海外ジャーナルクラブ
3ヶ月前

九州大学大学院医学研究院病態制御内科学の水流大尭氏らの研究グループは、 機能性嚥下障害 (FD) 患者および健常者の食道運動を、 収縮相*のみならず拡張相**も評価可能な新たな検査法を用いた横断研究で比較評価した。 その結果、 FDの主要な病態が 「食道拡張障害」 であることが示され、 従来、 認知されていた食道拡張能を保持したFDとは別に、 新たなサブタイプとして提唱された。 また、 食道上部横紋筋の収縮能が遠位食道の拡張能を決定する重要な要素である可能性が示唆された。 本研究はClin Gastroenterol Hepatol誌において発表された。
Functional Lumen Imaging Probeは食道拡張性を評価する補助的ツールとして有用ですが、 日本では承認および商業的流通がなされていないため、 本研究では使用できなかった点がlimitationです。
FDは従来、 食道の過敏性が主な原因と考えられてきたが、 近年は食道拡張能の低下が関連する可能性も示唆されている。
そこで本研究では、 拡張相の視点からFDの病態を解析した。
2021年5月~2024年5月に九州大学病院を受診した機能性嚥下障害(FD)患者25例および健常者25例を対象に、食道運動を横断的に比較評価した。本研究では、従来は評価が困難であった食道運動の拡張相に着目し、高解像度食道内圧検査(high-resolution manometry:HRM)によって得られたデータを基に、新たに開発された解析手法と独自の画像検査を組み合わせて検討を行った。
HRMは、食道内圧を測定することで食道運動障害を評価する標準的な検査法であるが、主に食道の収縮相を評価するものであり、内容物を受け入れる拡張相を直接評価できないという課題があった。そこで本研究では、HRMデータを専用ソフトで解析し、拡張相を線波形として可視化・定量化できる「Distension-contraction plots(DCP)」を用いて、拡張相の評価を可能とした。
さらに、食道運動障害を視覚的に評価する目的で、本研究グループが独自に開発した「おにぎり食道造影検査」を併用した。この検査では、バリウム粉末を付着させた一口大(10g)のおにぎりを15回咀嚼後に嚥下させ、その凝集体が食道内を通過する様子をX線透視下で観察する。通過障害の程度は閉塞レベル(obstruction level:OL)として0から4までの5段階に分類し、OL0を正常、OL4を最も高度な通過障害と定義した。これにより、収縮相のみならず拡張相を含めた食道運動の総合的な評価を行った。
DCPによりFDが、 従来型に類似する 「食道拡張保持型 (FD-pED) 」 と新たに認められた 「食道拡張障害型 (FD-rED) 」 の2つのサブタイプに分類された。
おにぎり食道造影検査に基づく評価では、 FD-pED患者11例のうち10例がOL0 (正常) であった一方で、 FD-rED患者14例のうち13例がOL1~2 (通過障害) を示した。
FD-rED患者群では、 食道横紋筋の収縮能 (具体的にはセグメント1 [食道上部に存在する横紋筋領域] の収縮期内圧AUCおよびピーク内圧) が健常者群 (いずれもp=0.0001) およびFD-pED患者群 (それぞれp=0.004、 p=0.002) と比べても有意に低下した。
セグメント1の収縮能と食道下部の拡張能との関連を解析したところ、 セグメント1~3の拡張AUCと比べて、 セグメント4 (胃に最も近い遠位食道) の拡張AUCはセグメント1の収縮期内圧AUCと強く相関していた (r=0.47、 p=0.0005)。
また、 参加者50例で記録した312回の嚥下において、 セグメント4の拡張AUCとセグメント1の収縮期内圧AUCとの間に有意な正の関連が認められた (r=0.42、 p<0.0001)。
これらの結果から、 食道上部横紋筋の収縮能が遠位食道の拡張能を決定する重要な要素である可能性が示唆された。
著者らは 「FDのサブタイプとして『食道拡張障害』という新たな疾患概念を提唱する。 FD-rEDにおいて、 食道上部横紋筋の収縮能低下が遠位食道の拡張能低下に寄与している可能性がある。 横紋筋領域に焦点を当てることが、 FD-rEDの新たな診断法・治療法開発の有望なアプローチとなり得る」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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