または24時間ごと

レスキュー薬

速放製剤が用いられる。 最短投与間隔は1時間程度とされることが多い。

注射剤の投与方法

持続皮下注射または持続静脈内注射で投与する。

定時投与薬

開始量の目安 : 1日5~10mg

経口投与から変更する場合は、 経口での1日投与量の1/2~1/3を目安とする。

レスキュー薬

1回量 : 1日量の1/24~1/12を目安に早送りする

坐剤の投与方法

定時投与薬

1回量の目安 : 経口での1日投与量の1/2~2/3 

投与間隔 : 8時間ごと、 3回に分ける

低用量での投与が必要な場合は、 坐剤の半量投与 (1/2個の分割投与) も可能である。 また、 レスキュー薬としても使用可能。

注意点

腎機能の確認

腎機能障害のある患者では、 活性代謝物であるモルヒネ-6-グルクロニドが蓄積するため鎮静や呼吸抑制などの副作用が生じやすくなることに注意する。

経過中に腎機能低下が生じた場合にも注意が必要である。

服用方法

徐放製剤は、 噛んだり、 割ったり、 砕いたり、 溶解して服用してはならない。

オキシコドン

【医療用麻薬】よく分かる!中等度~高度の強さの痛みに使用するオピオイドの特徴

特徴

経口剤と注射剤がある。

経口剤には、 乱用目的で注射することを防止するため、 粉砕できない製剤やオピオイド拮抗薬であるナロキソンを添加した製剤がある。

経口剤の投与方法

速放製剤と徐放製剤がある。

定時投与薬

開始量 : 1日10~20mg

維持量 : 1日80mg以上になる場合がある

投与間隔 : 速放製剤は4~6時間ごと、 徐放製剤は12時間ごと

レスキュー薬

速放製剤が用いられる。 最短投与間隔は1時間程度とされることが多い。

注射剤の投与方法

持続皮下注射または持続静脈内注射で投与する。

定時投与薬

開始量 : 目安は1日10mg

経口投与から変更する場合は、 経口での1日投与量の3/4量を目安にする。

レスキュー薬

1回量 : 1日量の1/24~1/12を目安に早送りする。

注意点

腎機能の確認

高度の腎機能障害患者では、 オキシコドンの血中濃度が上昇することがある。

尿中未変化体排泄率は小さく腎障害患者に使用することは可能だが、 CCr<30mL/minの場合はより慎重に投与する。

CYP3A4を介した薬物相互作用

CYP3A4阻害作用のある薬剤*を併用すると、 オキシコドンの全身曝露量が増大し副作用が増強する可能性がある。

*アゾール系抗真菌薬、 マクロライド系抗菌薬など

CYP3A4誘導作用のある薬剤*を併用すると、オキシコドンの全身曝露量が減少し鎮痛効果が減弱する可能性がある。

*リファンピシン、 抗てんかん薬 (カルバマゼピンやフェニトイン) など

服用方法

徐放製剤は、 噛んだり、 割ったり、 砕いたり、 溶解して服用してはならない。

ヒドロモルフォン

特徴

経口剤 (速放製剤、 徐放製剤)、 注射剤がある。

バイオアベイラビリティが20%程度と低く個体差があるため、 投与経路変更時 (内服→注射、 注射→内服) は過量投与・過小投与となる可能性に留意する。

💡注射剤は、0.2% (2mg/1mL) と1% (20mg/2mL) の2種類があることに注意する。

経口剤の投与方法

速放製剤と徐放製剤がある。

定時投与薬

開始量 : 1日2~4mg

維持量 : 1日24mg以上になる場合がある

投与間隔 : 速放製剤は4~6時間ごと、 徐放製剤は24時間ごと(1日1回投与)。

レスキュー薬

速放製剤が用いられる。 最短投与間隔は1時間程度とされることが多い。

注射剤の投与方法

持続皮下注射または持続静脈内注射で投与する。

定時投与薬

開始量 : 目安は1日0.5~1mg。

経口投与から変更する場合は、 経口での1日投与量の1/5量を目安にする。

レスキュー薬

1回量 : 1日量の1/24~1/12を目安に早送りする。

注意点

剤形変更時の用量

注射剤から経口剤への変更時には、 患者ごとに経過を確認し、 必要に応じて用量調節する。

腎機能の確認

高度の腎機能障害患者では、 ヒドロモルフォンの代謝物が蓄積し神経毒性 (せん妄、 ミオクローヌスなど) が発現しやすくなる可能性がある。

服用方法

徐放製剤は、 噛んだり、 割ったり、 砕いたり、 溶解して服用してはならない。

タペンタドール

【医療用麻薬】よく分かる!中等度~高度の強さの痛みに使用するオピオイドの特徴
💡2025年2月に販売中止となったため、 2024年内のメーカー在庫消尽時より使用不可となる。 

特徴

錠剤 (徐放製剤) のみがある。乱用防止等を目的とした改変防止製剤であり、 砕く・すりつぶす、水で溶かす等ができない構造になっている。

投与方法

定時投与薬

開始量 : 1日50mg

維持量 : 1日400mgまで

投与間隔 : 12時間ごと (1日2回投与)

1日400mg以上の使用は、 他のオピオイド鎮痛薬から切り替える場合を含めて推奨されていない。 1日500mgを超える投与は、 治療の有益性が危険性を上回る場合に限る。

レスキュー薬

タペンタドールではなく、 モルヒネ、 オキシコドン、 ヒドロモルフォンの速放製剤が使われることが多い。

注意点

併用薬

セロトニン作動薬*¹等との併用は、 セロトニン症候群*²を生じる可能性があることに注意する。

*¹三環系抗うつ薬、 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI)、 セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 (SNRI)
*²不穏、 振戦・固縮、 自律神経症状など

服用方法

徐放製剤であり、 噛んだり、 割ったり、 砕いたり、 溶解して服用してはならない。

フェンタニル

特徴

貼付剤、 注射剤、 口腔粘膜吸収剤がある。

口腔粘膜吸収剤は、 突出痛治療のみに適応がある。

貼付剤の投与方法

1日製剤と3日製剤がある。

 

開始量 : フェンニル使用前に使用していたオピオイド鎮痛薬の用量を基準に選択*¹

増量間隔 : 原則として72時間以上

貼付部位 : 発汗や体の動きなどの影響を受けにくい部位を選択*²

貼付間隔 : 1日製剤は24時間ごと、 3日製剤は72時間ごとに貼り替え

*¹初めてオピオイド鎮痛薬を投与する場合は0.5mg製剤から開始
*²上腕部、 大腿部、 胸部、 腹部など

小児がん疼痛での貼付剤投与

フェントス®︎テープ (1日製剤) は、 小児がん疼痛患者 (2歳以上16歳未満) に適応がある。ただし、 他のオピオイド鎮痛薬から切り替える場合に限る。

切り替え前に使用していた薬剤の用法・用量を参考に、 下記いずれかの製剤から開始する。 その後は症状や状態により適宜増減する。

6歳以上 : 0.5mg、 1mg、 2mg、 4mg、 6mg

2歳以上6歳未満 : 0.5mg、 1mg、 2mg

注射剤の投与方法と注意点

持続皮下注射または持続静脈内注射で投与する。

定時投与薬

開始量 : 0.1~0.3mg/日

がんの痛みの治療のために、 初めてオピオイド鎮痛薬を投与する場合

レスキュー薬

1回量 : 1日量の1/24~1/12を目安に早送りする。

口腔粘膜吸収剤の投与方法

バッカル錠と舌下錠がある。バッカル錠は上顎臼歯の歯茎と頬の間で溶解させる。

通常レスキュー薬として使われている速放製剤よりもさらに効果発現が速く、 ROO (rapidonset opioids) 製剤と呼ばれる。

バッカル錠

開始量 : 50µgまたは100µg、 その後適宜調節

投与間隔 : 4時間以上

投与回数 : 1日は4回まで

舌下錠投与

開始量 : 100µg、 その後適宜調節

投与間隔 : 2時間以上

投与回数 : 1日4回まで

使用時の注意点

CYP3A4を介した薬物相互作用

CYP3A4阻害作用のある薬剤*を併用するとフェンタニルの全身曝露量が増大し副作用が増強する可能性がある。

*アゾール系抗真菌薬、 マクロライド系抗菌薬など

CYP3A4誘導作用のある薬剤*を併用するとフェンタニルの全身曝露量が減少し鎮痛効果が減弱する可能性がある。

*リファンピシン、 抗てんかん薬 (カルバマゼピンやフェニトイン) など

退薬症候

他のオピオイド鎮痛薬からフェンタニル貼付剤に切り替えた場合、 退薬症候*が発現することがある。 退薬症候は、 先行オピオイド鎮痛薬のレスキュー薬の使用で改善する。

*あくび、 悪心・嘔吐、 下痢、 不安、 振戦、 悪寒など

貼付剤の注意点

貼付時は十分に圧着する。

接着面が剥離すると皮膚からの薬剤吸収が低下し、 鎮痛効果が減弱することがある。

貼付部位を加温しない。

加温によって吸収が促進し血中濃度が急激に上昇するおそれがあるため、 熱い温度での入浴、 あんかや電気毛布の使用は避ける

貼付部位の保清を保つ。

発汗や皮膚の落屑 (アカ) の多い状態は吸収不良の一因となる。 浮腫部位や同一部位への繰り返し貼付も避けるとよい。

注射剤の注意点

貼付剤から注射剤へ変更する時は、 変更後の痛みの程度や副作用に十分注意する。

持続皮下注射では、 1時間あたりの薬液の用量が吸収可能な量 (≦1mL/時間) を超えないように注意する。

口腔粘膜吸収剤の注意点

原則として中等度~高度の強さの痛みに用いられるオピオイド鎮痛薬*が定時投与されており、 持続痛が適切に管理されている患者に用いる。

*バッカル錠は経口モルヒネ換算で30mg/日以上、 舌下錠は経口モルヒネ換算で60mg/日以上

👨‍⚕️ がん悪液質の場合、 筋肉量の低下から血清クレアチニンが低下し、 クレアチニンクリアランスが見かけ上良くなってしまうため注意が必要です。 また、 腹膜播種がある場合、 水腎症のリスクを考慮してモルヒネを選択しないことは一案です。 患者さんの臨床経過を俯瞰的に捉えて強オピオイドを選択しましょう。 

<出典>

1) 医療用麻薬適正使用ガイダンス (令和6年)

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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