HOKUTO編集部
2年前
今月 (2023年2月16~18日)、米・サンフランシスコで開催された 「米国臨床腫瘍学会泌尿器がんシンポジウム (ASCO GU 2023) 」 の注目演題をまとめました。 ぜひご利用下さい。
進行性または転移性の尿路上皮がんの一次治療において、 抗PD-L1抗体アテゾリズマブ単剤療法およびアテゾリズマブ+化学療法併用の有効性・安全性を化学療法単独を対照に検証した第Ⅲ相ランダム化比較試験IMvigor130の全生存期間 (OS) 最終解析の結果から、 アテゾリズマブは単剤、 併用療法のいずれにおいても、 OSの有意な延長は認められなかった。
米・Icahn School of Medicine at Mount Sinai/Tisch Cancer InstituteのMatt D. Galsky氏とギリシャNational and Kapodistrian University of AthensのAristotelis Bamias氏の両氏が、 米国臨床腫瘍学会泌尿器がんシンポジウム (2月16〜18日、 ASCO-GU 2023) で発表した。 ここでは2演題にわたる報告をまとめて紹介する。
同試験では、 局所進行性または転移性の尿路上皮がんで、 転移病変に対する治療歴がない患者が、 ①アテゾリズマブ+化学療法併用群 (アテゾリズマブ併用群) ②アテゾリズマブ単剤療法群③プラセボ+化学療法併用群 (化学療法群) ーに1:1:1でランダムに割り付けられた。 化学療法はゲムシタビンと担当医が選択するプラチナ製剤 (シスプラチンまたはカルボプラチン) が用いられた。
主要評価項目は2つあり、 ①intention-to-treat (ITT解析) 集団でのアテゾリズマブ併用群と化学療法群の比較における、 担当医評価による無増悪生存期間 (PFS) とOS②アテゾリズマブ単剤療法と化学療法群の比較におけるOS (ITT集団およびPD-L1 IC2/3の集団で階層的に評価) ーだった。
共主要評価項目は階層的に評価され、 1) ITT集団におけるアテゾリズマブ併用群 vs. 化学療法群のPFS、 2) ITT集団におけるアテゾリズマブ併用群 vs. 化学療法群のOS、 3) ITT集団におけるアテゾリズマブ単剤群 vs. 化学療法群のOS、 4) PD-L1 IC2/3集団におけるアテゾリズマブ単剤群 vs. 化学療法群のOSーの順に評価された。
アテゾリズマブ併用群 vs. 化学療法群のPFSについては、 有意な延長が報告された (*Lancet* 2020; 395: 1547-1557)。
アテゾリズマブ併用群 vs. 化学療法群の第1回および第2回のOSの中間解析においては、 OSの有意な延長は認められなかった。
OSの探索的解析においては、 アテゾリズマブ併用群については、 PD-L1の発現にかかわらず、 カルボプラチン投与例よりもシスプラチン投与例に比べてOSの改善傾向を認めた。 またアテゾリズマブ単剤群については、 PD-L1 IC2/3集団 (シスプラチンの不適格患者を含む) で、 OSの延長傾向を認めた。
今回は、 アテゾリズマブ併用群 (451例) vs. 化学療法群 (400例)、 アテゾリズマブ単剤群 vs. 化学療法群の比較におけるそれぞれのOSの最終解析結果が、 2つの演題で報告された。
データカットオフ日は2022年8月31日で、 追跡期間中央値は13.4カ月。 最後の患者が割り付けられてから49カ月時の最終解析だった。
ITT集団におけるOS中央値は、 アテゾリズマブ併用群で16.1カ月 (95%CI 14.2〜18.8カ月)、 化学療法群で13.4カ月 (同12.0〜15.3カ月) で、 ハザード比 (HR) は0.85 (95%CI 0.73〜1.00)、 P=0.023となり、 閾値のP値0.021を上回り有意差を認めなかった。 24カ月時、36カ月時のOS率は、アテゾリズマブ併用群で38%、26%、化学療法群で32%、22%だった。
化学療法について、 担当医が選択するプラチナ製剤のシスプラチンとカルボプラチンで分けてOSを解析した。 その結果、 既報の探索的解析結果と同様に、 シスプラチンを用いた治療グループではOS中央値が化学療法群の13.4カ月 (95%CI 11.7〜18.4カ月) に対し、 アテゾリズマブ併用群では21.5カ月 (同17.2〜25.4カ月) と良好だったものの、 両群に有意差は認められなかった (HR 0.76、 95%CI 0.57〜1.01)。 一方、 カルボプラチン治療グループでは、 OS中央値が化学療法群の13.4カ月 (95%CI 10.8〜15.6カ月) に対し、 アテゾリズマブ併用群では14.3カ月 (同12.0〜16.5カ月) だった (HR 0.89、 95%CI 0.74〜1.08)。
アテゾリズマブ併用療法における安全性で新たなものは認められなかった。
これらの最終解析のOS結果は、 第1回および第2回のOS中間解析の結果と一貫していた。
ITT集団におけるOS中央値は、 アテゾリズマブ単剤群で13.3カ月 (95%CI 11.9〜15.6カ月)、 化学療法群で15.2カ月 (同13.1〜17.7カ月) で、 HRは0.98 (95%CI 0.82〜1.16)となり、両群に差を認めなかった。
PD-L1の発現別 (IC2/3とIC0/1) に見たOS解析においても、 両群に差は認められなかった。 ただし、 PD-L1 IC2/3のグループにおいて、 OS中央値は化学療法群の16.7カ月 (95%CI 10.0〜26.1カ月) に対し、 アテゾリズマブ単剤群では27.5カ月 (同17.7〜49.4カ月) と延長傾向にあった (HR 0.70、 95%CI 0.48〜1.03)。
さらにシスプラチンの不適格患者 (93例) に限定して、 PD-L1の発現別にOSを解析した結果、 PD-L1 IC2/3のグループにおいては、 OS中央値は化学療法群の10.0カ月 (95%CI 7.4〜18.1カ月) に対し、 アテゾリズマブ単剤群では18.6カ月 (同14.0〜49.4カ月) だった (HR 0.56、 95%CI 0.34〜0.91)。
アテゾリズマブ単剤群における安全性の新たな懸念は認められなかった。
未治療mCRPCへのオラパリブ併用でOS中央値が42.1カ月に
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。