HOKUTO編集部
18日前

治療の進歩により、 日常診療の中で、 複数の治療選択肢を提示できる場面が以前よりも増えてきました。 それは本来とても喜ばしい変化ですが、 提示の仕方によっては、 かえって患者を困らせてしまうこともあります。 「がん診療の羅針盤」 第28回は、 虎の門病院の山口雄先生に、 治療選択肢が複数ある際の具体的な説明方法について解説いただきます。

👨⚕️ 「治療法は3つあります。 効果はどれも同じですが、 Aは3週に1回の点滴で、 Bは毎週点滴、 Cは内服になります。 それぞれの副作用が詳しく書かれた資料がありますので、 よく読んで、 ご自身に合った治療を選んでくださいね」
上記は一見、 患者の自律性を尊重した丁寧な説明に聞こえます。 しかし、 これは裏を返せば 「私はどれでも良いですよ」 と、 患者に治療方針を"丸投げ"しているとも言えるのではないでしょうか。 多くの情報をそのまま手渡すことで、 命に関わる決断の重圧を患者さんに背負わせてしまっているかもしれません。
患者が本当に知りたい情報は、 治療選択肢の羅列ではなく、 「この状況で、 プロである先生はどれを勧めるのか?」 という点だと思います。 そのためには、 日頃から患者背景 (性格、 価値観、 仕事など) を理解することに努め、 それらを考慮したうえで、 専門家としてお勧めの治療を1つ示すことが重要です。 そして、 他の選択肢を比較として説明します。

このように軸を示してから比較を説明すると、 患者は初めて"選べる状態"になります。 もちろん、 話し合いの結果、 最終的にこちらが推奨した治療とは違う治療に決まることもあります。
💬腫瘍内科医のTips: 迷うときこそ正直に
当然、 私たちもどの治療法が良いか迷う場面はあります。 そのような時は 「私も五分五分で迷っているんです」 と正直に伝えてみましょう。 その"迷い"を共有し、 一緒に悩む姿勢そのものが、 患者との大切な関係づくりになります。
治療を提案することは、 患者の自由を奪うことではありません。 むしろ、 意思決定を楽にすることもあります。
👨⚕️ 「私の考えでは、 ◯◯さんにはこれが一番合っている治療だと思いますが、 どう思いますか?」
そんな一言を添えるだけでも、 判断しやすくなるかもしれません。

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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