HOKUTO編集部
1ヶ月前
2025年3月27~31日に、 乳腺外科・腫瘍内科のHOKUTO医師会員を対象に 「ER弱陽性に対するKEYNOTE-522レジメンの適用について」 のアンケートを実施しました。 その結果、 117人 (乳腺外科 : 94人、 腫瘍内科 : 23人) から回答が得られました。 設問に対する回答は以下のような結果となりました。
全体で回答が多かったのは 「適用する」 で、 67%を占めました。
乳腺外科、 腫瘍内科のどちらも7割近くが 「適用する」 の回答でした。
人数が極端に少なかった20代を除き、 年代ごとの回答に大きな差はありませんでした。
非常に興味深い結果だと思います。 もともとKEYNOTE-522試験¹⁾²⁾では、 ER弱陽性 (1-9%) の症例は含まれておりませんでした。 したがって、 厳密には、 ER弱陽性乳癌はKEYNOTE-522レジメンの対象外ということになります。 しかし、 ER 1-9%の症例はトリプルネガティブ乳癌 (TNBC) として治療すべきという意見は世界的にも多く³⁾、 その扱いについてはいまだに議論があるところです。
KEYNOTE-756試験⁴⁾はER陽性HER2陰性乳癌を対象として行われた試験ですが、 全体集団でペムブロリズマブ上乗せによる病理学的完全奏効 (pCR) 率の改善は8.5%であったものの、 ER弱陽性ではpCR率改善が25.6%でした。 すなわち、 少ない症例数のサブグループ解析ではあるものの、 ER弱陽性に対するペムブロリズマブの上乗せ効果が大きいことが示唆されました。
また、 日本のリアルワールドエビデンスにおいても、 ER弱陽性に対するKEYNOTE-522レジメンのpCR率は87.5%と報告されています⁵⁾。 こうした考えから、 ER弱陽性をTNBCとして扱い、 KEYNOTE-522を適用している施設もみられます。
日本における実態を把握するため行われた今回のアンケートでは、 ほぼ全ての年齢層において6割以上の先生がTNBCとして扱っているという結果でした。
これは、 2025年3月12~15日に行われたザンクト・ガレン国際乳癌コンセンサス会議の結果 (パネリストの82%が 「ER弱陽性をTNBCとして、 KEYNOTE-522レジメンを使用する」 を支持) と類似の結果です。
これらの結果は、 通常のER陽性としての治療では予後不良なER弱陽性に対する、 新規治療への期待の表れであると考えます。 KEYNOTE-756試験の長期予後データや、 さらなるエビデンスの蓄積が期待されます。
出典
1) N Engl J Med. 2020 Feb 27; 382: 810-821.
2) N Engl J Med. 2022 Feb 10; 386: 556-567.
3) Lancet Reg Health Eur. 2024 Apr 1;40:100896.
4) Abstract LBA21, ESMO 2023, 20–24 October, Madrid, Spain.
5) Breast Cancer. 2025 Mar;32(2):329-336.
【KEYNOTE-522試験】早期TNBCへの術前・術後ペムブロリズマブ
【KEYNOTE-522】早期TNBCへの術前・術後ペムブロリズマブ、 死亡リスクを大幅に低減 : OS最終解析
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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